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神愛転生  作者: クレーン
第三章
59/210

053話:歓迎パーティーと猫耳メイド

 ライラたち王族や側近たちと共に、パーティー会場となる大広間に到着した。

 謁見の間より三倍ほどの面積があり、非常に広々とした空間だ。

 内装も非常に豪華な感じで、高い天井には数多くのシャンデリアが吊るされていて煌びやかな明かりが灯っている。

 光源はなんだ? 電気や蝋燭などではなさそうだが?


>魔光石

>魔力を注入することで発光する魔石

>フォーランドに広く普及しているが、魔力を持たない者は扱う事ができない

>光量・発光色・耐久性などによって等級が存在


 おお! ファンタジー世界で定番の一つ「魔石」きたよ!

 光を発する魔石があるなら、他にも色んな効果のある魔石も存在してそうだな。

 時間のある時に色々調べてみよう。


 しかしパーティー会場の中は凄い賑わいようだ。

 ざっと見た感じでも五〇〇人以上はいるんじゃないかな?

 食事は基本立食式みたいだが、所々に落ち着いて食事のできそうなテーブルと椅子が壁際に配置されている。

 広間中央では男女ペアでダンスを踊る者もおり、広間奥の壇上では演奏隊らしきドワーフが優雅な音楽を奏でている。


 そんな感じで広間を観察していると、演奏隊の横にいる少し派手めな模様の衣装を着ているハイドワーフの男性が、シグマ陛下の入場を確認。

 すぐさま演奏を中断させる。

 するとダンスをしていたペア数組も踊りを止め、皆の注目がオレたちに集中した。


『お集まりの皆様、しばしのあいだ御静観願います。只今シグマ武王陛下、並びにライラ殿下、御入場で御座います』


 どうやら本パーティーの進行役の人みたいだな。

 手に持った拡声器らしい道具を手にそうアナウンスすると、広間中にその声が響き渡った。

 すると広間中に散らばっていた人々が一斉に海を割るように二手に分かれ、広間奥にある壇上までの道を作る。

 するとシグマ陛下はそのまま黙って壇上目指して歩き出し、その後をオレたちも追う感じとなった。


「おい……ライラ殿下をエスコートしている人間は何者だ?」

「バカ、あれが姫様をお救いしたというソーマ殿だ」

「なんだ? まだ若い人間の小僧ではないか?」

「いやいや皆の衆、ああ見えてかなりの武人という話だ」

「先の謁見に出席していた父上の話では、先武王陛下やドラン殿をも凌駕する達人らしいぞ?」

「それは誠か?」


 なんか若いハイドワーフの男性陣がオレの話をしているみたいだ。

 聴力も強化されてるから、少し意識を向けるとヒソヒソ話もクリアサウンドで耳に流れ込んでくるよ。


「ほほう、アレが噂の恩人殿とやらか?」

「幼い顔立ちをした男子だが、なかなか堂に入った振舞いであるな」

「それよりも見られよ、あの衣装を。なかなか先進性溢れる礼服ではないか」

「然り。恐らく既にリキッド候が何かしらのアプローチはしておるだろうが、我らも続く価値はありそうだぞ?」


 なんか向こうの一〇〇〇歳間近のハイドワーフ中年会は、オレのタキシードに目を付けているみたいだな。

 つーか、宰相さんの行動バレバレですやん?

 もしかしたらあの人はいつもあんな感じなのかも知れないね。

 タキシードは数日後には普及すると思うから、それまでしばらく待っててくれ。

 しかしハイドワーフはお洒落好きが多いね。


「あの人間の子はどなたですの?」

「あの方が姫様とシルフィリア様をお救いになられたソーマ様ですわ」

「随分と可愛らしい顔立ちでは御座いませんこと? 聞いていた話では神獣様を一瞬で鎮圧した武人とお伺いしておりましたのに」

「あら? 皆様御存知ありませんの? あの方、ああ見えて――で――だそうですわよ」

「それは本当ですの⁈」

「「「キャ~~♪」」」


 反対側の集団で固まってる、煌びやかなドレスに身を包んだハイドワーフの女子たちは黄色い声を発しておられる御様子。

 男性陣と違ってかなり好意的な御様子らしいので助かるが、少し注意しとかないとな。

 何がって? 変なフラグを立てないようにだよ!




