037話:ゴラス島の謎と別れ そして……
今、オレの家の前では宴が催されている。
ライラの提案で仔ホルスタンの丸焼きを騎士団の皆に振舞ったのだ。
ライラが仕留めたという話で騎士団の皆も驚いていたが、その丸焼きもあっという間に食べ尽くされた。
相変わらずドワーフの食欲は凄まじい。
そして宴というからには酒も必要。
聖杯の使用は危険なのでグラスでの提供となったが、神酒マンゲツを振舞った。
予想通り、最初の一口を飲んだ騎士団全員がマンゲツの効果でしばらくの間涙を流すという一場面もあったけど、そこは御愛嬌だ。
「いや~ まさかこんな無人島で、このような豪勢な食事にありつけるとは思いませなんだですぞ、姫様」
「ええ、しかもどれもこれも極上の味! とても美味しいですわ」
「いや全く! こんな美味い飯と酒にありつけるなら、この島に住み付きたいくらいっすよ」
ドランたちハイドワーフ隊長組も数々の料理を喜んでもらえたようだ。
「このカルフェルバターも絶品じゃぞ! これもわらわが収穫したものなのじゃ!」
うん、育てたのは殆どオレなんだけどね。
でもまぁ、そんな野暮なツッコミは口にせず、今はこの楽しい時間を満喫しよう。
そのあとは飲めや食えや歌えや踊れやで、大変賑やかな宴となったが、夜も深まってきたのでお開きとなり、ドワーフ騎士たちはそのまま家の周りで野営の準備を始めだした。
ライラたちハイドワーフ組は、家の中で二次会と称した雑談会をしているところだ。
その時、ダイルの口から興味深い話が出てきた。
「いやね、だからこの島おかしいんすよ? こんな大きな島なのに、この海域で今まで発見されてなかったってのが。しかもバイキングウルフやガンガルドにランサーディアー。どれも生息地域がバラバラの獣ばかりが一同の場所に生息しているし。ランサーディアーなんて北大陸でも最北の地域にしかいない獣っすよ?」
ダイルは地理学に詳しいらしく、このゴラス島の問題点を指摘していた。
一つはこの島が今回の捜索で初めて発見された島だということだ。
この海域は比較的船舶の行き来が少なくはなく、それ故にゴラス島が今の今まで発見されていなかったのはおかしい話だと言うのだ。
そして二つ目が、先にダイルが指摘した、この島の生態系である。
獣のみならず、植物とかも各大陸特有の種が多いらしく、この島は極めて不自然だというのだ。
ガンガルドは南大陸に生息してるってのは把握してたけど、まさか植物まで固有種が乱立してるとは思わなかった。
確かに不自然だな……。
オレは一つ気になったことがあったので、部屋の隅で佇んでいる元バイキングウルフのマークとサタに念話で話を聞いてみる。
『マーク、お前たちはずっとこの島にいたのか?』
『申し訳ございませぬ。我らもいつからこの島にいたのか覚えが無いのです』
『覚えがない?』
『左様にございます。私たちの記憶なのですが、ある日を境に遡ることができないのです』
『というと?』
『この島で目覚めた時以前の記憶がないということです』
………………どういうことだ?
詳しく話を聞くと、どうもオレがこの島に転生した時くらいの日以前の記憶がないという話だ。
マークたちもどこで生まれ育ったのかもわからないらしいし、出産直前のサタと共にこの島で目覚め、そのままつがいとなったらしい。
サタも父親が誰だか記憶にないらしいが、本能的にマークが夫だと思っているだけだそうだ。
まぁその辺りはマークとサタの問題だから言及はしない。
しかしこの話は……明らかにおかしいよな?
