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神愛転生  作者: クレーン
第一章
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004話:死神様と、さらし者

回りの神々たちが死神と呼ぶ少女は、俺を凝視しながら語りかける。

前髪のせいで目が見えないから凝視してるか確証はないけど、妙な視線はビシビシと伝わってくる。


「まさか本当に特異点が来るなんて驚きなのだわさ」

「特異点?」


また知らないワードだよ。

さっき聞いた祝福の日とか神力とか、とにかく解るように俺に説明しておくれよ。


「チョイと御免だわさ」


死神はそう言うと、俺の頭にポンと手をのせる。

すると死神の全身がうっすらと光りだし、長い髪の毛がふわりと浮かび上がってきた。

なぜか前髪だけはビクとも動かないのが謎であるが、それ以前に光に包まれる死神というビジュアルは如何なものかと問いたい。

そんな事を思っていると、光も消えて髪の毛も元の状態に戻る。


「ふむ……アンタの体を少し見させてもらったけど、間違いなく人間だわさね。それもついさっき逝ったばかりの死にたてホヤホヤの人間。しかも神力まであるから驚きなのだわさ……」


もうなにがなんなのやら? というか、死にたてホヤホヤって……。

人を炊きたて御飯のように言うのは勘弁してくれよ。

でもようやく話の通じそうな人……もとい、神が来てくれて少し安心する俺がいる。


「ちょちょちょ! ちょっと待ってくだせえ死神様!」

「今日は祝福の日なのだわ! 五大神様方の御神力(おちから)で下界の人間はおろか、生き物すべてが死ぬ事はないはずなのでは!?」

「それに神力を持つ人間というのはあり得ないっしゅよ!?」


我に帰った盾神、恋愛神、酒神が死神に問いただす。

三人の話し方が敬語寄りになってるみたいなので、どうやらこの死神は彼らより格上の存在みたいだな。

というか、また新しいワードを出しながら話を蒸し返すのはそろそろ勘弁願いたい。


「あちしも実際にコイツを直に見るまでは半信半疑だったんだけどねぇ~。生き物の死を司るあちしがそう判断しただわさ。コイツは間違いなく今日死んだ人間。しかもあちしら五大神の紡いだ因果律の影響を受けなかった特別な存在、特異点なのだわさ」


「「「「「「「「特異点!?」」」」」」」」


ネット神とゲーム神以外の神々たちが驚きの表情で俺を凝視する。


「ヘイヘイヘイ! なんだよその特異点ってのは? WOW?」

「私も初めて聞くっス……」

「アンタたちは最近生まれた若い神だからねえ~、まだ特異点の話は聞いてないみたいだわさね」

「スト~~ップ! ちょっとストップ!!」


駄目だ! このままじゃ俺自身の今の状況を把握する前に、またズルズルと話に流される事になる。ここは一度待ったをかけて状況整理しないと頭がパンクする!

というか俺、死んだのはどうやら確定っぽいね……。


「もう俺、なにがなんやらサッパリです! 聞きたい事が山ほどあるんだけど、とにかく一から説明して下さいよ!」


俺は周りの神々たちに頼み込む。

何も知らずにズルズルと流されるのはこれ以上勘弁願いたい。

すると神々たちも、今までの俺との会話が噛み合わなかったことを

思い出したのか、「あーー」と過去を振り返ってる様子だ。

だから最初から人間だって言ってるじゃん。

思い込みコワイ。決めつけイクナイ。


「カーカカッ♪ その様子だと大方コイツらに新米の神とかと勘違いされてズルズルと流されてたみたいだわさね」


死神はこの状況を楽しんでいる様子だけど、まさに仰る通りです。

でもこっちは全然笑い事じゃないんですけどね!

つか、なんだよその笑い方……六本腕の魔界のプリンスかよ!


