表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神愛転生  作者: クレーン
第三章
68/210

062話:バスシンボルフジヤマ

「じゃあ先ずは基礎から作り直すから、浴室中全部取り壊すか」


 大工道具一式箱からツルハシやスコップなどの削岩道具や、コンクリート、モルタルなどの基礎資材。目地材、タイルなどの内装資材を取り出す。

 建築神様御用達の聖なるツルハシは削岩力抜群だ。


 今あるレンガ造りの水槽も含めて、全部徹底的に砕いて瓦礫を収納。

 床もツルハシとスコップを併用して、下水溝の位置を確認しつつ掘ってはくり抜いて基礎枠を作る。

 その基礎枠にゴラス島で採取した木で作った板を仮置して幾つかの区分けを作り、そこにコンクリートを区分けごとに流し込んで綺麗に左官鏝(さかんごて)で慣らしながら、錬金術の反応加速(アクセルリアクション)を実行してコンクリートを急速に固める。

 この錬金術は読んで字の如く、色々な化学反応の行程を加速させるものだ。

 だけど何故か食材には使えないんだよねぇ……。


 で、何故にこの錬金術を使うのかというと、コンクリートは乾燥して固まるのではなく、水和反応と呼ばれる化学反応で固まる資材だからだ。

 無人島で一度使ってみた時、てっきり水分を抜いて乾燥させれば固まるものだと思って分離(セパレーション)を実行しようとしたんだけど、建築神様の加護の知識が、それが誤りだと教えてくれたことがある。

 試しに実行してみたら、見事にひび割れてボロボロに砕けた。


 ちなみにこの工程は地面の土を土魔法で操って固めたほうがてっとり早くはあるのだが、ちゃんとしたコンクリートなどの資材を使った方が耐久性が高いので、今回はしっかりと基礎から作り込ませてもらってる。

 大量の水を扱う設備なので、水漏れや湿気による腐食や劣化を防ぐためにも基礎の作り込みは大事だ。


 続けて硬化したコンクリートの上にモルタルを塗りつつタイルを敷きながら錬金術で高速硬化。

 これで三部屋分合わせて、約二〇畳ほどの浴室の床部分が完了した。


 ちなみにこの作業にかかった時間は約三時間ほどだ。

 建築神様の加護の力も大きいが、ゴラス島の家で二回風呂場を作った経験もかなり活かされてる感じがするね。

 初めて風呂場を作った時より、はるかに効率性が増しているのを実感する。

 どうやら加護の力は、オレの経験もプラス作用されるみたいだな。

 まぁ、それを除いても驚異的な速さなんだろうけど。


 遠巻きにその光景を見ていたハルガスとサーシャは、またもや呆気にとられた表情。

 ウン。何度も言うけど、早く慣れてね。

 フラメン姉さんは明らかに退屈そうで、途中から二人の横でずっとスピンしながら踊ってました……。




 続けて次の作業に移ろうとしたが、二人が少し休憩してはと言い出した。

 そういや高い体力値とスタミナでその辺の感覚が麻痺してたな。

 こういう合間の余裕を持たないと……少し反省。

 だって無人島にいた時は止めてくれる人いなかったんだもの……。


「フフフ。働き過ぎるのは前世での悪い習慣なのかな?」

「うぐ……」


 フラメン姉さんが意地悪そうに耳元でそう囁く。

 異世界に来てまで、日本人特有の悪癖とも言っても過言ではなかろうワーカーホリックになるのは御免なので、ホント気を付けよう。







 AR表示の時間を確認したらもうすぐお昼だったので、昼食にすることにした。

 中庭に警備担当以外の使用人たちを集めて、オレがバーベキューを振舞った。

 作り置きの肉串はまだまだ山ほどあるんだ。


 バーベキューは使用人のみんなにも大好評で、みんなモリモリと食べてくれて嬉しくなるね。

 味付けのことを数人から聞かれたが、またコパルで騒がれても面倒なので、その辺りは秘伝のスパイスを使ってるって事で誤魔化したけど、流石に料理長は気付いたようでオレの目を見る。

