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神愛転生  作者: クレーン
第四章
181/210

175話:豊穣の教会 ★

「旦那様、ここが豊穣の教会です」

「神殿じゃなくて……教会なのか?」


 さっきまでソルムと二人で城下町の繁華街で遊んでいたわけだが、そこに出ていた出店の肉串を見たソルムが、この近くに彼女が世話になった教会があるので、そこにこれを差し入れに持っていきたいと言いだした。

 なのでその提案を呑み、今こうしてその教会の前にいるわけなのだが……。


「今まで行った神殿とかに比べたら……その……なんだ? 随分とくたびれているな……」


 うん……言っちゃ悪いけど、かなり寂れている感じだ。

 建物自体もかなり老朽化が進んでおり、建築神様の加護の力で見積もってみたが、築三〇〇年を超える石、木、煉瓦を複合した建築物のようだ。

 何度か補修もされているようだが、正直かなり限界にきている。

 今まで訪れた神殿はどれも大きくて立派な内容だったけど、なんでこんなに差があるんだ? と思っていたら、ソルムがあっさりとその答えを口にした。


「王都付近では神リネールの信仰は少ないですから……」


 やっぱり信者の数の問題か……。

 ここアルグランスの王都エトロスタンでは、レットラーのような魔族が多く信仰する魔神ミクサリオ以外の、一二柱の偶像神を祀る神殿や教会が存在する。

 だがその中で「神殿」として経営されているのは水や知の神殿を含む七つだけで、残りの四つは「教会」という、神殿に比べてグレードが落ちる施設となる。

 リネールを祀る豊穣の教会もその中の一つだ。


 ちなみに残りの一つだが、冒険神アドバを祀る施設には神殿や教会といった施設は存在せず、冒険者ギルドが管理する施設内に神像を設置し、信仰施設も複合して運営されているそうだ。

 しかも大半の冒険者はアドバを信仰するうえ、冒険者という人々自体がかなりの数になるので、当然その施設もかなり大型で立派な内容なのだそうだ。


 で、問題の豊穣の教会なんだが、リネールを祀るのは基本的に農業を生業にする人々が大半らしく、神殿が存在するのは農業の盛んな地域に限定され、この王都のような農地の少ない開けた土地などでは、当然のごとくその信者も少なくなるのだ。

 ドワーフ族って肉と酒が主食で、あんまり野菜とかを食べない感じがするしなぁ……。

 まぁ、そんなドワーフ族の巣窟でもあるアルグランスの王都では、この農家主体の教会を維持するのも、なかなか難しい話でもあるのか……。


 ちなみにこの王都で一番信者が多いのは、やはりアルグランスの主神として崇められている戦神スクレーダで、その施設も神殿の規模を超える大神殿となっている。

 次いでは意外にも海神ウォルナードだ。

 何故か? この王都が海に面しており、漁師などといった海に携わる職業の人々が多いからだ。納得。


「でもソルムは農家でもないのに、なんでリネールを信仰しているんだ?」

「それは私が――」

「あっ! ソルム姉ちゃんだ!」

「本当だ! ソルムお姉ちゃ~ん♪」


 ソルムがオレの質問に答えようとすると、子供の大きな声でそれを遮られてしまった。

 なんだなんだ?

 教会の横にある施設の中から出てきた子供たちのようだが?

 神眼で年齢を確認すると、五歳から一二歳までの男女合わせて八人の子供たちがソルムの姿を見るなり一斉に駆け寄ってきた。

 ソルムのことをお姉ちゃんとか言ってる感じからすると、どうやら顔見知りのようだな。

 ソルムが一番小さな女の子を抱き上げて笑顔で笑っている。


「みんなただいま~♪ 元気にしていた?」

「うん! みんな元気だよ!」

「わたしもげんき~♪」

「シスターの言うことはちゃんと聞いてる?」

「うん! 今日もお掃除、ちゃんと手伝ったよ!」

「ボクもボクも!」

「よしよし♪ そんなえらいみんなにはお姉ちゃんが御褒美を上げちゃおう♪ ハイ、みんなで仲良く食べるのよ」

「うわ! 肉串だ! ありがとうソルム姉ちゃん!」

「美味しそう~♪」


 と、ソルムが肉串の入った包みを子供たちに手渡しながらワイワイとそんな話をしていると、子供たちがいた施設の中から、山吹色を基調とした古びた修道服を身に纏う、背の低い老婆が出てきた。

 どうやら高齢のドワーフ族のようだ。

 そして彼女がソルムの顔を見るなりに驚きの声を上げる。


「まあ! ソルムじゃないの⁈」

「ただいま、シスター・メリュウ♪」

「お前、こんな時間にどうしたんだい? それにその服装……まさか城のメイドをクビになったんじゃ……」

「違いますよ! ……あ、いや……お暇を貰っちゃったのは間違いないか……あれ? こういうときはどう言えばいいんだろう?」

「お暇を貰った⁈ どういうことなんだい?」


 本来なら今も王城でメイドとして働いているはずのソルムが、王家付きメイド隊の制服と違う服を着て、しかも休日でもない日のこんな時間でこんな場所をブラついていたら、そりゃソルムをよく知る人だったら驚くわな……。


「とにかく! ちゃんとお仕事はしていますよ!」

「本当かい? まさか冒険者なんかにはなっていないだろうね?」

「なってません! 今も旦那様のメイドとして働いています!」

「ならいいんだけど……旦那様? ……ところでそちらの方は?」


 シスター・メリュウがソルムの後ろに控えるオレに気付くと、子供たちも一斉に視線をオレに向ける。


「知らない人だ……」

「男の人だ……」

「ソルムおねえちゃんのカレシ?」

「ちちち違います! なに言ってるの! もう!」


 幼女の無邪気な一言に動揺し、慌てふためきながら全力で否定するソルムが実に可愛らしい。

 でもまぁ、そういう風に否定してくれると、オレとしては安心できる。

 これはソルム自身がオレに対して、あくまで主従の距離感を常に意識してくれている証拠だ。

 だからこそ、寝食を共にした生活をしていて多少スキンシップの度が過ぎることはあっても、その一線を超えることはないのだ。

 オレ自身、この異世界でも身を固めるつもりはないので、ソルムもどうかそのままのスタンスでいてくれ……。


 なんてことを思いながら、オレに注目するシスターたちに軽く会釈をし、ソルムが落ち着いた頃合いを見計らって自己紹介をした。

今後の更新ですが、月曜日と木曜日を基本更新日として週一、二回の更新をしていきたいと思います。

ペースが良ければ月木の週二回。悪くても月の週一回更新は心掛けたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。

多分これが自分の生活ペースに合った最良の更新ペースだと思う……。


ということで、今回のキャラ紹介はソーマ邸の犬耳獣人メイド「ポロン」です。


ソーマ邸の獣人メイドの中では最年少の17歳。

この若さで一般メイドとなった実力を有しているが、その中には多方面に長けた「要領の良さ」が起因している。

よってサボりの要領も心得ており、仲の良いメキナとつるんで仕事をサボることもしばしば……。

とはいえ基本的には明るい性格で「やる時はやる!」「サボれる時はサボる!」そんな娘です。

ソーマ邸メイドの良きムードメーカー。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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