011話:やってきましたフォーランド
第二章スタートです。
あと、今回から主人公の一人称が「俺」から「オレ」に変わります。
ここはどこだ?
オレは周りを確認しようと目を開いたが、あまりの眩しさにまた目を閉じた。
日差しが強い……。
とりあえず体の確認だけでもしとこう。
手足は……動くみたいだな。
耳を澄ますと右側からは波の音。
左側からは木の葉の騒めく音が聞こえる。
右手を地面に這わすと砂の感触がある。
どうやら海辺の砂浜にいるようだ。
となると、左側は森かな?
オレは上半身を起こすと、空いてる左手で目元に影を落とし、ゆっくりと光に慣らすように目を開く。
徐々に日差しに目を慣らし、周りの景色を確認してゆく。
大方の予想通り、やはりここは海辺の砂浜だったようだ。
「――ここが……フォーランドか?」
オレはそう呟く。
アレ? オレってこんな声だったけっか?
そんな事を思いながら自分の両手を見る。
細い指だ……。
だんだんと思考がおぼろげに……いや、鮮明に蘇ってくる。
そうだ! オレは地球で死んで、そのあと神様たちの手によって肉体を改造されて多くの加護をもらって転生したんだ!
「AR全表示!」
オレがそう意識して叫ぶと、視界にRPGのようなメニューやマップなどが表示される。
「やっぱり……夢じゃなかったんだ……」
オレは自分自身の声を聞き……そして立ち上がって体を大きく大の字に開いて空に向かって叫んだ。
「オレは! 異世界に来たんだ~~~~~!!」
オレは両手を強く握りしめて全身を震わせる。
うひょ~~!! キタキタ来ましたよ異世界!!
しかも異世界転生にお約束の強烈チート能力を携えて!
うわー! どうしよう⁈ どうしよう⁈
何する⁈ 何からする⁈
ヤバイ! 心からのワクワクが止まりませんよ!!
……うん! とりあえず少し落ち着こう!
オレはそう自分に言い聞かせてその場に座りこみ、まずは海を眺めた。
目の前に広がる水平線……。
そういや、こういう海を見るのって久しぶりだな。
静かな波の音が、逸る心を徐々に落ち着かせてくれる……。
それから三十分ほど海を眺めて、かなり気分が落ち着いた。
時間は明確に解る。
AR表示で一番右上に表示されてるからね。
でも場所が変わるとどうなるんだろう?
時差の調整とか自動でしてくれるのかな?
それ以前に、この異世界で週の概念はあるのだろうか?
とりあえず年と月と日付の表示はされてるからあるみたいだ。
ちなみに今はアルラス歴一五八五年、地竜の月の五日、十時三十分を経過したところだ。
一日二十四時間なのかどうか?
一月が何日あるのか?
その辺りは時刻表示を注意しながら追々解明していこう。
次は地図の確認をしておこう。
地図は視界の右下に簡易表示されている。
拡大や縮小は意識するとその通りに。
更に意識を向けると視界中央に大きく表示される仕組みだ。
しかも見下ろしの2Dからシームレスに3D表示へと切り替えも可能!
だけど今は自分を中心に半径一キロメートルの範囲しか表示されておらず、それ以外は真っ黒だ。
これは恐らく、オレが移動する事で徐々に表示範囲が広がる仕組みなんだろう。
流石にその辺りは甘くなく、全地図表示とはいかないようだ。
しかし地図には一つ面白い機能がある。
地図に「検索」と意識すると入力欄が現れ、例えば「生き物」と意識したら表示されてる地図上に生き物の位置が表示されたのだ。
いわゆる地図検索というやつだ。
これはかなり使える機能で使用頻度も高くなるだろう。
初めて検索した「生き物」では検索対象の位置を示すピンの数があまりにも膨大になり過ぎたので、途中で中断した。
「生き物」だから小動物はおろか、小さな虫まで検索しちゃったのだろう。
流石に微生物までは検索しない……よね?
とりあえずこの機能も後ほどじっくりと検証しよう。
ちなみに「人間」「亜人」などの種族でも検索してみたけど、特に反応はなかった。
この辺りには人がいなさそうだね。
さて、次はAR表示の左上にあるメニュー覧を見よう。
メニューは上から順に「ステータス」「無限収納」「装備」「スキル」「魔法・錬金術」「システム」の六つが表示されている。
まずはステータスのチェックだ。
うわ~、今のオレってどんな状態なんだろう?
期待半分、怖さ半分ってのが正直な今の心境。
すげードキドキする。
ということでステータスオープン!