 オレは「だまってて」といったジェスチャーをすると、流石に料理長もそれを察したのか、静かに頷いて黙々と味を確かめるように食べていた。

 コパルを使用してるのは、また折を見てみんなに話そう……。


 ちなみに警備担当の人たちにも交代させながら、ちゃんと全員に食べさせてあげましたよ。

 食事で仲間はずれは悲し過ぎるからね。




 さあ、昼食も終わったので、大浴場作りの作業を再開することにしようかね。


 フラメン姉さんは踊りに適した部屋を探すために右棟へ行き、ハルガスも仕事で中央棟へ向かった。

 マークたちにも自由にしていいと言ったので、みんなで庭でくつろぐそうだ。

 今は二人のメイド、サーシャと獣人族のポロンが、オレのお世話役ということで側に控えている。

 猫耳のエキルス女史もいいが、犬耳系獣人のポロンも垂れ耳が可愛らしくて大変結構! ケモノ耳は良いものなんだ!

 あとでその可愛らしい耳とモフモフの尻尾を触らせてもらえないか聞いてみよう。

 ………………セクハラにはならんよな?

 獣人族特有の風習やタブーなんかもあるだろうし、その辺りはちゃんと事前に確認しておこう。


 ちなみにこの屋敷で働いてくれるメイドさんなんだが、一〇人のうちハイドワーフ族が三人で人族はサーシャだけ。

 そして残り六人は全員獣人族だったりする。

 なんでこんな比率になったかというと、先日の歓迎パーティーでのエキルス女史との一件が関係しているらしい。

 獣人族に対するオレの振舞いが、他の獣人族の人たちにも好意的に受け止められているらしく、王城で働く獣人族のメイドは全員試験に参加したそうだ。

 少々邪な気持ちでの接し方だったと思うのだが、まぁ嫌われるよりかはいいだろう。

 とりあえず暴走しないように気を付けよう……。




 と、少し話が脱線したが、風呂場工事再開だ!


 一〇人以上は余裕で入れる湯船を木材で作り、底穴と排水溝を上手く合わせて無事設置。

 採取してた鉄を錬金術で変形させて、以前使ってたやつより更に大きな風呂釜を作成。

 それを外の壁際に設置して配管を湯船と連結。

 これで湯船の水を沸かせる準備が整った。

 今は風呂釜がむき出しの状態だが、後ほど通気性を考慮に入れた煙突付きの小屋で囲い、薪なども設置しておこう。


 次は壁にモルタルを塗りつつ白タイルをどんどんと敷き詰めてゆく。

 硬化させて目地材を塗り込んで仕上げ。

 そんな感じで壁四面の内、三面は白のタイルを敷き詰めて完成。

 そして問題なのは湯船側の壁だ。

 ここは是非とも富士山の絵をタイルで描きたい。

 でもオレ、絵心無いんだよね……。

 どうだろ? なんとかなりませんかね?

 建築神様の加護の力に更に意識を集中させると、体と頭が自然と動き出す。

 そして黙々と壁にタイルを張り続けること数時間。

 気が付くとオレは壁一面に、それは美しい富士山のタイル絵を完成させていた。

 …………建築神様……本当にありがとうございます!


>てやんでい! お安い御用でい!


 ハハハ、本当に感謝です! べらぼうめぇ!




「綺麗……」

「なんて雄大な風景画なのでしょう……」

「しかもそれをタイルで壁に描くなんて……」

「旦那様は武術や錬金術だけではなく、芸術にも精通されておられるのですね。このポロン、改めて感服しました」


 サーシャとポロンの二人が、富士山を描いたタイル絵を見てウットリとしながら、そう賛辞の言葉をかけてくれた。

 ハハハ、全部神様のお陰だよ。

 でもそういう賛辞も神様に向けての言葉と思うと嬉しくなる。

 ここは素直にその賛辞を受け取っておこう。


「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」


 空が薄暗くなってきた夕方に大浴場完成!

 早速水を張って沸かすとしよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