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神愛転生  作者: クレーン
第四章
192/210

186話:約束 ★

途中から三人称視点に変わります

「旦那様、全員揃いました」


 エキルスの報告に対して頷くオレ。

 今オレの目の前には、オレとの結婚を求める女性たちがいる。


 ライラとシルフィー、そしてアルテアのアルグランス関係者。

ソルムやエキルスをはじめとする屋敷のメイド衆一三人の計一六名だ。


 緊急御前会議を終えたあと、オレはその全員を屋敷の応接室に集めて、今後のことについて話をしておこうと思った次第だ。




「みんな、まずはその……オレなんかを慕ってくれてありがとう。そのことだけについては本当に嬉しいと思ってる」


 オレは少し曇らせた表情でそう挨拶するが、それに対して目の前のみんなは優しい笑顔で頷いてくれる。

 しかしその笑顔の根底には、しっかりとした真剣な眼差しがある。

 だからオレも嘘偽りなく、ちゃんと今の心境を言葉にしてみんなに伝えないといけない……。


「でも、これだけは覚えておいてもらいたい。オレは今はみんなと結婚をする気もないし、家庭を持つつもりもない。さっきの御前会議でも言ったと思うけど、理由についても言いたくない。今オレからみんなに言えるのはこれだけだ。その……本当にゴメン……。みんなは真剣なのに、こんな曖昧な考えしか伝えれなくて、本当に申し訳なく思ってる」


 オレはそう言ってから深く頭を下げた。

 あんな返事をしておいて、我ながら逃げ出したくなるほど情けない言葉だ……。

 こういうのを「穴があったら入りたい」って気持ちなのかな?

 しばらく重苦しく感じる静寂な空気が流れたが、それを打ち消したのはライラだった。


「ソーマ殿や、そなたに一つだけ確認をしておきたい。「今は」ということは、今後その考えを改めてくれる可能性があると、わらわたちはそう見て良いのかの?」


 それは核心を突く言葉だった。


「ああ……それについては、オレ自身もいずれ改めたいとは思っている……。厳密に言えば、アリオス爺に諭されて改めてみようかなって気持ちになったのが正直なところだ。だから現時点では、まだ結婚なんてする気持ちにすらなれていない」


 そんなオレの言葉を聞くと、みんなの表情は陰るどころか、今まで以上に明るいものとなった。


「うむ! その言葉だけで今は十分じゃ。ソーマ殿と添い遂げる可能性が皆無のような返事であったら、また色々と策を講じるところであったが、少しでも可能性があるのであれば、わらわたちも今は文句は言わんのじゃ。どうかその気持ちが悪い方向へ向かうことだけは無いようにしてたもれ。皆の衆もそれで文句は無かろうな?」


 ライラの問いかけに、女子衆全員が笑顔で頷いた。


「では皆さん、ソーマ殿が私たちやこのフォーランドのことをもっと好きになってもらえるよう、私たち自身も更なる磨きをかけながら、今後もソーマ殿と変わらぬ接し方をしていくという話でよろしいですね?」

「私たちメイド衆は全員、それに異論はございません」

「私も御主人様に振り向いてもらえるよう頑張ります!」

「私もそれで異論はないよ~♪ にははは♪ これはこれで面白くなりそうじゃないか♪」


 シルフィーの言葉に、エキルスたちメイド衆にソルム、アルテアの全員が同意する。


「えっと……これはどういうこと?」

「さっき言ったとおりじゃ。わらわたちはソーマ殿に対して無理強いするような求婚はせぬ。幸いなことに時間はたっぷりとあるでな。今まで通りソーマ殿と接してゆき、その中からソーマ殿がわらわたちのことをもっと好いてもらえるよう、こちら側も努力をすると言っておるのじゃ」

「姫様の仰られたとおりです。いくら私たちが旦那様をお慕い申し上げているとはいえ、それに見合わぬ女であれば立つ瀬がございません。ならば無理に状況を変えず、今まで通りに苦楽を共にしながら私たちは旦那様のことを知り、旦那様は私たちのことを知っていただければと考えております」

「その中から私たちのことを好きになっていただければ、その時は御主人様の方からお話を賜りたく思います。勿論その話が早くいただけるよう、私たちもより一層己自身を磨き努力しますので、今後も変わらぬ御寵愛をいただければ幸いです」

「とまぁ、そんな感じの話さね。どうだいソーマ? あんたの望む、お互いに気遣いし合わない、今まで通りの付き合いの中から、少し時間をかけて私たちと相互理解を深めていくって流れで?」


 アルテアの締めの言葉を聞いたオレは涙が流れそうになった。

 オレはてっきりみんなから積極的なアピールを受け続けることになると思っていたが、みんなはこんな偏屈なオレのことを第一に考え、オレの負担にならないように考えてくれていた。

