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神愛転生  作者: クレーン
第三章
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075話:豪華な野営

「よし! 今日はここで野営にしよう」


 オレはそう言いながらマークから降りると、鞍を外して収納する。

 



 アルグランス武王国の地図を完成させるために、アルグランス一周の旅を始めたオレたち一行。

 午前中にアルグランスの最西にある王都エトロスタンを出発し、平均時速二〇〇キロほどで西側の海岸線をなぞるように北上。

 お昼に一回休憩を挿み、再び移動を開始して現在に至る。

 今の時間は夕方前の一六時。

 場所は王都から北に約一二〇〇キロほどの位置で、まだ海岸線の途中だ。

 ここまでは比較的平坦だったが、いくつか崖や谷間とかもあった道のりだった。

 まぁマークたちにとっては進むのに造作もない行程だったのだが、崖を跳ね登っては急降下。谷間を超跳躍でひとっ跳びする度に、ダイルとソルムの悲鳴が後ろから聞こえていた。


「お疲れ様でした、主様。まだ陽が高いようですが宜しいので? 我らでしたらまだまだ進めますが?」

「いや、今日は初日だしこれくらいでいいだろう。それに……」


 オレはスコル姉弟から降りたダイルとソルムに視線を送る。


「だっはぁ~~! 疲れた~~」

「な、なかなかの……乗り心地でした……」


 スコル姉弟から降りた二人がその場でヘタり込む。

 それなりの装備を整えて跨ってるだけとはいえ、二〇〇キロの速度とアクロバットな移動は、二人にとってかなりの疲労を与えたようだ。

 オレは爽快な上に景色も良くて凄く楽しかったんだけどね……。

 まぁ、もう二、三日もすれば慣れるでしょ。


「二人ともあんな様子だしさ。今日は早めに休んで明日に備えることするよ」

「御意」




 さて、それじゃあ野営の準備をするか。

 まずは無限収納から、無人島暮らしをしていた時に作った大型のテントを取り出して設置する。

 裁縫神様の素材箱に厚手の防水生地があったので、錬金術でフレームを作成しながら作ったものだ。

 あの時は参考資料の本も見れなかったから、よく見ていた某キャンプ少女アニメを可能な限り思い出しながら、色々と思考錯誤しながら作ってみたのだが、なかなかの出来栄えと自負している。

 四畳くらいの広さがある大型テントなので、かなり快適に過ごせるはずだ。


 続けて外にランプや料理台、テーブル、椅子を取り出し、快適なキッチンと食事スペースを設置。


 木製湯船と小型風呂釜を取り出して、周りにすのこを設置して風呂場の完成。

 周りは木製の衝立で囲む。


 少し離れた場所に(ピット)の魔法で適度な穴を作り、木製便座と水桶、トイレットペーパーを設置。

 その周りをこれまた木製の衝立で囲んでトイレの完成。


 ということで、野営の準備完了。


「よし、こんなもんかな?」

「いや……もう…… なんも言葉が出ねえや……」

「私たちって野営をするんですよね……。なんかお屋敷にいるのと変わらない気がするんですが……」


 充実の設備に呆然とするダイルとソルムの姿がそこにあった。

 快適な野営設備を提供しているはずなのに、非難めいた感情を浴びせられたような気がするのはなぜだ? 解せぬ……。




「ぷはぁ~! 気ン持ちいい~♪ 今日の疲れが吹っ飛ぶようだぜ」

「ええ、本当にお風呂は最高です……はふぅ……」


 今は三人で風呂に入ってる。

 オレは交代で入ろうと提案したのだが、二人とも「なんで別々に入るの?」って感じの様子だったので、結局全員で一緒に入ることになった。

 少し大きめの湯船とはいえ、流石に三人同時には少し小さかったので、オレはソルムの膝上に座らされている次第です……。


「えへへへ~♪ 旦那様を独り占めです♪」

「こらこら。後ろから抱きつくんじゃないの」

「ハハハ! お前ら本当に仲良しだな」


 ダイルに茶化されながら少しだけ抵抗するが、本気で嫌ではないので、ソルムのスキンシップがエスカレートしない限りは大人しくしておく。

 嗚呼……腰に当たる程良く引き締まった腹筋の硬さと、背中や後頭部に当たるポヨポヨが夢心地です。

 というか、ソルムって大きな体や凛々しい顔つきに似合わず、言葉使いや仕草とはか本当に女の子らしくて可愛いんだよね。

 こういうのをギャップ萌えっていうのかな?

