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神愛転生  作者: クレーン
第二章
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幕間:ライラ・アーク・アルグランス その4

 わらわたちは無事に故郷であるアルグランス武王国に辿り着いた。

 うむ、懐かしさすらも感じる祖国の香りがする!


 港から城までは馬車で移動する手筈となっておったが、わらわは城まで歩いてゆくことをドラン爺に提言した。

 今のわらわは今までのわらわではない。

 一刻も早く、今はそれを民たちに伝えたかったからじゃ。


 しかしやはりというか、当然というか……。

 わらわの姿を見た途端、城下街の民たちは皆露骨に顔を背けるか逃げ出しよる。

 うむむ……これも自業自得。今はなにも言い返せぬ。

 そう思いながら、街の中心にある広場に到着すると、そこでわらわは声を大にして叫んだ。

 まずは今までの民たちに対する狼藉の謝罪と「ごめんなさい」という言葉をじゃ。

 そしてこれからは心を入れ替え、民たちと共に歩んでゆく気構えを伝えた。

 広場にいた者たちや、建物から顔を出している者も、一体何事かといった表情であったが、今はきちんと言葉に乗せて気持ちを伝えれれば十分。

 あとは有言実行あるのみなのじゃ!




 城に戻り、急ぎ父上の待つ謁見の間に入ると、真っ先に出迎えてくれたのはシェリム殿であった。

 玉座から離れて急ぎ駆けつけ、わらわを優しく抱きしめてくれた……。

 嗚呼……温かいのう……ほんにこの人は母上そっくりじゃ……。


 そしてわらわは父上やお爺様にも今の気構えを伝え、その場にいた貴族たちや城の使用人、騎士、衛兵たちにも謝罪と労いの言葉を伝えた。

 そう、わらわはこの者たちに支えられて生きておるのじゃ……。

 っとと、これメイリン、何も泣くことはあるまい? そんなに泣きじゃくるとめんこい顔が台無しなのじゃ……。

 そうじゃ! これを一つやろう。パンツという肌着じゃ! とても心地良いぞ!

 気が付けば、謁見の間にいた皆が涙しておった……。

 父上やお爺様までも………… うん……なんか本当に今まですまなかったのじゃ……。




 それから数日が経った。

 わらわとシルフィーも無人島生活や船旅の疲れがすっかり取れ、普段通りの生活に戻ることになった。

 特にわらわは持久力が上がっておるので、回復も早かった。

 ソーマ殿から聞いた話では、初めてお酒を飲ませてくれた時に使った杯が原因らしい。

 しかし不自由なことは何もないどころか、レベルも一つ上がって快適じゃ!


 さて! 今日から光の神セイトルナスを祀る聖教会に赴いて、まずは今までの行いを悔い改めるための懺悔業を行うのじゃ!

 わらわ自身がそうしたいと思う気持ちも当然あるのじゃが、それを行うことによって、いまだわらわの心変わりに疑念をもつ者たちへ、少しでもわらわの気持ちが伝わればと考えておる。

 そう、全てはここから! ここからは気持ちの勝負なのじゃ!

 きちんと心を込めて言葉に乗せぬと気持ちは伝わらぬ!

 じゃからまずはこの心を鍛え直すのじゃ!

 いざゆかん! 光の神セイトルナスよ! 我に試練を!




 ………………結論から言おう……懺悔業、恐るるに足らずじゃった。


 滝水に打たれて身を清めたり、神像の前で坐禅を組んで心を無にしたり、ただひたすら山道を歩いて体を鍛えたり、街や孤児院を掃除したり、炊き出しを配給したりした。


 わらわがあのゴラス島で経験したことに比べれば、どれもこれも容易く感じる修行であった。

 しかし、この業を行うことによって、今まで見えなかったものが色々と見えた気がする。

 特に炊き出しの配給で、我が国の貧困層がかなり多いことを知った。

 なんとか産業を広め、少しでも貧困層の数を減らせればのう……。


 いや、今のわらわがこのことで騒いでもなにもできぬ。

 今はできることをひとつづつ、確実に歩んでゆくのが肝要じゃ!




 わらわは懺悔業を終えた翌日から、毎朝シルフィーと騎士数名を伴って城下街を散歩することにした。

 少しでも自分の国のことを目で見て確かめるためにじゃ。


 そして少しづつではあるが、民たちの反応も変わりつつあった。

 以前、品を並べている台を蹴とばして酷い目にあわせてしもうた肉屋の主人が、なんとわらわに挨拶をしてくれたのじゃ。

 わらわは嬉しかった…… 少しづつではあるが、わらわが心を入れ替えたことを信じようとしてくれる者が現れだしたことにじゃ。

 わらわは主人にその日のことを謝罪した。

 心を込めて謝罪した。

 主人はその行為に少し慌てておったが、笑顔で謝罪を受け入れてくれた。

 その嬉しさのあまり、笑顔のままで涙まで流してしもうた……。

 ああ……謝れる機会があるということは、なんと喜ばしいことなのじゃ……。

 あのままソーマ殿と仲違いをしておれば、わらわは確実に死んでおったじゃろう。

 もしそうなっておれば、わらわはこの喜びを一生感じることができなかったのやも知れぬ……。

 思い返せば思い返すほど、ソーマ殿への感謝の念が絶えぬ……。


 ソーマ殿は今頃何をしておるのじゃろうな?

