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神愛転生  作者: クレーン
第二章
23/210

022話:ダイナソーハンター

 オレは今までにないくらいの力を全身に込め、ガンガルドめがけて一直線に突進する。

 右目を潰された怒りからか、完全にオレをターゲットに移したガンガルドが威嚇の咆哮を放つが、そんなチャチな威嚇は通じない!


>敵のスキル「威嚇(中)」をレジストしました


 ヤツの足元まで迫り、威嚇で隙だらけの下顎を思いっきり下から飛び上がって蹴り上げる!


神威昇乱脚(かむいしょうらんきゃく)!!」


グギャル!?


 今の一撃でヤツの下顎を粉々に砕いてやった。

 顎が砕かれてはまともな叫び声も上げれないだろう!

 続けてヤツの眼前に飛びかかって(ひたい)めがけての正拳突き「神威正天拳(かむいせいてんけん)」で頭蓋骨を砕き、そのまま体を回転させて横っ面に思いっきり回転蹴り「神威流舞脚(かむいりゅうぶきゃく)」を食らわせる。

 全て武神様より授かった対巨獣戦用の格闘術「神威流拳法」の奥義の技だ!


 武神様の加護によって得た「総合格闘術」とは、人間から猛獣……それこそ神まで、あらゆる相手に対応するために編み出された各流派の格闘術その全てを統合し、その全てを同時に行使する力だ。

 解り易くいうと、今の相手はガンガルドのみだが、そこに人や他の獣の群れ、それこそ竜まで加わろうが、全て素手で同時に相手をし、その全ての相手に手加減や行動不能、殺傷といった状態へともってゆくための力加減などにも柔軟に対応できる技術だ。

 ただ全力を出して相手を倒し、殺すだけではない。

 全ての相手に「柔と剛」「必殺と活殺」を与える戦闘術、それが武神様の描く「総合格闘術」だ。




グアガルッ⁈ ガゴギャ⁈


 打撃を受けるたびに頭部の骨を砕かれた上に、打撃の衝撃によって脳が上下左右に揺れてヤツの視界はドロドロだろう。

 

 ガンガルドは頭を左右に振りながら後ずさる。

 だが、残された左目からはまだ殺気は消えてない。

 まったく大したタフさだよ。

 流石はゴラス島ナンバーツーの実力者だけのことはあるな。

 ナンバーワンのオレに比べたらズーンと劣るけどね!


 過去三度も相手して理解したが、このガンガルドは獲物を目にすると、我を忘れたかのように襲い狂う凶悪なハンターだ。

 とにかく獲物を認識したら「退く」という行動を起こさない。

 今回の獲物である二人が衰弱するまで待ってた辺り、多少このガンガルドは頭も回るみたいだけど、本質はやはり同じだ。

 手加減なんてしたら確実に反撃を喰らうので、目の前のコイツも御多分に漏れず、こちらも必殺の姿勢で挑ませてもらうよ。


 脳の揺れが治まったのか、ガンガルドは少しオレから距離を離し、オレの周囲をジリジリと回りながら警戒する。

 あーもう、そういうの鬱陶しいから、そろそろやられてくんないかな?

 若干気怠そうにそう思った極僅かな隙……。

 ヤツはそれを見逃さなかった。


 ガンガルドはオレを差し置いて、ヤツから一番近い距離にいる者。

 すなわち瀕死のシルフィーめがけて走り出す。


 しまったぁあああ!!




 …………な~んてね。

 そんな行動は想定済みですよ!

 お前みたいな狡猾な奴は、大抵最後にそういう行動を起こすのは世の常なのだよ。


「■■……土壁(ウォール) ■■……土硬化(コンクリート)


 魔法詠唱完了と同時に、シルフィーの前に五メートル四方のコンクリート壁を作り上げる。

 その厚さ五〇センチ! その粉砕された頭で砕けるもんなら砕いてみやがれ!


ズガァアアアアアアンンンンン!!


 突如目の前に現れた壁にガンガルドはその突進の勢いを殺せず、モロに顔面から直撃した。

 無論、壁は微動だにしない。

 その光景は、まるで衝突実験で潰れる車のように、顔と頭が完全にグシャリと潰れた状態だ。

 オレが現れるまでこの島で最強を誇っていたガンガルドは、そのまま崩れるように絶命した。


 砂でも土と同じ魔法が適用できるのか実験しといて正解だったね。

 テメェにゃ悪いが、用意周到さではオレに分があったみたいだな。


 そんなことを考えつつライラの方へ目を向けると、彼女は口をポカ~ンと開けた表情で微動だにしない。

 う~ん、少しやり過ぎたか?

 とりあえずあとで口止めしとこう。




 おっと! 今はそんなことを考えてる場合じゃなかった!

 瀕死状態のシルフィーを早くなんとかしないと!


 するとライラもそのことに気付いたのか、倒れてるシルフィーに近づく。


「シルフィー! シルフィー! もう大丈夫じゃ!」

「ひ……姫さ……ま? よくぞ御無事で…………ごふっ!」


 シルフィーが弱々しい声でライラの無事を喜んだが、次の瞬間口から大量の血を吐き出した。


>HP  :2/132

>スタミナ:0/85


 ヤバイ! 体力もスタミナも完全に枯渇してる。

 今こうして意識があるのもライラを想う精神力だけでもっているようなものだ。

 失った左腕の傷口からはまだ血が流れてる。

 このままだとあと数秒で死ぬ!


「いやじゃシルフィー……死ぬでない…… わらわを……わらわをもう一人ぼっちにしないでおくれ……」


 シルフィーの死期を悟ったのか、ライラが涙を流しながらうな垂れる。


 ……二人の悲痛な思いを無駄にして悪いけど、治すよ?