 そんな感じで歩きながら色々と聞き耳を立てていたら、いつの間にか壇上にたどり着いた。

 そしてシグマ陛下が広間にいる皆に向けて挨拶の言葉をかける。


「アルグランス紳士、及び淑女の皆よ。まずは大勢の参列に感謝の意を表したい。皆も耳にしておろうが、先日遭難の身となった我が娘ライラの命を救ってくれた恩人殿を我が国にお迎えすることが叶った。今宵の宴はそんな恩人殿を歓迎する為に催されたものである。皆粗相の無きよう留意し、存分に交流を深めるがよい」


 シグマ陛下がスピーチを終えたかと思うと、進行役の人にシグマ陛下の横の位置まで移動するように促された

 え? もしかしてオレもさっきみたいにスピーチすんの?


「それでは皆に紹介しよう! 我が国の大恩人! ソーマ殿だ!」


 シグマ陛下がそう紹介の声を上げると、一斉に皆の視線がオレ一人に集中した。

 うおおおお……なんて威圧感だこれ?

 とりあえず精神力を集中して心を落ち着かせよう……。


 …………よし、大丈夫だ……。

 とにかく当り触りなく無難に……無難に挨拶をしよう。


「只今御紹介に(あずか)りましたソーマと申します。此度はわたしのような者の為に、このような宴を催して下さっただけでなく、多くの方々にお集まりいただけたことに感謝の気持ちで一杯です。長い無人島暮らしで世間知らずの若輩者ゆえに、時に皆様には失礼をするかも知れませんが、アルグランスの皆様とは仲良くしてゆきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします」


 オレはそう言うと、胸に手を当てて目を閉じながら頭を下げた。

 すると最初は小さな音だったが、それにつられるように徐々に大きく、そして凄まじい音量の拍手が広間中に響き渡った。


 ふう……どうやら先の挨拶は皆に好意的に受け止められたようだ。

 知能をフル回転させて、即興で考えたスピーチだったけどなんとかなったな……。


 と思ってたら、ライラがオレの横に立って手を上げ、皆の拍手を止める。


「皆の者よ、ソーマ殿を歓迎してくれてありがとうなのじゃ! しかし此度の客人はソーマ殿だけではない!」


 オイオイ……ライラさん? まさかまたですか?


「皆にも紹介するのじゃ! ソーマ殿の(しもべ)にして、わらわの友であるマーク、サタ、キャスト、ガドラたちじゃ!」


 オレの後ろに控えている犬モードのマークたちが「どうしましょう?」って感じで困惑しながらオレに指示を求めてくる。

 あ~もういいよ…… 好きにしな……。


 オレが半分諦めた表情で一回頷くと、マークたちは神獣の姿へと変える。

 その光景を目にした会場の皆は、口を開けっぱなしで絶句状態。

 もうこの光景何度見たことやら? オレはもう慣れたぞ~ 早く皆も慣れてくれ~。


「ライラ姫より紹介に与ったマークである」

「同じくサタ」

「キャストです!」

「ボクはガドラ~」


 巨大なフェンリル、スコルの姿だけでなく、喋るときたもんだで、マークたちの事を知らなかった人達の驚き度合いは倍率ドン! 更にその倍! って感じで、広間中が一気に静寂に包まれた……。


「ソーマ殿の忠実な僕の神獣たちじゃ! みんな仲良くしてたもれ♪」

「さあ! 今宵の宴は神獣様もおられるめでたき席である! 皆、存分に楽しもうぞ!」


 いつの間にかマークの頭の上までよじ登ったライラが笑顔でそう言うと、続けてアリオス爺が演奏隊に指示を出して静寂をかき消す。

 アリオス爺ナイスフォロー!

 軽快な音楽が広間に流れ出すと、広間中の人々がワラワラと思い思いの場所へ移動を開始し、中央ではまたダンスを始めるペアが増えだした。


 どうやら本格的に歓迎パーティーが始まったようだな。

 オレももう一度気を引き締めよう!




 ……しかし、少しお腹減った。

 まずは料理を御馳走になるとしようかな?

 と、そんなことを考えていると、後ろからメイリン女史に声をかけられる。


「ソーマ様、本席でのお世話役を紹介します」

「え? お世話役?」


 メイリン女史の話では、恐らくこれからオレは色んな人たちから声をかけられるので、自分の手が足りなくなる可能性があるらしい。

 そんな時にオレの全体的なフォローをしてくれる者、つまり荷物持ちとか小間使いなどにアシスタントを付けてくれるそうだ。


「では紹介します。リゼット、エキルス、こちらへ」


 メイリン女史の声と同時に、後ろに控えていた和服割烹着のメイドさん二人がオレの前に現れ、カーテシーの姿勢でにこやかな笑顔で挨拶をする。


「リゼットと申します。今宵、ソーマ様のお世話役をさせていただきます。どうぞよしなに……」

「エキルスです。姫殿下の御恩人にお仕えでき光栄の至り。なんなりと申し付け下さいませ」


 うひょ~! これまたメイリン女史に負けず劣らずの美人さん揃いだ。


>名前 :リゼット・ジスタス

>レベル:30

>種族 :ハイドワーフ

>年齢 :118歳

>職業 :王家付きメイド隊副長

>称号 :王女直属お世話役・公儀隠密

>スキル:礼儀作法・クリーニング・家事・風魔法・土魔法・隠密(大)・暗殺術・格闘術(大)