疑問は尽きないが、考えても答えが出ない。
とりあえずその問題は後回しにしよう。
「では殿下、我々は明日の朝に一旦船に戻り、出立の準備を致しますので、御帰国の準備を宜しくお願いしますね」
「うむ、了解したのじゃ」
エルナイナに明日の予定を告げられ、ライラは頷く。
明日の昼前には、この島を出るらしい。
「ソーマ殿も準備してたもれ」
「ソーマ殿がいれば、帰りの航海も安心ですね!」
「え? なんで?」
「「…………え?」」
ライラとシルフィーはさも当然のように、オレにも出立の準備を促す。
……いや、この流れはくると思ったけどね。
「いや、オレは行かないよ?」
「ふぅ~~ 沁みる……」
日付も変わって酔いも覚め、深夜の時間にオレは風呂に入っていた。
いや~ あのあと大変だった。
ライラたちはてっきりオレも一緒に島を出ると思っていたらしい。
だが答えは違っていた。
そう、オレはこの島に残るつもりだ。
それを知ったライラとシルフィーは愕然。
必死にオレを連れ出そうと説得を始めたのだ。
ドランの爺さんたちにも懇願されたが、結局オレは首を縦に振らなかった。
理由はね……様々ですよ……。
そんなことを考えながら湯船に浸かっていると、風呂場に入ってくる人物がいた。
「ソーマ殿……邪魔するのじゃ……」
「ええっ⁈ ライラお前⁈」
ライラがすっぽんぽんの状態で風呂場に乱入してきた。
おいおい! なんで入ってくるんだよ!
いや、全然色気のない体型なので興奮するとかは無いけど、流石にこの状況はマズい。
オレは慌てて背中を向ける。
「どういうつもりだよ! オレはドワーフじゃないんだから――」
そう言葉を続けようとした時、背中に柔らかい感触が伝わる。
ライラも湯船に入って座り込み、オレの背中と自分の背中を合わせたのだ。
「騒ぐと皆が起きるゆえ、少し静かにしてたもれ……」
「なんのつもりだ?」
「…………理由を聞いてもいいかや?」
「オレがこの島に残るって話か?」
「そうじゃ…… わらわはソーマ殿と一緒にいたいのじゃ……。なのにどうしてなのじゃ? 納得のゆく理由を聞かねば諦めきれん……」
「………………わかったよ……」
オレはライラと顔を合わせず、そのまま背中合わせのままで理由を語った。
オレ自身も最初はライラの救助隊が来たら便乗させてもらって、このゴラス島から出るつもりでいた。
だけどこの考えを改めたのは、ライラたちに自分の正体を明かし、皆を眷属にした時だ。
オレはまだこの世界のことを全然解ってない。
しかも持ってる能力はどれもこれも、この世界の理を無視するものばかりだ。
そんな人間が人の多い場所に出てみろ?
間違いなく数々のトラブルを引き起し、ライラたちに迷惑をかけるのは明白だ。
それにオレは静かに暮らしたいという願望もある。
前世ではリアルでもネットでも人にまみれ、良いこともあったけど、嫌なことも沢山あった。
折角の新しい人生と、それを実現する力だ。
もう少し、この静かな生活を満喫していたいのだ。
ぶっちゃけて言えば、もう面倒事はごめんだ。
オレは自由気ままな生活を楽しみたい。
オレはその建前と本音を嘘偽りなくライラに語った。
「ソーマ殿も前世では色々と苦労したのじゃな……」
「人と情報が山のよう多い上に絶え間なく行き交う世界だったから、多分ライラたちには理解が難しいと思うけどね……。とにかく心が疲れる世界だったよ……」
「なるほどのう…… でも……ふふっ……アハハハハ」
「なんだよ?」
地球での暮らしを少し話すと、突然ライラが静かな声で笑いだす。
「いやいや失礼したのじゃ。ふふ……やはりソーマ殿はわらわに負けず劣らずの我儘な性格をしておるのうと思っての」
「ああ、そういうことね……」
「確かにその話からすると、相当な喧噪に包まれた世界のようじゃ……。わらわなら我慢しきれんと思う。静かな暮らしを求めるのも無理のない話じゃ……」
ライラは少しオレにもたれかかり、静かな外の風景を見ながらそう囁いた。
ライラも多分そういう暮らしに憧れてるのかも知れないね。
返答は判ってるけど、一応言ってみるか。
「なんならライラたちの方がここに残ってもいいんだぞ?」