 オレは光魔法のリジェネレイトを行使しようと詠唱を開始する。

 が、AR表示の警告がそれを阻んだ。

 ナンデ⁈


>部位欠損を再生させるには、対象のスタミナが消耗し過ぎています


 何⁈ 魔法で欠損を再生させるには、ある程度のスタミナの確保が必要なのか?

 ならば!


「おいシルフィー! これを飲め!」

「……こ……れは?」

「いいから飲め! 時間がない! このままじゃ死ぬぞアンタ!」


 無限収納から取り出したスタミナ回復薬の瓶を無理矢理口に突っ込んで流し込む。

 するとシルフィーのスタミナがみるみる回復して半分以上回復した。


>HP  :2/132

>スタミナ:60/85


 少し顔色が良くなった感じがするが、傷が深くてまた徐々にスタミナが減ってゆく。


 どうだ?

 再びリジェネレイトの詠唱を開始すると、今度は警告はなかった。

 よし!


「☆☆☆☆……再生(リジェネレイト)


 詠唱を完了すると、まるで傷口から木が生えてくるように、まず骨が伸びながら腕の形を形作り、その上から筋肉、脂肪、血管、皮といった順に徐々に再生され始める。

 そして詠唱完了からほんの数秒で、シルフィーの左腕は完全に元通りに再生した。


「そ、そんな……腕が……動く! 動く!!」

「おお! これは再生魔法かや⁈」

「まだ動くな! 次は他の傷を塞ぐ」


驚く二人を黙らせ、次はヒールを詠唱して他の傷口や傷ついた内臓を回復させる。


「☆☆……治癒(ヒール)


 詠唱を完了すると、シルフィーの体が一瞬光に包まれ、概ねの傷口を塞ぐことができた。

 まだ完全ではないが、一応の応急処置ができただろう。

 最初からハイポーションなどを使えば良かったんだろうが、数に限りがあるし、なによりもこれの存在そのものが知られるのは、今の段階では危険だ。

 スタミナ回復薬程度なら普及してるかも知れないけど、これの使用もやはり少し悩んだ。

 まぁ結果的にシルフィーの命を救えたから今は良しとしておこう。

 幸い、今までの行動の目撃者はこの二人だけだ。

 どこまで信用できるか判らないが、口止めだけはあとでしておこうと思う。

 そんなことを考えながらシルフィーのステータスをもう一度チェックする。


>HP  :28/132

>スタミナ:13/85


 げげっ! あんなに回復してたスタミナがめちゃ減ってる⁈

 どうやらリジェネレイトは対象者のスタミナをかなり消費するみたいだな。

 重要なことなので覚えておこう。


 ちなみにリジェネレイトの魔法一発でMPが二〇〇〇程ごっそりと減り、立ちくらみのような軽い倦怠感を覚えた。

 流石は治癒系の最上位に位置する魔法。

 消費MPが半端ないね。

 まぁ、もう既に消費分の半分以上が回復してるんだけどね……。

 まったくチートボディーは最高だぜ!


 なんて冗談はとりあえず置いといて、今はこのオレを驚きと好奇の目で見つめるハイドワーフの美少女二人の今後の対応をどうするかだな?


 なんてことを考えていたら、先に口を開いたのはシルフィーだった。


「あの……その……ソーマ殿、先ずは貴殿に感謝の意を表したい。此度は姫様をお守りいただけたばかりでなく、私を……も……?」


 シルフィーが堅苦しい言葉を重ねるが、次の瞬間ガクンと体を崩し、その場に倒れ込んだ。


「どうしたのじゃシルフィー⁈ しっかりせよ!」


 あ、状態に「精神疲労(重度)」と「昏倒」が追加されてる。

 こりゃ相当な精神力を消費したからだろうな。

 恐らく緊張の糸がプッツリと切れたんだろう。


 シルフィーの側で慌てるライラの頭に軽く手を置く。


「大丈夫だ、精神力を消耗して気を失ってるだけだ。とりあえずオレの家に運ぶからお前も来い」

「わ、分かったのじゃ……」

「あと――」


無限収納から取り出したコップにウォーターで水を注いでライラに手渡す。


「まず水飲め。体中カラカラだろ?」

「こ、これが水魔法。それにその収納魔法とかとやら……。シルフィーから話に聞いていたが、驚かされてばかりじゃ……。それにガンガルドを素手で圧倒したその実力。そなたは一体――」

「いいから飲め。そういう話はまたあとでいいだろ?」


 ライラの言葉を塞ぎ、水を飲むことを促す。


「りょ、了解した。では……」


 ライラは恐る恐るコップに口を付け、そして水をゴクゴクと飲みだした。


「ふう……生き返るようなのじゃ……」

「もう一杯いくか?」


 人差し指をクルクルと回しながらライラに訪ねる。


「すまぬ、もう一杯お願いするのじゃ!」

「あいよ!」


 結局コップ四杯の水を飲み干したライラに、今度はアポルの実を取り出して与える。


「家に向かう間にこれでも食っとけ。行くぞ」


 そう言いながら、倒れてるシルフィーをお姫様だっこの状態で抱え上げて家に向かう。


「この実は…………フフフ、そうか……やはりあの時のもそなたが……」

「なんの話だ?」

「いや、なんでもないのじゃ! ありがたくいただくのじゃ!」


 ライラの言葉に若干心覚えがあるが、今は恍けておこう。


 ちなみに倒したガンガルドは、アロン道を入ってすぐの時点で思い出し、慌てて引き返して収納した。

 ハハハ、オレもなかなか格好がつかないね。


 そして巨大な獣の死体が一瞬で消えるという光景を目の当たりにし、ライラが更に驚きの表情をしたのは言うまでもない……。


 スマン、お前も早く慣れてくれ……。

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