057話:神様と秘密の会議
結局舞踏神様との会話は四曲分にも及んだ。
最後のダンスを終えたと同時に、ライラとシルフィーが慌ててオレたちを「休憩」と称してサロン風の別室へと案内してくれた。
なんでも完全防音の施された、密談などをする時に使用される特別な部屋だそうだ。
で、その別室にいるのはオレと舞踏神様以外はライラとシルフィー。
そしてマークたち神獣一家だけ。
つまりオレの正体を知る者以外はいないということだ。
最初はシグマ陛下やアリオス爺も混ざりたがっていたが、ライラの「ゴラス島で生活した者だけの大事な話」というゴリ押しで完全シャットアウト。
お世話役のメイリン女史まで固く立ち入りを禁じた。
メイリン女史が少し寂しそうな顔をしていたので、あとでなんらかのフォローをしておこう。
「ではみんなに紹介するよ。この方は舞踏神様だ」
「宜しくなのだよ♪ ソーマ君の眷属のみんなにも会えて嬉しいのだよ♪」
ソファーに腰かけて超リラックスしてる舞踏神様だが、挨拶された他のみんなはというと…………全員床に平伏していた。
「こっ! 此度は大変な御無礼を! 平に! 平に御容赦賜りたいのじゃ!」
うわ~ ライラのやつ、マジ土下座キメちゃってますよ……。
「アハハハハ♪ そんな畏まらなくてもいいのだよ♪ 私の方こそソーマ君を取っちゃって、本当に申し訳ないことをしちゃったのだよ」
「い、いえいえ! どうかお気になさらず!」
シルフィーやマークたちもさっきから畏縮しまくりだ。
とはいえ、オレが慣れちゃってるだけで、本来はこういう反応が普通だよね? 神様を前にしらた普通はさ?
でもこのままでは進む話も進まないし、この先のことを考えたら丁度良い機会でもあるので、ここは舞踏神様を皮切りに是非とも神と接することに慣れてもらおう。
とりあえずライラたちを落ち着かせてソファーに座らせ、マークたちもお座りの姿勢で待機させる。
「いや~ 長くても二曲くらいで終えるつもりが、まさか四曲にまで話が縺れ込むとは想定外だったのだよ」
「あんな話聞かされちゃ、止めるものも止めれませんよ!」
「してソーマ殿、大事な話とは一体なんなのじゃ?」
そう、先ほどの舞踏神様のうっかり発言で、今このフォーランドは大変なことになっていることが判明した。
それを丁寧にライラたちへ説明する。
事の始まりは、オレがあのゴラス島から脱出したあの日、天上界に住まう複数の上神たちが五大神様たちへ、とあるお願いを出したことから始まった。
その数、二万を超える上神たちのお願い。
それは特異点であるこのオレ、ソーマに会ってみたい。
そして、できれば自分たちの加護も与えたい。
ついでにもう一つ贅沢言わせてもらえるなら、少しの間下界に降りてバカンスと称した暇つぶしをさせて欲しいといった内容だった。
その神々たちは、あの祝福の日の宴席でオレの存在は知らされていたが、場所の都合や色々あって、あの場に立ち会えなかった神々たちらしい。
すると世界神様は、いくつかの条件付きでアッサリとそれを快諾しちゃった。
なんで許可しちゃうかな?……かな?
で、その条件とは――
一・フォーランドで神力を無闇に行使してはならない
二・降臨地点は完全ランダム
三・ソーマに無理矢理加護を与えるのは禁止
双方納得の上で加護を与えるべし
四・降臨できるのはひと月毎に一柱まで
特例・既にソーマに加護を与えている上神は一と二を適用した上で、自由に降臨することを許す
――といった内容だ。
その条件が提示されたと同時に、鉄拳と羊羹の乱れ飛ぶ壮絶な降臨争奪戦が繰り広げられたらしいが、すぐさま破壊神様と死神様がそれを鎮圧。
創生神様と時空神様の提案で、公正を司る籤神様を今回の一件の実行委員長へと任命。
籤神様による「ゴッドくじ引き」によって、降臨する神を選出することとなった。
で、早速「火竜の月記念・第一回くじ引き大会」が催され、今ここにいる舞踏神様が見事当りを引いたってことだそうだ。
二万分の一の確率を、よくぞ引き当てたもんだと感心するよ。
「いや~♪ まさかいきなり当りを引き当てれるとは思わなかったので、正直私も驚いたのだよ♪ アハハハハ♪」
舞踏神様はケタケタと笑うが、そんな話を聞いたライラたちは唖然としている。
「なんだか……神の世界というのも、案外呑気なものなのかのう?」
「ちょっと想像してたのと違いますね……。もっとこう……厳粛で神々しいイメージが……」
うん、その意見には全力で同意させてもらうよ。
一度あの大宴会の様子を見てるだけに、話の内容の光景が容易に想像できるのがなんともはや……。
「フフフ、神と言えど心はある。そして心がある以上、退屈を免れることなどできはしないのだよ」
「なるほどのう……神々も永き時を生きて我らを見守って下さるのじゃから大変なのじゃな……」
「でもなんだかそういうお話を伺いますと、少し親近感も湧いてきますね?」
「そうそう。キミたち亜人種も含め、下界の人々たちは無闇矢鱈に我々神を神聖視し過ぎなのだよ。全てではないが、大半の神はもう少し親兄弟のような感覚で想って欲しいと願っているものなのだよ」
いやいや、流石にそれは無理ってなもんですよ。
それより少し話が脱線しかかってるので、起動修正しよう。
「まぁとにかく、そんなわけで舞踏神様もお優しい方なので、みんなももう少し肩の力を抜いて接して欲しい。それでいいんですよね?」
「ああ、そうしてくれると嬉しいのだよ、ライラちゃんにシルフィリアちゃん」
舞踏神様からちゃん付けで呼ばれ、二人は嬉しさと恥ずかしさで顔が真っ赤っかだ。
あ、ちょっと今の二人は可愛いかも。
オレは二人の様子をしっかりと録画しておいた。
舞踏神様はマークたち全員もちゃん付けしようとしていたが、流石にそれはアレなので、マークとサタはそのまま呼び捨て。キャストはちゃん付けで、ガドラは男の子なのでくん付けで呼ぶことになった。
「で、問題はここから先の話だ」
オレは次の話を切り出した。




