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神愛転生  作者: クレーン
第二章
18/210

017話:嵐の前のレポート

今回から数字の表記を命数法から位取りでやってみようと思います。

AR表示の数字はいつも通りの算用数字でいきます。

『朝だわさ~ 起きるだわさよ~ 起きないと首狩るだわさよ~』


 オレはアラームのボイス音でハッと目を覚ます。

 う~ん、やっぱり死神様のボイス音は心臓に悪い。

 アラーム音にいろんなSEや音楽、そして加護をいただけた神様たちのボイス音声まであるとは思わなかったよ。

 ちょっと遊び過ぎじゃないですか? この機能。

 ここ数日はランダム選択にしていたけど、明日はもう少し優しい恋愛神様や酒神様のボイス音が鳴ることを祈ろう。


 今は朝の七時。

 オレは家から出て軽く背伸びをし、両頬をパンパンと叩いて気合を入れる。


「それじゃあ今日も一日頑張りますか!」


 準備体操を終えて、日課となる朝の島一周約九〇キロランニングの開始だ。

 九〇キロのランニングと言っても、時速一〇〇キロで走るから一時間くらいで終わるけどね。




 オレがこのフォーランドに転生してからひと月ほどの月日が流れた。

 現在の日にちは雨の月の九日。

 雨の月とか言いながらも、今月に入ってから一度も雨は降っていない。

 先月最後の日に丸一日中、シトシトと雨が降ったくらいだ。


 で、今のオレはというと、相も変わらずゴラス島で無人島生活をエンジョイしている。

 うん、エンジョイという言葉が今の状況を表現するにはぴったりかもしれない。


 このひと月ほどの間に何をしていたかというと、まずこの島全体の調査から。

 そりゃもう色々と調べましたよ。

 生息してる動物から植物。地形や地質なんかも。

 で、その都度狩りをしたり採取したりで、今の無限収納内はいろんな食材や素材でいっぱいだ。


 次に家造り。

 建築神様の加護の力をフル活用して、高床式ログハウスを建築した。

 最初はウォールやコンクリートの魔法を使って簡単な箱家……いわゆる「豆腐ハウス」を造ったが、あまりにも殺風景過ぎて三日で取り壊した。

 その後、アロン道を整理するついでに周りの木をかなり切り倒し、それを使ってちゃんとした家を建築したのだ。

 広さにして三DLKくらいの広さで台所や風呂、トイレも完備!

 貯水タンクを作って台所の水道は勿論、トイレも水洗式にした。

 二の山付近に鉱脈を発見して鉄が採取できたので、錬金術をフル活用して鉄パイプなどを自作した成果だ。

 物質をイメージした形に変形させる錬金術「ディフォメーション(変形)」が大活躍でした。

 窓ガラスに使ってるガラスも、錬金術で海岸の砂からガラスのみを抽出して変形させた代物だ。

 

 そして離れに一〇畳程度の広さの建物を造り、その中に鍛冶の炉と焼き窯を制作して趣味部屋を造った。

 これは、聖矢が狩りには使えないと判断したので鏃を自作したかったのと、一度焼き物に挑戦したかったからだ。

 鍛冶に関しては鍛冶神様の加護と、鍛冶神様の贈り物である「聖鎚アラヤシキ」のおかげで簡単に鏃を作ることができた。

 錬金術のディフォメーションで鉄を変形させれば簡単かとも思うだろうが、鍛冶で作った方が明らかに強度に差が出るのだ。

 そしてなによりカッコイイし愛着も湧く。


 焼き物だが、これに関しては加護も知識もないので失敗の連続。

 焼き物に適した粘土を地図検索して結構な量を確保したんだけど、今だにまともな皿も作れていない。

 こういう時、ネット神様の力が使えたら!

 とはいえ、今はお金がないので諦めるしかない。

 まぁ時間はたっぷりあるので、研鑚を重ねて努力してみよう。


 アロン道は最初の頃は切り株だらけの少し拓けた道程度だったけど、五日かけて切り株を全部引っこ抜いて整地し、道全体をコンクリートの魔法で固めて実に文明感のある道となった。

 焼き物が上手くできるようになったらレンガを作ってレンガ道にしてみようと目論んでいる。


 狩りに関しては最初のガンガルド以降いろいろと狩った。

 牛そっくりな「ホルスタン」。

 大きなものになると全長三メートルもある狼「バイキングウルフ」。

 鹿みたいな体に一本角の生えた「ランサーディアー」。

 固い外皮を持つ大蜥蜴「アーマーリザード」などなど。

 まぁ、全部エクスカリバーの錆となって今は食材タグに収納されてるけどね。

 ちなみにガンガルドも、あのあと二頭狩った。

 だってあいつら、オレを見るなり見境なく襲ってくるんだもん。

 この島では残り五頭となったが、向こうから仕掛けてこない限りは放置しておこうと思う。

 