「いや……それは無理な話じゃ。ソーマ殿と出会う前のわらわならその選択もあったかも知れぬが、今は違う。わらわは国に帰って今までの償いもせねばならぬ。まったく……昔のわらわは本当に愚かじゃった…… 一人で生きているような気になって……。でも――」
ライラはもたれかかるのをやめたと思えば、そのまま背を向けたオレをそっと抱きしめる。
背中に柔らかな感触とライラの息遣いが感じる……。
「――わらわは王女じゃ……王族じゃ。民を導かねばならぬ責任がある。一人ではなく、皆と共にじゃ……。それを気付かせてくれたのはソーマ殿、そなたのおかげじゃ……感謝するのじゃ」
「オレはなにもしてないよ……むしろライラたちをオレの我儘に巻き込んでしまったとさえ思ってる……。なのにそこまで慕ってくれて嬉しいよ。感謝するのはオレの方かもね……」
これは本心だ。
そしてライラがオレの背中に寄り添い、お互い何も喋らず数秒の時間が流れる。
「ふふふ…… それにしてもソーマ殿の背は男子にしては狭いのう。それに凄く綺麗で柔らかいのじゃ。少しだけ母上の背中を思い出すのじゃ」
「見た目は華奢な体にして欲しいって神様たちにお願いしたからな~」
「男子なら普通は逞しい体を求めるものなんじゃがの?」
「そういう感性も、フォーランドとオレの世界は違うってことさ」
「アハハ。本当にソーマ殿のことがもっと色々知りたくなってきたのじゃ。じゃがそれもわらわの我儘というもの……」
ライラはそう言いながら立ち上がり、そのまま風呂場を出ようとする。
「ソーマ殿……そなたの考えはよく解ったのじゃ。無理強いはせぬ。わらわは明日この島を発つ。今まで本当にありがとうなのじゃ……」
ライラはそう言い残し、風呂場を出た。
それを確認したオレはそのまま上半身だけ出して湯船の縁にもたれかかる。
ふぅ……危なかった……。
オレにロリコン属性はないはずなのになぜだ?
オレはその後、精神力補整にものを言わせて、荒ぶる息子が鎮まるまで風呂に浸かっていた……。
正直、すんげぇドキドキした。
そして翌朝、エルナイナとダイル、そしてドワーフ騎士一五名が先行して船に戻り、船を島の南側へ移動。
昼前にライラ受け入れの準備が整い、ドランとカートン氏を含むドワーフ騎士三名がライラとシルフィーを伴って、オレの家から去ろうと準備を進めている。
「しかし姫様? 本当にその服装で行かれるのですか? それにシルフィリアまでも……」
「国に着く直前には正装に着替えるゆえ、それまでの間は好きにさせて欲しいのじゃ」
「私からもお願いします。ザイバッハ伯もこのジャージを着れば私たちの気持ちが解りますよ!」
うん……ライラとシルフィーはジャージ姿だ。
どんだけ気に入ったんだよ。
とりあえずライラとシルフィーの二人は、オレが与えた着替えを全部持って帰るそうだ。
特に下着の心地良さは格別だったらしく、追加をせがまれた。
なので船の準備が整うまでの間、オレはそれぞれ五着づつ下着を追加で作ってやった。もちろん縞パンだ。
そんなことをしていると、伝令役のドワーフ騎士が一人、アロン道を抜けてやって来た。
どうやら出発準備が整ったみたいだ。
オレは見送りも兼ねてライラたち一行と共に南の浜辺まで付いてゆく。
無論マークたちフェンリル家族も一緒で、ライラはガドラを抱えてマークの背に跨っている。
マークたちも口にこそしないが、結構ライラたちと仲良くしていたから、少し寂しいみたいだ。
それが証拠に、サタはキャストを抱えているシルフィーの側に付いて離れようとしない。
なに……生きてさえいれば、またいつか会えるさ……。
そうこうしている内に、オレたちはアロン道を抜けて南の浜辺に到着した。
浜辺には一五人くらいが乗れる大きなボートが寄せられており、一〇〇メートルほど向こうの岸辺には、大きな帆船が錨を下ろして停泊している。
ライラの姿が見えたとたん、帆船の乗員たちからも凄い歓声が贈られる。
ライラはそんな乗員たちに満面の笑みで手を振って応える。
「では姫様、あちらのボートに――」
ドランの爺さんがそうライラに声をかけた次の瞬間!
