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神愛転生  作者: クレーン
第二章
39/210

038話:ライラ一行、再び

少しペースが良かったので本日更新です。

週明けも予定通り更新できそうです。

 今、オレの周りにはハイドワーフが六人いる。

 まずはオレの右腕に抱きついてるライラと、左手を手に取っているシルフィーことシルフィリアだ。


「また会えて嬉しいのじゃ♪ ソーマ殿♪」

「ソーマ殿もお元気そうでなによりです♪」

「というか、ちょっと来るの早過ぎない?」


 満面の笑顔で再会を喜ぶ二人だが、オレは苦笑いするしかない。

 あんだけ感動的な別れ方したんだから、せめて数年後にどこかの大陸でまさかの運命の再会! ってのが通例ではないのかな?

 まぁ聞いた話じゃ、帆船だとライラの国からゴラス島まで丸五日ほどで来れるらしいから、そこまで遠い距離でもなかったらしいけど……。


 で、残りの四人だが、まずはエルナイナとダイルの二人だ。


「ソーマ殿、御壮健そうでなによりです!」

「よっ! また美味い飯、期待してるぜ!」

「アハハ、丁度ここで串焼きをやろうと思ってたので御馳走しますよ」

「マジで? やったぜ!」

「まったく……マクモーガン卿、少しは自重して下さいよ」


 あはは、この二人も相変わらずだね。

 特にダイルはこういう軽い性格で堅苦しくないからオレは気に入ってる。


 そして残りの二人だけど、どちらもオレの知らない人物だった。

 一人はドランの爺さんに負けず劣らずの肉体を誇る白髪白鬚の初老の老人って感じ。

 少し温かみを感じる優しい目をしている。

 だが一つだけ気になるのは、右足が膝より下が無く、義足と呼ぶのもおこがましい、申し訳程度のつっかえ棒を装着している点だ。


 そしてもう一人は和服に割烹着スタイルの若い女性だ。

 顔立ちは一言で言えばインド風美人だ。

 髪は茶色で綺麗なパッツンストレートで、服装も相まっていかにも和風美人のような佇まいを醸し出している。

 他の面子より後方に控えているところからも、恐らくメイドかなにかだろう。


「ソーマ殿! 紹介するのじゃ! わらわのお爺様と、お世話役のメイリンなのじゃ!」

「お初にお目にかかる、我が孫の恩人よ。ライラの祖父じゃ」

「姫様のお世話役を仰せつかっております、メイリン・ザイバッハと申します。以後お見知り置きを」

「え? ライラのお爺さん? それにザイバッハってことは……」


 オレはすぐさまAR表示で二人の詳細を確認する。


>名前 :アリオス・ジーク・アルグランス

>レベル:73

>種族 :ハイドワーフ

>年齢 :1472歳

>職業 :王族

>称号 :アルグランス先武王

>スキル:剣術・大剣術・戦斧術・剛力・威圧(小)・火魔法・士気高揚

>状態 :右足欠損(武術系スキルに降下修正)


>名前 :メイリン・ザイバッハ

>レベル:31

>種族 :ハイドワーフ

>年齢 :127歳

>職業 :王家付きメイド隊副長

>称号 :王女直属お世話役・公儀隠密

>スキル:礼儀作法・料理・家事・風魔法・闇魔法・隠密(大)・暗殺術


「ホッホッホ! お察しの通り、先代武王アリオス・ジーク・アルグランスじゃ」

「ドランの孫にございます。その節は祖父が大変お世話になったとか? 此度は不在の祖父に代わって厚く御礼申し上げます」


 ケタケタと笑うアリオスの爺さん……今後は「アリオス爺」と脳内で呼称しよう。

 そして淑やかにお辞儀をするメイリン女史と、実に対称的だ。


 しかしこの爺さんもスキル構成から見て、なかなかの武人のようだな。

 メイリン女史は隠密で暗殺術スキル持ちか……和風インド美人忍者メイドってところか? 属性盛り過ぎでワケわかんねぇよ……。

 とりあえず二人とも凄そうだから、怒らせないようにだけ注意しよう。


「あ、御丁寧にどうも。ソーマといいます……」

「此度は大勢で押しかけてすまんのう。孫娘の恩人ゆえ、色々と話を聞きたかったのじゃが、なかなか皆の衆がそちのことを詳しく話してくれんでのう……。ゆえに直に会いに来た次第じゃ」


 うわー! そんなことでわざわざ五日もかけて会いに来てくれたのか?