 でも島に生息してるガンガルドは全部オスと判明したので、襲ってきたら容赦なく狩る。

 この島では絶滅危惧種となってるが、別の大陸では数多く生息してるらしいし、それ以前にオスだけではどのみち絶滅しか道はないから別にいいでしょ。

 今、この島の食物連鎖の頂点はキミ達ではないのだよ。


 植物に関してはリンゴに似た「アポル」やオレンジに似た「ラオン」などの果物の他に、ジャガイモ「カルフェル」、ニンジン「カトロ」、キャベツ「ケヨリナ」、ダイコン「デツラ」、タマネギ「オニール」、トマト「トマト」などの野菜類も見つかった。

 なぜかトマトだけトマトまんまなのが謎である。


 


 ちなみに農耕神様の加護の知識と、贈り物である「聖鍬ホウジョウ」の力を使って、家の裏にカルフェル畑も作ってみた。

 ホウジョウは植えたい作物をイメージしながら土を耕すと、それに最も適した土質に変えて、およそ半分の日数で作物を育てる優れものだ。

 カルフェルは本来なら植えて一五日ほどで芽が出て、五〇日ほどで収穫できる野菜なのだが、ホウジョウで耕した土に植えたカルフェルは半分の七日ほどで芽が出てきた。

 今植えてるカルフェルの収穫予定日は一五日後なので、収穫が今から楽しみだ。


 調味料は塩と胡椒(コパルの実)以外では唐辛子「カイエン」、ウコン「タメリク」などなど。

 そして昨日ついにコリアンダー「パチク」を発見した!

 これでカレーを作ることができるので、今日の料理も楽しいぞ!


 最後に衣類などの裁縫作業。

 裁縫神様の贈り物は「聖針クォーツ」「聖鋏キャンサー」そして大量の布や糸、綿や羽毛その他諸々の裁縫素材一式箱だった。

 それらと加護の力を使って衣服や布団、カーテンやテーブルクロス、そして靴も作れた。

 靴底になるゴムは見当たらなかったが、ガンガルドの皮が代用できたので、それらを使ってランニングシューズっぽい靴が完成。




 とまぁそんな感じで、このひと月ほどは調査や建築、狩り、採取、栽培、物づくりに勤しんでました。


 で、今はこうしてスポーツジャージ姿で時速一〇〇キロ大爆走しながら海岸線のランニングをしているわけなんだが、これは武神様の言葉を一応の形として自主的にやってることだ。

 折角素晴らしい体と数々の加護をいただけたのだ。

 日々鍛えて前世のような体にならないようにしないとね。


 しかしこの体にも随分と慣れてきた感じがする。

 転生直後は全力で走っても八〇キロほどだったのに、今はこうして一〇〇キロ近い速度で走れている。

 AR表示に自分の速度を意識したらスピードメーターが出た時は笑ったけどね。


 でもこれは多分鍛えてるからの変化じゃない。

 この体と精神が徐々にフィットしてきてるのだと感じる。


 とかなんとか過去を振り返ってたら、島一周のランニングも終了してアロン道前の海岸に到着した。

 海岸沿いには飲める水や草食動物の餌となる草も生えてないせいか、海岸沿いで動物と遭遇したことは一度もない。

 せいぜい空を飛ぶ鳥類を見かけるくらいだ。


 海の方に視線を向けるが、相変わらず水平線しか見えない。

 イカダか舟を作って島からの脱出も考えてみたが、今の生活に不自由は感じないし、なにより島の周囲しか地図が確認できない今の状況で島を出るのはリスクが高すぎる。

 無限収納や魔法を駆使すれば海上で餓死なんてことはないだろうが、それを差し引いても、当てもなく島から出るメリットが現時点では感じないから、現状このままでいいだろうと判断した。


 で、今見てる遠い海上の空に目を向けると、黒い大きな雲が見えた。

 どうやら大きな雨雲みたいな感じがする。

 風向きからすると、もしかしたら今夜辺りに雨になるかもしれないから、今日は色々と早めに切り上げて夕方前には家に籠ることにしよう。

 好きな人はそんなにいないだろうが、オレは人一倍雨に濡れるのが嫌いなタイプなんだ。


 急いで家に戻り、午前中は趣味の焼き物作り。

 今回も見事に失敗だった。ぐぬぬ……。

 午後からホルスタンを一頭狩り、捌き終わったところで雨が降り出したので、家に籠ってホルスタンの肉を使ったカレーを作った。

 久しぶりのカレーの味に満足しつつも少し寂しさが残る。

 このゴラス島……米や麦みたいな穀物だけがないんだよなぁ……。

 スープカレーじゃなくてカレーライスが食べとう御座います……。


 そして陽も沈みだす一八時頃に大雨……いや、異世界にきて初めて体験する嵐になった。

次回、やっとヒロイン登場?

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