「安心するだわさ。勿論、ここがどこなのか、アンタの置かれてる状況、あちしら神々の事、その他諸々一切合切ぜ~んぶキッチリと説明してやるだわさ」


おお、神よ……。

俺は心の中で、話のわかる目の前の死神に祈りの言葉を囁いた。

我ながら見事な手の平返しである。

死神に祈るってのもアレな気がするが……。


「とりあえずそんなわけで~――」


死神はおもむろに俺の服の後ろ襟をむんずと掴む。

あ……ナンかすご~くイヤな予感……。


「あちしはコイツを連れて主神席へ戻るだわさ。オマエらもコイツの事を詳しく知りたいなら付いといで~」


死神はそういうや否や、俺の大方の予想通り猛スピードで空を飛び出した。

俺の後ろ襟を掴んだまま……。


「やっぱりまたコレかよぉおおおおおおお!! ノ~~~~~~!!」




死神に連れ去られた俺は、今現在も地獄のスカイハイ中である。


「ちょちょちょ~~! 頼むからもう少しスピード落として!」

「カカカッ! 肝の小さいやつなのだわさ。飛ぶくらいでそんなに騒ぐんじゃないだわさ」

「普通の人間は飛べないんですよ! 落ちたらどうすんだよ!?」

「アンタはもう死んでるから落ちても死にはせんだわさ。まぁ……めちゃくちゃ痛いかもは知れんけど」

「それも嫌なんだよ!!」

「しょうがないだわさねぇ~」


やっと俺の意を酌んでくれたのか、死神は飛行速度を少し緩めてくれた。

これで少し心に余裕ができたので周りを見渡してみると、さっきまで一緒にいた神様たちも飛びながら俺と死神のあとを追っているようだ。

神様って飛行能力は標準装備みたいだな。

そんなことを思いつつ下を見ると、まだ宴会場の風景は続いていた。

何事かと見上げる者も何人かはいたが、大半は笑い合いながら宴会を楽しんでいるのが殆どだ。

ハハハ、平和だね神の国。


「あっれぇ~! 誰かと思ったら死神様なんよ!」

「これはビックリでヤンス」

「こんなところでナニやってるんずら?」


俺が視線を死神に向けると、死神の周りに三人の人影があった。


「おー、魔法神に槍神と機械神だわさ。おひさ~」


眼鏡をかけた十歳くらいにしか見えないチビッ子が魔法神。

槍を持ち、薄い青髪の根暗そうな青年が槍神。

褐色肌でツナギを着てる、元気そうな少年が機械神。

だそうだ。


「いや~これがさ~、コイツなんだけど」


死神が飛びながら腕を伸ばして三人の前に俺を差し出す。

お願いだからそういう怖いのやめてよね! 今も飛んでる最中なんだからさ!


「え? このオッサンがどうかしたずら?」

「我らと同じ神……にしか見えないでヤンスけど?」


いや、確かに四十歳のオッサンだけどね……子供にそんな風に言われると少し寂しいよオジサンは……。

黄昏てる俺を魔法神だけは目を凝らして凝視している。

そしてハッとした顔をすると慌てて死神に問いかけた。


「えええ~~!? ちょっと死神様! もしかしてこの者、人間なんじゃないですか!?」

「おお~流石は魔法神。一目でよく見抜いただわさね」

「やっぱり……でもなんでなんよ?」

「カカカッ! しかもコイツ、今日死んだ人間だわさ」

「えええええっ!? という事は……まさかこの人間、もしかして特異点!?」


魔法神はさらに驚いた表情と物珍しい物を見る目で俺を凝視する。


「御明察~♪ で、うしろに付いてきてるやつらも詳しく知りたがってる訳だから、今から主神席に向かってる途中なんだわさ」

「これは一大事なんよ…… 死神様、私も御一緒させてもらってもよろしいですか? というかこの事を他の神々に知らせなくてもよろしいんですの?」

「ん~~確かにこんな面白い事は滅多にないだわさねぇ……」


死神は少し考え込むといつもの飄々とした表情に戻る。


「おっし! 魔法神や、お前の魔法で宴席全体にあちしの声を伝えるようにして欲しいだわさ」

「はいな~♪ お安い御用なんよ!」


魔法神はビシっと敬礼するとローブの中から、いかにも魔法使いが使ってそうな杖を取り出し頭上に掲げる。

すると次の瞬間、光の線で描かれた巨大な魔法陣のような物が展開。

魔法神はその魔法陣の中に手を入れると、何もないはずの空間からマイクを取り出した。

おおお! すごくファンタジーっぽい! でもマイク! どこから見てもカラオケで見るあのマイクです! ファンタジーが台無し!


「拡声魔法準備完了なんよ。ささ、死神様どうぞ」


魔法神は取り出したマイクを死神に手渡すと、死神は一旦飛行を止めて宙に浮いたまま下の宴会場に向かってマイクで喋りだした。


『みんな~死神だわさ~! 今日は楽しんでるかい?』


死神の声がマイクを通して宴会場辺り一面に響き渡る。拡声魔法って言ってたけどスゲェなこれ……。

そしてこの声を聴いた下の神々たちが一体何事かと、全員が宙に浮かぶ俺たちを見上げて視線を向ける。

うっ……なんか凄く注目されてますよ死神さん?


『今日はみんなに凄いお知らせがあるだわさ。今あちしが連れてるコレ』


死神がまた俺を掴んだまま前に差し出す。止まってても宙に浮いてるんだから怖いんだからね!


『なんとコイツ! びっくり仰天! 特異点なのだわさ!』

「「「「「「「「「「「「「「「おおおおお~~~!!」」」」」」」」」」」」」」」


死神は芝居がかった口調で俺を晒しだすと、下からはどよめきの声が上がる。

もはや俺、さらし者である。

もういいよ……どうせ今の状況じゃ俺はなんにもできないから好きにしてくれ。


『という事で、特異点に興味のある神は主神席まで集まるだわさ~!』

『以上! 死神様からのありがたいお知らせでした! 提供は私、魔法神でお送りしました! なんよ♪』


死神からマイクを返された魔法神が締めのアナウンスをする。


……なんだこりゃ?

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