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神愛転生  作者: クレーン
第四章
202/210

196話:燻り出し ★

『エキルスが……消えた?』


 ライラたちの話によると、今朝の出発の時点で海の神殿へと礼拝に出ていたエキルスなのだが、お昼どころか夕方になっても帰ってくる様子がないので、心配になったルトが丁度帰宅したソルムにそのことを相談。

 そのままマークからライラといった流れで伝達され、結論としてオレに協力を仰ごうということになったそうだ。


『ということですまんのじゃが、ソーマ殿の力でエキルスの居場所を突き止めてもらえんじゃろうかのう?』

『メイド隊の副長が行方不明となれば流石に一大事ですので、どうかここはひとつ、よろしくお願いします』


 メイド隊三副長の一角が行方知れずとなれば、流石にライラとシルフィーも心配の様子だ。

 知っている人物なら捜索は容易い。

 オレはそれを快諾してAR表示の地図を展開。

 エキルスの検索を開始した。


『エキルスは………… ん? まだ海の神殿にいるみたいだぞ?』

『それは本当かの? ソルムや、そっちはどうじゃ?』

『…………御主人様、それはお間違いないですか?』

『ああ、オレの地図では、今エキルスは海の神殿の神像前にいるって出ているぞ?』

『実は私、今その場所にいるんですけど、エキルス姉様の姿が見当たりません……』

『なんだって⁈ そんなはずは――』


 ソルムの言葉に驚いたオレは慌てて王都全体の地図と、眷属全員のマーカーを表示した。

 確かにソルムはエキルスの居場所を示すマーカーと同じ場所にいる。

 そこにいるはずなのに姿がない…… 一体どういうことだ?


『そんなバカな……ありえないぞ……』


 オレは次にアルグランス全体の地図を展開して、もう一度エキルスの居場所を探る。

 しかし結果は変わらず、王都の海の神殿で動かず仕舞いだ……。

 一体どうなってるんだ?


『まさかソーマ殿の目をも眩ませるとは……あやつ一体何をしよったのじゃ?』

『私、もう一度この付近を捜索してみましょうか?』

『ボクももう一度お屋敷内を探してみます』


 まさかの結果に、ライラとソルムの声色が曇る。

 アディもエキルスには懐いているだけに少し心配の様子だ。

 しかし考えられない話だ……。

 オレの地図機能全般はこのフォーランドに存在する魔法やスキルではなく、五大神様たちの力によって与えられた「神の能力」だ。

 その能力を前に、エキルスのようなフォーランドの一般的な女性がそれを掻い潜るなんてまず不可能のはずだ……。

 それこそ、神の力をもってでもしないと…………。


 と、オレはそこまでの考えに到ったとき、先ほどの神獣姉弟の話を思い出す。

 神獣であるキャストとガドラでも気取らせない不穏な気配……。

 そしてオレの能力を掻い潜る力……。

 これはひょっとかすると……。


『すまないみんな、少しの間だけ待っててくれないか。もしオレの予想通りだとすると、エキルスは直ぐに見つかると思う』

『なんじゃと⁈ それは誠かのう?』

『ああ……多分大丈夫だと思う。ソルムも屋敷に戻っていいよ。アディもしばらく待機してて。お疲れ様』

『わ、分かりました』

『承知しました』

『じゃあまたあとで』


 オレはそう言い残して念話を切り、この状況をみんなに話した。


「お屋敷でそんなことが……」

「まったく……エキルス姉様、なにやってんだよ……」

「今朝からお姿が見えないから少し心配だったんですよね~」

「わたすも旦那様の送り出しだけは絶対すると思ってただすから、変だとは思っていたでげすよ……」


 サーシャ以下、四人のメイドたちも心配そうだ。

 さてさて、それじゃあ困った猫ちゃんを探し出すとしますかね~。




 メイドとベルナルド、ディックたちをキャンピングカー近くに設置しているテントに移動させ、オレは子犬モードの神獣姉弟と一緒にキャンピングカーのダイニングに入った。


「どうだ? なにか気配は感じるか?」

「いえ、明確には…… ですが不穏な気配は微量ながら感じます」

「砂嵐で目や鼻を邪魔されているような感覚がするね? 姉上」

「そうね……ガドラ、今の表現は言い得て妙だわ」

「えへへへ~ 姉上に褒められた~♪」


 なるほど……ジャミングされているような感覚か~。

 こりゃ益々もってオレの予想通りの展開になっているのかも知れないぞ。

 じゃあ検索してもダメなら、煙で燻り出すまでだな。


「じゃあいくよ、二匹ともいいか?」

「ハイ! 問題ございません!」

「やっちゃって下さい、主様~♪」

「では遠慮なく!」


 オレは姉弟に確認をすると、その場で威圧スキルを発動した。

 範囲はこのキャンピングカー一帯だ。

 オレの威圧によって周りの空気が震える。

 ふむ……この程度の威力では駄目か……?

 じゃあもう少し強めに中威力で! あまり強くし過ぎると、人なら心臓が破裂する恐れがあるからね。


 オレが威圧を徐々に強めるたびに、車内の空気がビリビリと震えて響き出す。

 それでも音沙汰がないので、大のレベルへと威力を上げる。

 このまま上までいくと、次は強大威力の威圧に突入するぞ?

 大丈夫か? というか、もしかしてオレの予想が外れただけで、本当にここにはいないのか?


 と、そう考えた次の瞬間、ダイニングの屋根板と共に、なにかが勢いよく床に落下した。

 その落下したものを確認すると、それは白目むいて口から泡噴きながら手足をピクピクと痙攣させて気絶している猫耳の獣人……エキルスだった……。


挿絵(By みてみん)


「やっぱり…………」


 エキルスのあられもない姿を横目に、改めて地図レーダーでエキルスのマーカーを確認すると、今度は正常にオレの目の前の場所に表示されている。

 そして王都の海の神殿に表示されていたマーカーは消えていた。


 つまりアレだ。

 先ほどまでのエキルスの居場所はダミーってこと。

 そしてエキルスの本当の居場所をこの目で見て確認した段階で、そのダミーは消失。

 多分そういう仕掛けになっていたのだろう。

 そしてエキルス個人でこんな芸当は不可能だ。

 となればこの一件、あの人たちが絡んでいるとみて間違いないだろう。

 オレはすぐさま、その該当する人物たちに念話を繋げた。


『フラメン姉さん! ミツルギ姉さん! ちょ~っとエキルスのことでお伺いしたいことがあるんですけどねぇ~?』

『お、その口調から察するに、もうバレちゃったのだよ?』

『ラララ~♪ エキルスもまだまだ詰めが甘いぃいい~~♪』


 やっぱりこの神様どもの仕業だったか……。


次回更新は木曜日を予定しております。

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