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神愛転生  作者: クレーン
第四章
197/210

191話:方向転換

 豊穣の月、二〇日。

 普段通りの朝を迎えたあと、今日のオレのお世話係であるテトラ、そしてソルムと三人で王城へ向かっていた。

 なんでもアリオス爺がオレに話があるそうだ。


 ソルムはこのままメイド修業でメイド隊の厩舎へと向かうのでそれを見送ったあと、オレはテトラを伴って城内へと脚を運んだ。

 すると出迎えのメイドが待ち構えていたので、そのまま応接室へと案内された。


「おはようアリオス爺。なにか用かい……ん?」


 応接室へと案内されたオレはいつもの感じで気軽にアリオス爺へ挨拶したが、その他にも人がいるのを見て言葉を止めた。

 だけどそれはオレの良く知る面々だった。


「おお、ソーマよ。急に呼びだしてすまなんだのう」

「いや、それはいいんだけど、どうしてベルナルドさんとディックさんが?」


 オレの言葉に対し、二人は椅子から立ち上がって軽く会釈をした。


「まぁその辺も含め、順を追って説明するわい」


 アリオス爺はそう言いながら、オレを席に座るよう促す。







「つまり、明日からこの二人を連れてクレイトに向かえってこと?」

「うむ、掻い摘んで言えばそういうことになるのう」


 アリオス爺の話によると、今のクレイト帝国は本当の皇帝、すなわちマルス皇帝の手によって、ハイルマンに荒らされた国土の再建に大忙しらしい。

 まぁ急にハイルマンの企てによる皇帝入れ替わり事件が解決したからといって、急に何もかもが元通りってわけにはいかないわな。

 結果的にアルグランスと友好的な状態になったとはいえ、この場にマルス皇帝がおらずに、その交渉の全権をベルナルドに一任している辺りで、今現在もマルス皇帝が本国で多忙を極めていることは容易に想像できる。


 で、ベルナルドがディックを含めた騎士数名でアルグランスとの講和団を組織して来国。

 先日無事に講和協定が結ばれて、長い間いがみ合っていた両国の関係は友好的なものへと変わったが、その結果をいち早く本国へと知らせるため、一緒に来ていたガラン元ペルマン伯領騎士団長が密書を携え、オルソンとエドガンのおっさんを引き連れて先日帰国の途へと就いたそうだ。


 そしてベルナルドはその協定に関する細かい微調整を行うためにディックと共に残り、その調整も昨日で終了したので、あとは帰国するだけとなった。


 そこで、オレもそれに同伴してクレイトへ赴き、その場でマルス皇帝直々に建国の認可をもらってこいということらしい。


「でもそれなら、交渉の全権を任されているベルナルドさんが認可してくれればいいだけの話じゃないの?」

「いや。私が任されているのはアルグランスとの講和に関することだけだ。ソーマ殿の建国に関する話となると、陛下に直接判断を下してもらわねばならぬ。というか、そんな重大な話を私の一存ではとても決めれぬよ……」


 さいですか~。


「セイルとファーベストへ向かうにはまだ少々時間がかかるが、その間の時間を遊ばせておくのも勿体なかろう? 幸いここからクレイトの帝都まではそこまで遠くないし、おぬしの持つ脚ならば数日で往復できるであろう?」

「確かに……」

「ならばその間にクレイトに行ってこい。ソーマがここに帰るまでの間に、ワシも可能な限りファーベストとセイル行きの用意を整える。どうじゃ?」

「私からもお願いしたい。ソーマ殿の建国に関することも大事ではあるが、何よりも我が帝国の恩人たる貴殿が来てくれれば、陛下がお喜びになる。実は何かの口実でソーマ殿をお呼びたてして欲しいとも言われていてな……私の顔を立ててここはひとつ!」


 ベルナルドが最後にそう言いながら頭を下げる。

 そういやあの時も先を急いでいたから、要件済ませてさっさと帰っちゃったしな~。


 確かにここでセイル行きをただ待っているより、一国でも多く先に認可を得た方が、後々楽にはなるな。

 幸いなことにツララからカスガ国の認可を得たし、この勢いに乗ってみるのも悪くないかも知れない。

 ……まぁそれに付随して、ツララからの求婚というおまけまで付いてきたわけだが……。


 とにかくだ。

 アリオス爺の言う通り、セイル行きの出発をただ待っているのは確かに勿体ない話だし、幸いなことにオレはクレイトを救った恩人という肩書きもある。

 建国の許可という点においては問題はないだろう。


「了解した。じゃあこの二人を連れてクレイトに行ってくるよ」

「うむ! それが良かろう」

「でもその前に……」







「うおおおお!」

「なっ⁈ なんて速さだなんだ、この馬車は!!」


 オレはベルナルドとディックの二人にキャンピングカーの搭乗適正があるかどうかのテストをするため、二人とメイドを乗せて王都東側で走行テストをしていた。

 今回のクレイト行きの急行スケジュールも、このキャンピングカーの速度があればこその計算だからな~。

 これに乗れない者は流石に一緒には連れて行けない。

 最悪二人は後追いで、オレだけ先行しようとは思っていたのだが、幸いなことに二人とも悪酔いはしなかったみたいだ。

 やはり二人とも騎士だし、乗馬や馬車に乗り慣れているからなのかな?




 とりあえずテスト走行を終え、適当な草原で休憩をとっていた。

 同伴したサーシャとレットラーの二人が、早速キャンピングカーのキッチンを使って紅茶を淹れてくれる。

 ちなみにテトラはこれに酔うのでお留守番だ。


「どうぞ、旦那様♪」

「ありがとう、サーシャ」

「クレイトの騎士様方もどうぞ」

「これはかたじけない」

「あっ、ありがとうございます!」


ディックが紅茶を差し出したレットラーに対して少し緊張気味だ。

 なんだ? 彼女に気でもあるのか?

 レットラーが欲しいなら、まずはこのオレを倒してからにするんだな!

 ……なんて冗談は置いといて、とりあえず二人に乗り心地を確認しておこう。


「どうでしたか? ベルナルドさん」

「最初は速度に驚いたが、慣れれば快適だな。これなら帝都までの道のりもそう時間はかかるまいよ」

「ディックさんはどう?」

「私も問題ありません! あと……その……」


 ん? なにやらディックが言いたそうだな?


「も、もしソーマ殿がよろしければその……歳も近いことですし、私のことはもう少し気軽に呼んでいただければと……」


 あ、そういうことね。

ディックの年齢は一八歳なので、オレの実年齢からすると半分にも満たない若造だけど、そういう提案なら喜んで受けよう。

 堅苦しいのは好きじゃないからね。

 他の国の人でも、そういう風に気軽に話せる間柄は欲しいものだ。


「解った。じゃあこれからはディックと呼ばせてもらおう。オレのこともソーマでいいぞ」

「そ、そうか……じゃあよろしく頼む……ソーマ!」

「ああ、こちらこそヨロシク!」


 そんなやり取りをするオレたち二人を、ベルナルドは優しい笑顔で見守っていた。


「フフ……若いというのは羨ましいものだな……」

次回更新は来週月曜日を予定しています。

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