 押し付けるわけではない。

 かといって無理に求めるわけでもない。

 男女以前の、人と人とが普通に触れ合って接してゆく。

 そんな当たり前の「付き合い」をこれからもしてくれるというのだ。

 それは今のオレにとって最上の提案といえるだろう。


 こんなオレのためにここまで考えてくれていたんだ。

 オレもそんな彼女たちに、はっきりとした言葉で伝えないといけない。


「ありがとう。みんなの心遣いに心から感謝したい。今は答えが出ないし、もしかしたら一生出ないかもしれない。それでもそんなオレと今後も向き合ってくれるというなら、もうオレからキミたちを拒むようなことはしない。仮に答えが出せた時は必ずお嫁さんとして迎え入れる約束をする。だけどもし、待ってくれているあいだにオレという男に失望を感じたら、そのときは遠慮なく見限ってくれてかまわない。それでいいかな?」


 オレの言葉に全員が力強く頷いた。


「なはははは! ソーマ殿こそアルグランスの女子を甘く見るでないぞ! 少なくともわらわはソーマ殿を必ず振り向かせてやるゆえ、覚悟しておくのじゃ!」

「姫様、及ばずながら私も張りきらせていただきます」

「にはははは♪ シルフィリア殿もやる気満々だねぇ~♪ こりゃホントに退屈しなさそうだわ♪」

「わ、私だって負けません! 御主人様の第一夫人の座は人生を賭けるには申し分ない目標です!」

「なに言ってるのソルム? こればかりは私も譲る気はないわよ? みんなもそれくらいの意気込みで挑みなさい! アルグランスの淑女魂を今こそ示すときよ!」

「「「「「「「「「「「ハイ! お姉様!!」」」」」」」」」」」




 とまぁそんな感じで、結論としては、みんなとは「結婚を前提とした普段通りのお付き合い」をすることで話はまとまった。

 オレの気が変わるのが先か? それとも彼女たちの心が離れるのが先か?

 どちらに向かうのかは今は誰にも解らないけど、それも含めて今まで通りの異世界生活をオレは続けていこうと思う。


 「好きに生きる」それが神様たちから許された、オレ自身の生き方なのだから……。


 オレはそんなことを思いながら、張りきる女子衆の姿を優しく見つめていた。




===========================================


 一方そのころ、アルグランスの王都エトロスタンの東側から延びる草原街道にて、王都へ向けて四頭引きの大きな馬車を進める一団があった。


 御者を務めるのは、武者のような東洋風の甲冑を身に纏った、虎耳の獣人族の男性。

 そしてその馬車を護衛するかのように随伴する大型の馬に跨るのは、これまた大きな巨体を誇る二本角のオーガの男性であった。

 このオーガもまた、獣人と同じような甲冑を身に纏っている。

 背中に備えるは巨大な太刀だ。


「どうやらあそこが王都みたいでござるな」


 御者の獣人がそう確認すると、オーガは馬を馬車の横側につけながら、馬車の中にいる人物に報告をする。


「姫、アルグランスの王都が見えてまいりました。そろそろ御支度の――」

「着いたか!!」


 オーガの男性が報告を言いきる前に馬車の屋根扉が開いたと思えば、そこから一人の女性が勢いよく顔を出した。

 だがその光景は異様とも言える光景であった。


 人族や獣人族の女性であれば、顔を出すのが精いっぱい高さの屋根なのだが、その女性は胸の辺りまで屋根から突き抜けているからだ。

 そのことからも、この女性が相当な巨体であることが伺える。


 女性は短い髪を風に揺らしながら、希望に満ちた目で近づいてくる王都を見つめる。

 その身の丈は二メートルを超え、逞しく鍛えられた肉体を持つ。

 そして報告した男性と同じく、頭から二本の角が生えていることからも、その女性もまたオーガであることがわかる。


 オーガの女性はその巨体に似合わない、愛くるしい笑顔で高らかに叫んだ。


「待っておれ! 今こそワシがゆくぞ!! 伝説の甘味人よ!!」

次回更新は来週月曜日を予定しています。


今回のキャラ紹介はソーマ邸のメイド「サーシャ・アドバン(16歳)」です

アルグランスでは数少ない人族の貴族、アドバン男爵家の長女。


母親譲りの綺麗な金の瞳と髪を持つが、フォーランドにおいて金は安価なモノであることから「安い女」として見られる風潮にコンプレックスを感じていた。

しかしソーマとの出会いで、その気持ちに晴れ間が見え始めている。


メイドとしては見習いを脱したばかりで未熟感は否めないが、紅茶の淹れ方に関しては特筆すべき才能を持っており、そこは高く評価されている。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

ソーマ邸のメイド衆揃い踏み


左から

サーシャ・アーシャム・メキナ・ルト・テトラ・エキルス

ソーマ・ソルム

リコナ・ゼスト・アニル・ポロン・ファム・レットラー

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