 オレの秘密を守るためとはいえ、なんだか申し訳ない気持ちになってきた。


「あ~、なんだかお手間をかけてしまったようで申し訳ないです」

「いやなに…… 我が国は「武」と「誓い」を何よりも重んじる。そちを知る皆がそちのことを口外せぬ誓いを立てておる以上、いかにワシと言えどもそれ以上は追及できんよ」


 あの時の騎士団の面々は先武王陛下に対しても秘密を守ってくれてたんだ……。ありがたいやら申し訳ないやら……。

 また今度会う機会があったら、タップリと肉料理を振舞おう。


「とりあえず立ち話もなんですから、皆さんもこちらでくつろいで下さい」


 脚の不自由な人をいつまでも立たせ放しにしとくのも悪いから、無限収納から大きめの厚手布を取り出して砂浜に敷き、そこに座るように促す。


「なっ! なんじゃ今のは⁈」

「なにもない所から急に布地が?」


 で、お約束の初見さんの驚き。

 いや~なんだか懐かしいねぇ~、このリアクションも。


「ソーマ殿の発明した空間魔法だそうじゃ。ささ、お爺様もメイリンもお言葉に甘えて早く座るのじゃ」


 ライラが二人を執り成してくれている間に、どんどんと無限収納からバーベキューの道具を取り出して準備を始める。


「いきなりこりゃ驚きじゃわい……」

「確かにこのような光景を見せられたら、誰も迂闊には話してくれませんよね……」

「ふむ……皆の衆が口を割らぬのも無理はないか……」

「先武王陛下もメイリン殿も、私どものお気持ちをお察し下さりありがとうございます……」


 初見さんズの言葉に、少しだけシルフィーが救われた表情をした。

 うん、ホントに心労かけちゃってたみたいでごめんね……。

 秘密を守るってのは本当に難しいもんだね。

 よく見たら浜辺に停泊してるボートの船員は、以前の捜索隊にもいたカートン氏を含む三名の騎士だ。

 みんな見覚えのある顔だし、オレのことを知ってる面子なので大丈夫だろう。

 無限収納を見ても今は驚きはしていない。


 とりあえず人数が一気に増えたので、追加の食材をテーブルの上に出して仕込みを始める。

 するとメイリン女史が立ち上がって声をかけてくる。


「ソーマ様。お料理の支度でございましたら、私も多少心得がございますので、どうかお手伝いをさせて下さいませ」

「そんな、折角のお客さんに手伝いなんか――」

「ソーマ殿、良ければメイリンを使ってやってはくれまいか?」

「姫様よりソーマ様の御料理の腕前をお話で伺いしまして、差し支えなければ御教授をお願いしたいと思いまして……」

「ああ、そういうことね」

「わらわからもお願いするのじゃ」

「わかった。じゃあメイリンさん、肉の仕込みをお願いします」


 ということで、お言葉に甘えてメイリン女史に仕込みの手伝いをしてもらうことになったのだが、どちらかというとお料理教室みたいな様相になっていた。

 ちなみにメイリン女史はこの状況も見越して、あらかじめ料理道具を持ちこんでいたらしい。

 流石はライラの世話役。抜け目ないね。



「この肉はまずこのようにして叩いたあと、筋目に対して対角に浅い切れ込みを入れるんだ。すると肉の繊維が切れ、柔らかくなって食べやすくなる」

「なるほど……斯様な技術が……。それに肉の繊維という概念は初めて知りました……」

「他にはオニールを刻んだものと一緒に肉を漬け込み、一晩ほど冷暗所に入れておいても繊維自体が柔らかくなって食べやすくなるよ」

「なんと⁈ オニールにそのような使い道が⁈」


 そんな感じでメイリン女史に色々教えながら肉の仕込みをしているのだが、この世界の料理技術は驚くほど低いことがわかった。

 国によって食文化の違いなどの差異は多少あるものの、肉などは熟成の概念はおろか、さっきのように肉筋の概念すら知らないみたいだ。

 肉料理はブツ切りにして焼くか煮るくらいの感覚でしかないらしい。

 料理まで脳筋の種族だ……。

 じゃあ……今回使用する肉を食ったら、多分みんな仰天するだろうな。


 ちなみにオレの無限収納だが、実は驚くべき機能が追加された。

 今は食材限定だが、なんと収納している食材を個別で、時間の経過や環境温度・状況を設定できるようになったのだ。


 例えば、捌き終えた新鮮なホルスタンの肉が二つ、仮に肉Aと肉Bとしよう。

 肉Aは時間経過オンにして環境温度を三度ほどに設定すれば、二〇日ほどで定番の「枯らし熟成」の熟成肉ができ上がり。

