190話:和菓子祭り ★(改稿)
申し訳ありません。
今回の話に矛盾点が発覚したので、少し改稿しました。
そういやオリバはドラ焼き経験者でしたね。
「いやはや……ソーマ様が只者ではないことは重々に承知しているつもりではありましたが、まさか本当に神が遣わされた異世界の御方でしたとは……。このオリバ・ソルナーク、驚嘆の至りでございます」
「うむ、ここまでくれば一蓮托生じゃ。じゃがソルナークよ、くれぐれもこのこと、むやみやたらに他言するでないぞ?」
「ははっ! 我が神、商聖神ギャンドラーに誓ってこの秘密、墓まで持ってゆく所存でございます!」
「すまぬなソルナークよ。ワシがうぬの前で不用意なことを言ってしもうたばかりに気苦労をかける!」
ツララが引き起こしたキス事件のほとぼりも冷め、オレはオリバ氏、ライラ、ツララの四人とで会談をしている。
ツララがオリバ氏のいたことを忘れてオレの素性を結構話しちゃったものだから、この際全部話してスッキリさせようとなった次第だ。
オレ自信もオリバ氏は信用するに足る人物と認識しているから大丈夫だろう。
「しかし……となると、やはり今までのソーマ様の知識はその異世界からのものということで?」
「まあそうなるね。今までオリバさんから買いつけた穀物に関しても、実はまだまだ色んな料理が作れたりする。この辺りは料理神様の加護の力による知識もあるんだけど」
「なんと! では小豆も善哉や先日いただいたドラ焼きだけではないと?」
「うん。回転焼きという別の甘味も作ったし、重曹を使えば、また別の菓子も作れる」
「なんじゃと! わらわはその回転焼きというのは知らぬぞ!」
「おお! 新しい甘味とな! それは事実であるか⁈」
オレの返答にライラとツララが凄い食いつきだ。
そんな時にリコナとサーシャが部屋に入ってきた。
「失礼いたします。新しい紅茶を御用意しました」
「おお! おぬしらは回転焼きとかいう甘味は食べたのかのう?」
「回転焼き……ですか? 私は皆と分け合って少量でしたが、いただきましたよ♪」
「回転焼き……あれは本当に至福の味でした……」
ライラの質問にサーシャは笑顔で。
そしてリコナは恍惚とした表情でそう答える。
そんなリコナの表情と返答に対してライラとツララの喉がゴクリと音を立てるやいなや、少し恨めしそうな目でオレに視線を送る。
ああ、わかったよ! 作るよ! 作りますよ! 作りゃいいんだろ! この残念腹ペコ王女どもめ!
オレはみんなを引き連れて厨房へと移った。
また餡子を作ると聞いて、その味を知るメイドの面々も集まってきた。
本当に女子は甘いものが好きだね……。
「小豆は煮込んで柔らかくし、そこに砂糖を加えることで善哉という甘味になる。それはツララも御存知の通りだけど、小豆菓子の神髄は餡子にこそある」
「「餡子?」」
オレは餡子未体験のライラとツララ二人にそう説明しながら、小豆を大鍋で茹でる。
茹で上がった小豆をザルにあけて煮汁を取り除く。
そこに砂糖を加えてヘラで軽く混ぜ合わせればつぶあんの完成だ。
「おお! これはなんと優しい味じゃ!」
「うむ! 然程善哉と変わらぬ製法であるのに、こちらは腹に溜まる重量感があるのう! 実にワシ好みの食感であるぞ!」
「でも今は出来上がったばかりの温かい状態だから、小豆本来の味より砂糖の甘みの方が目立っている。粗熱が取れて少し冷めた状態の方が、より小豆の味が際立つと思うよ」
「ふむ……熱によって味の二面性があるということであるな?」
「わらわはもう、この状態で十分美味しいと感じるのじゃがのう」
まぁライラよ、そう言いなさんなって♪
それに餡子はそれ一種類だけじゃないってのよ。
「このつぶあんは餡子の基本だ。だけど実はもう一種類の餡子が存在する」
オレはそう言いながら、別に茹でた小豆を細かめの網で漉し、そこに砂糖を加えたこしあんを差し出す。
「これは……小豆の皮を取り除いた餡子であるな?」
「御明察。さっきのつぶあんに比べて舌触りがいい餡子だ」
差し出したこしあんをツララが口に含むと、瞬時に驚きの表情へと変わった。
「おお! さっきのつぶあんと違って、こちらはなんと肌理の細かい舌触りであるか⁈ 斯様な食感は初めてであるぞ!」
「ふむ……確かに滑らかな舌触りであるのう。じゃがわらわはつぶあんの方が好みじゃ♪」
「ハハハ、まぁその辺りは個人の好みで分かれるところだろうね。好きな方を選べばいいさ。美味しい物に上下なんてありゃしないんだからさ♪」
その後、そのこしあんからお汁粉の作り方や、もち米を米粉にしてから作る白玉団子などの製法を披露。
それぞれの組み合わせで串団子なども作ってやった。
他にも以前作った回転焼きのつぶあん版とこしあん版。
先日入手した重曹と小麦粉を使った生地を焼き、それに餡子を挟んだドラ焼き。
この二つはメイドたちにも御馴染みだ。
もち米と普通の米をブレンドし、それを焚き上げて団子状にした状態につぶあんで包んだおはぎ等々、現在手持ちの材料で作れる小豆を使った和菓子の製法を出来る限り教えてやった。
新しい甘味に恵まれたツララをはじめ、みんなにも大変好評だったが、オレは少しだけ寂しい気持ちだった。
オレが一番大好きな和菓子、みたらし団子を作れなかったからだ。
あれの材料には絶対醤油が必要不可欠だからなぁ~。
ああ……早くセイル森国に行って醤油を手に入れたい……。
オレはそんなことを思いながら、和菓子に囲まれて幸せな表情になっているみんなを見渡した。
ちなみにオレの秘密を知ることとなったオリバ氏だが、後日にアルグランス王家御用達の御用商人に任命。
メーキス商伯管下の特権商人へと昇格したらしい。
それから更に数日後に、ソルムとアニル宛てにオリバ氏から贈り物が届けられた。
そしてその贈り物に添えられた手紙を読んだ二人は優しく微笑んでいた。
「アハハ、あの人らしいね♪」
「うん、そうだね♪ また今度お礼言っておこうね」
内容が気になったオレは二人に手紙の内容を聞いてみたが、それを知ってオレも優しい笑顔になれた。
「え? なになに? オリバさん何て言ってるの?」
「私も気になります」
「私にも教えて欲しいですわ」
他のメイドたちも気になったようで、二人の周りに集まりだす。
「旦那様を紹介してくれてありがとう……だってさ♪」