森を抜けて一頭のガンガルドが姿を現し、雄叫びを上げる。
どうやらドワーフたちの歓声を聞きつけてやってきたみたいだ。
やれやれ、ライラの折角の門出だってのに、本当に無粋なヤツだ。
ちなみにレベルは七二。この島で一番弱いガンガルドだ。
「ガ、ガンガルド! よりにもよってこんな時に!」
「早く姫様をボートへ! 騎士隊は防御陣形で前へ!」
エルナイナとダイルが慌てながらも指示を出しながら前に出ようとするが、それをオレが手を出して制止する。
「ここはオレに任せて、皆さんは早くボートへ乗ってくれ」
「い、いやしかし……」
「ダイルよ! ここはソーマ殿にお任せするのじゃ! おぬしたちも全員早う退くのじゃ!」
戸惑うダイルたち騎士団を引き留めたのは、既にボートに乗船したライラだった。
「ソーマ殿、本当に今まで大変世話になったのじゃ」
「礼はいいよ。それよりも、国に帰ったらしっかりとやるんだぞ」
「うむ! 任せるのじゃ! あ、あと……」
ライラは少しもじもじした仕草を見せながら、こめかみに指をトントンと当てる。
ああ、念話か?
『なんだライラ?』
『こ、これは誰にも聞かれておらんじゃろうな?』
『ああ、オレとお前だけだ』
『なら良し! 次の一言を言ったら念話を切ってたもれ』
『え? あ、ああ、わかった』
『ソーマ殿! 本当にありがとう…………大好きなのじゃ!』
その念話を送ったとたん、ライラはお日様のような笑顔でオレに微笑みながら手を振る。
オレはもう赤面で体の体温が上昇してるのが手に取るように解る。
うっわ~~!! 女の子にそんなこと言われたの初めてだよ!
瀧蒼馬、齢四〇にて淡い恋を体験ってか?
なんて冗談言ってる間もなく、空気を読まないガンガルドが接近する。
ったく! うっとおしい!!
オレは迫るガンガルドに飛びかかり、思いっきり裏拳を右側頭部に叩き付けた。
グァルゴォオオ⁈⁈
そのままガンガルドは左に倒れ込む。
今のオレはチョイとテンション高いぜ!!
「い、今のうちだ! ボートを出せ!」
その光景を見て一瞬たじろぐドランの爺さんだったが、直ぐに我を取り戻してボートの乗員に指示を出す。
流石は歴戦の騎士。こういう時は頼りになるね。
全員無事にボートへ乗り込んで浜辺から出たのを確認すると、無限収納から聖剣エクスカリバーを取り出す。
悪いけど、お前にはライラへの餞別になってもらうぜ。
起き上がったガンガルドに全速で向かい、一瞬で首と尻尾を斬り落としてやった。
そして尻尾の先端を掴んでブンブンと振り回し、即席の血抜きをして、そのまま尻尾をライラの乗るボート目がけて投げつけてやった。
投げた尻尾は放物線を描きながら見事にボートへ着地。
少しボートを揺らしてしまったようだが大丈夫そうだな。
ライラとシルフィー以外の面々はその光景に驚きの表情をしたままだ。
「ライラー! その尻尾は餞別だ! 美味いから食え!」
「わっはっはっはっは! 流石はソーマ殿じゃ! ありがたくいただくのじゃ!」
「ああ! シルフィリアさんも元気でなー!」
「はい! ソーマ殿もお元気で! この御恩は一生忘れません!!」
「さようなら―!! 楽しかったぞー!!」
オレはそう最後の別れの言葉を告げたあと、ライラが帆船に乗り込んで出港するまでの間、ずっと砂浜で佇んでいた。
そして帆船はそのまま東に向けて進み、その姿は徐々に小さくなり…………そして消えていった……。