 折角眷属となって念話が使えるのじゃから、またには声をかけて欲しいのじゃ……。

 おっと! いかんいかん! いまは感慨に浸っている場合ではない!

 まだまだやらねばならぬことが山積みじゃ!

 母上を失ってから今まで空いた心の隙間を、少しづつ埋めてゆかねばの!




 それからひと月ほどが経った。

 今では城の者たちだけでなく、城下街の民たちも気軽にわらわに挨拶をしてくれる。

 うむ、わらわが心を入れ替えたことが伝わって嬉しいのじゃ!

 もう同じ過ちは繰り返さぬ。

 これからは苦楽を共に、皆と一緒に歩んでいこうぞ!


 ところで貿易商の主人よ、頼んでおったコパルは……やはり提示した金額では無理であったか……残念じゃ……。

 嗚呼……ソーマ殿の食事が恋しいのじゃ~!







 それからまた日は流れ、今は火竜の月、一四日。

 突然お爺様がエルナイナとダイルを伴い、わらわの部屋に押しかけてきた。

 ダイルはドラン爺の家臣じゃし、お爺様はドラン爺の弟子じゃったから、この組み合わせはなんとなく解るが、なんで父上の近衛のエルナイナまで?

 シルフィーが小声で教えてくれた。

 ああ、父上から派遣された監視役とな……理解した。

 お爺様もたまに無茶をなされるときがあるからのう……。


 で、お爺様。一体なに用なのじゃ?

 え? ゴラス島で世話になった恩人に会って、直接礼をしたいから案内せよじゃと?

 いや、確かにきちんとした礼はせねばとは、わらわも考えてはおったのじゃが……。


 しかもわらわの捜索隊に加わった者は、誰一人と詳細を話してくれぬと?

 エルナイナとダイルも気まずい表情で顔を背けよる……。

 あ、いや、うん……確かにそうさせたのはわらわじゃが。

 しかし、皆ちゃんと誓いを守っておるようじゃな。感心感心。

 ここだけの話、強制力の手前もあってわらわやシルフィーも詳しくは話せぬのじゃ。お爺様、許してたもれ……。


 はい? 明日からゴラス島へ向けて出発するから準備せよじゃと?

 随分いきなりじゃのう? しかし父上が……あ、もう許可は取ってあると……。

 シルフィーの顔を伺うと「もうこれは仕方がないでしょう」といった感じで首を振っておる。

 やれやれ…… しかしわらわも大手を振って、またソーマ殿に会いに行けるというなら是非もないのじゃ!


 メイリン、今回はおぬしも連れて行くゆえ、準備いたせ。

 ソーマ殿の料理の腕前を少しでも教わるのじゃ!

 なに? パンツをもらえるか聞いて欲しいじゃと?

 むふふ、おぬしもすっかりパンツの虜のようじゃのう。

 じゃがそれはおぬしが直接お願いするのじゃ!

 なあに、ソーマ殿はお優しい御仁じゃ。

 礼を欠かねば、きっとおぬしの願いを叶えてくれよう。


 さあさあ! そうと決まれば出発の準備じゃ!

 ソーマ殿、また会いに行くのじゃ! 楽しみに待ってたもれ!

 シルフィーはジャージを忘れるでないぞ! ソーマ殿に会うときはあれが正装じゃ!







 そしてわらわたちはソーマ殿と再会を果たし、そのあとに訪れた島の大爆発に巻き込まれたのじゃが、そのおかげでソーマ殿が我が国、アルグランス武王国へ来てくれることになったのじゃ!


 ソーマ殿が我が国でどんな驚きを見せてくれるのか?

 今から楽しみで仕方がないのじゃ~♪




 あ……しもうた…………再会した時にソーマ殿から受け取ったコパルを家に置いたままじゃった……。

 ソーマ殿~~! コパルを少しだけでもいいので分けて欲しいのじゃ~~! ふええ~~ん!

これにてライラ編終了。

次回より第三章に入ります。


三章執筆開始までに、今までの内容の整理とか色々したいので、次回更新は今月中旬になると思います。

少し間が空きますが、少々お待ちくださいませ。

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