>名前 :エキルス・ガル

>レベル:35

>種族 :獣人(猫種)

>年齢 :27歳

>職業 :王家付きメイド隊副長

>称号 :王女直属お世話役・公儀隠密

>スキル:礼儀作法・清掃・家事・風魔法・火魔法・隠密(中)・暗殺術・格闘術




 おっ! よく見たらエキルス女史は猫耳の獣人だ!

 早くも猫耳女子に出会えるとは幸先いいじゃないか!


「あ……やはりこの耳が気になりますか……?」


 猫耳を見つめるオレに気付いたのか、エキルス女史が少し不安そうな表情で、先ほどまでの笑顔を曇らせる。

 しまった。少し不躾だったかな?

 慌ててそんな事はないと言おうと思った矢先、メイリン女史が更に慌ててオレの前に出て深々と頭を下げる。


「ソーマ様、大変申し訳ございません。もしかして獣人はお嫌いでしたでしょうか? しかしエキルスは私と同じメイド隊の副長を務めており、実力は確かです。それに今からこの任を任せられる者の選出となると――」

「ちょい待ち。あのさ? もしかして獣人ってあまり良く思われてないの?」

「い、いえ! 我が国ではそのような差別は無いのですが……」


 メイリン女史の話では、獣人族はこの世界全体では少し差別対象となりやすい人種らしい。

 特に人間の治める国ではそれが顕著であり、南大陸にある獣人の国「ガルシオン獣王国」以外では、アルグランスのように他種族にも寛容な国でないと、なかなか普通の生活が送れないらしい……。


 人種差別もまた、異世界モノでは定番の要素ではあるが、これに関しては正直よくない!

 というか、こんな美しい猫耳女子を差別するとかありえんだろう?

 この件についてはいずれ文化ハザードを起こして、そういう風潮をひっくり返す必要があるな!

 とにかく、オレも人間なのでそういう風に思われているみたいだし、ここは一発バシンと否定しておこう!


「全!然!問題ありません! むしろ猫耳で大変結構!」

「「「は……はいぃ⁈」」」


 オレの興奮気味の言葉に、メイド隊副長三人衆が驚きの表情を浮かべる。


「獣人大いに結構! しかも猫耳なんて至高じゃないですか! これの良さが解らないほうがどうかしてますよ! エキルスさん、どうかご自分に自信を持ってください。そして今日はどうぞ宜しくお願いします」


 オレがそう告げると、エキルス女史は感極まったのか? 両手で口元をおさえて少し涙を浮かべていた。


「良かったわね、エキスル。ソーマ様の御眼鏡に適ったようで」

「はい…… ソーマ様、ありがとうございます……」


 リゼット女史が背後からエキルス女史の両肩に手を置き、優しい表情で言葉をかける。

 そんなエキルス女史は幸せそうな表情で、オレに感謝の言葉をかけて深々とお辞儀をする。

 よく見たら腰の辺りからはモフモフの尻尾も出ており、それがブンブンとリズミカルに、左右に振られていた。

 嗚呼……モフりたい……。


 すると、その光景を見ていたハイドワーフ中年会の口からこんな言葉が耳に入った。


「ほほう、人間でありながら獣人族に偏見がないとは……」

「なかなかに心の広い御仁ではないか。気に入ったぞ!」

「アリオス先武王陛下が友と認めるだけの器量はあるようですな」


 どうやらエキルス女史に対するオレの振舞いは、中年会の皆様もお気に召していただけたようだ。




 う~ん……しかししまったな……。

 猫耳獣人に会えた嬉しさで、つい興奮してあんなこと言っちゃったけど、コレ確実にフラグ立っちゃったよな?

 これからはその辺りも注意して他種族の皆さんと接していかないと…………って……おおっ! あそこに見える長い耳と金髪の種族! あれはもしかしてファンタジー種族の絶対王者、エルフなのでは⁈

 あとで絶対挨拶しておこう!

 レッツ! 異種間コミュニケーション!

今週末は私の誕生日でして、少しノンビリと休日を過ごしたいと思います。

次回更新は来週明けとなりますので、どうぞ御了承下さい。

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