 肉Bも時間経過オン。環境温度を一度。環境状況を湿度七五パーセント、そして送風に設定して二五日もすれば「ドライエイジング」の熟成肉が完成って寸法だ。

 先日でき上がった熟成肉を食ってみたが、今までの無加工の肉と比べて圧倒的に美味かった。


 この機能は料理神様の加護の力が改変してくれたようだ。

 ライラたちと別れたあと、オレはとにかく今の自分の能力や神々の贈り物を徹底的に調べ上げ、できること、できない事などを全て把握することに務めた。

 その時に肉などを熟成できればいいのにと思ったら、この機能が追加されたのだ。

 もしかしたら、他にも必要になったら色々と能力の機能が改変される可能性は大いにある。

 現時点ではここまでだが、今後も研鑚を重ねて色々追及してみようと思う。


 そんなことを考えながら、今はすり鉢でコパルの実を挽いている。


「あの…………ソーマ様? それは一体……?」

「え? これ? コパルだけど――」

「コパル⁈⁈」


 あー、なんだかこのリアクションも懐かしいねぇ~。


「え? なになに? メイリン殿? どうされたのです?」

「どうしたっすか? メイリンさんが大声出すなんて珍しい」


 メイリンの異変にエルナイナとダイルが寄ってきた。


「ももも、もしかして味付けにコレをお使いになるのですか?」

「うん、そうだよ。この島にはコパルが大量に採れるんで、根こそぎ採集したんだ。だから遠慮なく使ってよ」

「おおおおお……これがコパル……私、初めて見ましたよ……」


 メイリンとエルナイナは体をブルブルと震わせているが……やっぱり貴重な食材なのね……。


「いや、エルナイナさんは以前にも食べてるじゃないですか」

「ええっ⁈」

「ちょっと待った! ソーマ、もしかして以前食わせてもらった料理にも……」

「うん、大半の料理には使ってたよ」


 オレの返答を聞いてエルナイナとダイルの顔が青ざめる。


「珍しい味付けの料理だとは思っていましたが……」

「まさかコパルを使ってたなんて思わなかった……」

「ソ、ソーマ殿……わ、私、今これだけしか手持ちが――」

「お、俺も今出せる物と言えばこれくらいしか――」

「いらんわっ!」


 二人が懐から銀貨を入れた袋を取り出して支払おうとするが、全力で拒否した。

 タダで、しかも大した苦労もなく仕入れた物を、知人から金なんて取れんわ。

 しかも半分涙目で震えながらお金出すから、なんだかカツアゲしてるみたいで妙な気分になる。

 オレは二人をなんとか宥めて、その分沢山食べてもらうことを条件として手打ちにした。

 メイリン女史は今も震えたままだ。

 ああもう、香辛料一つで面倒な!

 すると、ライラが何かを思い出したかのように声を上げる


「そうじゃ! コパルじゃ! ソーマ殿! わらわの分のコパルはまだちゃんとあろうな? 前回持って帰るのを忘れてたのじゃ!」


 そういやオレもスッカリ忘れてたよ。

 今度は忘れないよう、先に四〇〇グラムのコパルが入った巾着袋を取り出してライラへ手渡す。


「えへへへ~♪ これで今度国に帰ったあともコパルを堪能できるのじゃ~♪」

「ひっ、姫様……もしかしてそのコパルを扱うのって……」

「当たり前じゃろう、おぬしじゃメイリン」

「そんなぁ~~」

「おぬしは滞在している間にできる限り、コパルを使う料理の数々をソーマ殿から教わるのじゃぞ!」

「こんな超高級食材を扱うなんて……髪の毛が抜けそう……」


 コパルを見つめながら顔を青ざめさせるメイリン女史に対し、オレは心の中でエールを送る。

 頑張れ……そして強く生きて下さい。


 とまぁ、そんな一幕を挟みつつ、みんなで浜辺のバーベキューを満喫した。

 ボートで待機してるカートン氏たちにも、串焼きを数本お裾分けして大層喜んでくれた。

 やっぱり食事は大勢で楽しくが一番だ。

24話でライラの父親の名前をアリオスと間違えてましたので修正しました。

父:シグマ  祖父:アリオス  となります。

設定表作ってるのに大変なポカミスをしてしまい、申し訳ありませんでした。


あとダイルの口調ですが、目上に対しては「~っす」。同格や格下にはタメ口といった感じです。

ですので、ソーマに対しては同格(友人)的な感じで接しています。

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