「主様~ ライラたち行っちゃったの?」
「ああ、そうだよ……」
「賑やかな姫でしたね……」
「そうだな……」
砂浜で胡座を掻いてるオレの膝上に乗っているガドラとキャストを撫でながらそんな会話をする。
「主様……少しの間、元の姿に戻っても宜しいでしょうか?」
「ん? ああ、他に誰もいないし大丈夫か。許可する」
マークにそう返答すると、フェンリル家族は犬の姿から元の神獣の姿へ戻り、一斉に船の消えた方角へ向けて遠吠えを上げる。
何故だか解らないが、その遠吠えが凄く心に沁みた……。
さて……また今日から一人だけの無人島生活が始まる。
ライラとシルフィーがいなくなって寂しくないと言えば嘘になるが、今はマークたちもいるので孤独は感じない。
少しだけ賑やかさが減っただけだ。
そう思いながら、オレは気持ちを切り替える。
そして今は火竜の月、二〇日。
ライラたちと別れてひと月半の時が流れた。
その間、特に大きな動きはなかった。
この間にやったことと言えば、まずガンガルドを全て退治した。
といっても、残りの三頭を仕留めたのはマークたちフェンリル家族だ。
一頭はマークの雷魔法で一撃。
一頭はサタの氷魔法で氷漬けに。
最後の一頭は身体強化系土魔法のガドラが肉弾戦で弱らせ、最後にキャストの火魔法で黒コゲだった。
レベルからして強いのは解っていたが、もう圧倒的だった。
まぁオレほどではないけどね! と、飼い主として少し威厳を保ちたいだけですハイ。
あと、最近少し地震が増えた。
まぁ近くに活火山もあるし、少しくらい地震があってもおかしくはないよな。
関東住まいも長かったから、すっかり地震に慣れちゃってるんだよね。
あとは特に何もなく、いたって自由気ままな無人島生活を満喫しております。
一つだけミスったかな? と思ったのは、ライラ捜索隊にライラ保護の謝礼として、少しだけでもお金を請求しても良かったんじゃないかな~ってことくらいかな。
ゲーム色々やり過ぎて、残り課金額が銀貨三〇枚を切りました。
大統領楽しかったです。レッツパーリィ……。
そして今日は二〇日の休日なので、フェンリル家族たちと浜辺でバーベキューでもしようという話になってる。
ということで、只今食材を絶賛仕込み中である。
仕込みも終わって準備も整ったので、マークたちを伴ってアロン道を南下する。
するとマークたちが何か異常に気付いたようだ。
「主様、この先から人の気配がします」
「なに?」
「スンスン! あっ! この匂い、ボク知ってる!」
「スンスン…… 本当だわ! 私もこの匂いに覚えがあります!」
「お前たちが知ってる匂いって…………おいおい、まさか?」
「フフ、左様でございますよ、主様」
オレは地図レーダーでの確認をあえてせず、南の浜辺へ向けて全速で走った。
そしてアロン道を抜けて浜辺に出ると、捜索隊が使っていた大型帆船と、更にもう一隻、一回り大きな帆船が岸辺に停泊していた。
赤い塗装や銀の装飾も鮮やかで、一目で軍用ではなく、VIPを乗せる豪華客船のような仕様だというのが解る。
そしてその甲板から聞き覚えのある声が木霊する。
「ソーマ殿~~~!! 遊びに来たのじゃ~~!!」
「お久しぶりでございま~~す!!」
甲板の上でライラとシルフィーが元気いっぱいに手を振っていた。
………………ジャージ姿で。
第二章、もうちょっとだけ続きます。
週末に休日出勤になってしまったので、次回更新は週明けになりそうです。