 そんなことを思いながらも、滾る下半身を精神力で抑えつつ平静を装ってました。


 ドワーフ族特有のこういう感性にも少し慣れてきたが、まだまだ悟りを開くには長い年月が必要そうだ。

 こういう状況では、素っ裸のソルムを前に平然としてるダイルが少し羨ましく感じるよ。

 というか、なんでドワーフ族ではない、屋敷の獣人娘やサーシャたちは平気なんだろう?

 それとなしに、その辺りの話を聞いてみると、みんなやその親たちもみんな、生まれた時からアルグランスで生活をしていたから、自然とそういう感性になったのだそうだ。

 なるほどね…… 他種族でも最初からそういう環境だと、自然とドワーフ寄りの感性になるのか……。

 立派な文化と知性を持つ種族なのに、生殖の為の発情はあっても、色欲や劣情が希薄な感性ってのも凄い話だよな……。


 流石にオレがこの境地に至るには相当な時間を要するだろうが、どちらが良いかというと……なんとも言えんな~?

 とりあえず今は、目に入るソルムのセクシーダイナマイトボディを目の保養にさせていただこう。

 写真&録画機能万歳!




 風呂でさっぱりして気分も良いので、今夜は作り置きの食事は出さずに、旅の初日の夕食ということで、少し豪勢にバーベキューにした。

 そこでソルムには味付けにコパルを使ってることを種明かししたが、予想通り大層驚かれた。


「こ、この食事一つのコパルで私のお給金以上の……。はっ⁈ もしかして今までのお食事にも⁈」

「ソルム、やめとけ…… それ以上考えると後々コイツの料理が食べれなくなるぞ」

「うん、本当に山ほどあるから、遠慮せずに食べてね。強いてはオレのために」

「は……はい(はひ)……。うう~……でもやっぱり美味しい~……」


 涙目半分、笑顔半分という微妙な表情で肉串をモリモリ食べるソルムであった。




 そのあとはテントに布団を敷いて寝るわけだが、ここでもダイルとソルムに呆れたような表情をされた。


「野営つったら普通は焚火しながら見張りを数人立てて、毛布に包まって雑魚寝ってのが普通なんだがな……」

「旦那様にかかれば、野営でも宿屋での宿泊のような感じになっちゃいますね……」

「明日のためにも、疲れを残したくないならつべこべ言わずに早く寝る~」


 オレは二人に枕を投げつけて早く寝るように促す。


 普通の野営などでは夜中に獣に襲われるってのがセオリーな展開だが、マークたちには自分たちよりレベルの低い獣を従えたり、その覇気で獣を遠ざけたりするユニークスキル「神威(獣)」があるので、こういう時の見張り役には打ってつけだ。


「じゃあマーク、キャスト、ガドラ、見張りは任せたからね」

「「「御意! お任せを!」」」


 マークたちにおやすみの挨拶をしてテントの入り口を締め、オレも布団に入って寝ることにした。


 ……あ、念話でライラたちに今日の報告もしとかないと……。




 あ、ライラとシルフィー? そっちはどう? 特に問題なし。

 え? 労働ランナーをさっきクリアしたって?

 ……ってぇ⁈ あれから今まで殆どの時間やってんじゃねぇか!

 お前ら公務とかないのかよ⁈

 オイ……なんで黙り込む?

 徹夜するなとは言ったが、やり過ぎにも注意しろと言ったよな?

 罰として明日はゲームできないようにする。

 やかましいわ! この調子じゃ、残りの「爆弾男」と「ソロ門のキー」もあっという間に終わらせちまうだろうが!

 とにかく、明日は自分たちのことをしなさい!

 ちゃんと明後日にはまた遊べるようにしてやるから。

 ああ、うん、じゃあおやすみ。


 最後の最後ですっげぇ疲れた気がする……寝よう。

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