====================
名前 :瀧蒼馬(――)
レベル:763(1)
種族 :地球の人間(人族)
年齢 :40歳没(15歳)
職業 :フリーター(――)
称号 :特異点(――)
ステータス
HP :20000(――)
MP :12000(――)
FP :10000(――)
スタミナ:15000(――)
能力値
体力 :10500(――)
筋力 :10000(――)
魔力 : 9800(――)
理力 : 9000(――)
精神力:15500(――)
知力 :12000(――)
敏捷力:12800(――)
酒運 : 70%(表示なし)
加護(公開覧表示なし)
「五大神の加護」
「武神の加護」「剣神の加護」
「弓神の加護」「槍神の加護」「盾神の加護」
「魔法神の加護」「錬金神の加護」
「書物神の加護」「インターネット神の加護」
「ビデオゲーム神の加護」
「機械神の加護」「鍛冶神の加護」「建築神の加護」
「料理神の加護」「裁縫神の加護」
「農耕神の加護」「酒神の加護」
祝福(公開覧表示なし)
「恋愛神の祝福」
※1( )内は公開覧。随時変更可能。
※2(表示なし)はブラインドステータス
====================
オレは砂浜に突っ伏した……。
ナニこのレベルと能力値⁈
これ、どう見ても数値高過ぎなんじゃないのか?
殆ど一万超えじゃないか⁈
いや、確かに肉体改造された時に人間離れした力は得ていたけど、まさかここまで高い数値とは思わなかった。
とはいえ、案外この世界にいるかも知れない「勇者」とか「英雄」とか言われる人たちとそれほど大差ないのかも知れないし、現時点で結論付けるのは早計だろう。
それより気になるのはカッコで表示されてる「公開覧」だな。
これは推測だが、多分この世界には個人のステータスを表示するステータスボード的な物や、ステータスを見抜くスキルなどがあって、そこに表示する項目なのかも知れない。
異世界転生モノにはよくある話だ。
とりあえずレベルは3くらいにして、ステータスは50、能力値は無難に全部20くらいにしておこう。
誰かのステータスを見れる機会があれば、それを参考に追々変更していけばいいや。
あと、このフォーランドでは錬金術に必要な「理力」を扱える者が結構少ないって話だったから、理力とそれに該当する「FP」は一応「表示なし」にしておこう。
無駄なトラブルは極力避けた方がいい。
ちなみに何故「FP」が錬金術絡みの数値なのか知る事ができたのかというと、FPに意識を向けたら小窓が出てきて
>「FORCE POINT」の略
>錬金術の使用に必要な数値
と説明してくれたからだ。
このAR表示、ホント便利過ぎる。
どうでもいい話だけど、何気にレベルがあと二つ多ければ、好きなゲームメーカーの語呂になっていたのが惜しいと思ったのは内緒だ。
さて……名前はどうすっかな?
流石にここは地球でもなければ日本でもないので「瀧蒼馬」そのままって訳にもいかないだろう?
苗字、ファンタジー的に言えば「家名」か?
しかしそういうのは大抵、貴族とかの特権階級の者しか付けていない可能性があるので、ここは無難に名前だけにしておこう。
ということで、名前は「ソーマ」とする。
この方が咄嗟の時でも間違いなく答えれるし丁度良い。
しかし………………。
この最後の「恋愛神の祝福」ってのが、どうにも気になって仕方がない……。
こういうのはきちんと理由を話してキッパリとお断りしたと思うんだけど、なんで俺にこんなことを?
まぁ、祝福ってのは加護と違って称号みたいなものなので、何かに作用することもないらしいから、これからの生活にも影響はないと思うんだけど……。
そういや時空神様がこのフォーランドにも偶像神たちがいるって話をしていたな。
接触する機会があれば、その時にでもこの件の相談をしてみよう。
何事も無い事を祈って一旦保留。
さて、次は「無限収納」の検証だ。
意識を向けると別枠が表示され、その中にずらりとアイコンが並んでいる。
どうやらRPGでいうところの「アイテム」と同じ感じだね。
で、表示されているアイコンは全部プレゼントボックスみたいな箱の絵になっている。
アイコン覧の上を見ると「武器」「防具」「道具」「薬」「食材」「素材」「その他」「ギフト」とタグ分けがされていた。
今表示されているプレゼントボックスは全部「ギフト」扱いということらしいな。
一つ目のアイコンに意識を向けると、
>五大神からの贈り物(異世界生活初心者便利パック)
>開封しますか?
>>はい
>>いいえ
と表示された。
「はい」を選んでボックスを開封っと……。
>「ポーション×20」を得た
>「ハイポーション×20」を得た
>「フルポーション×20」を得た
>「マジックポーション×20」を得た
>「ハイマジックポーション×20」を得た
>「フルマジックポーション×20」を得た
>「万能薬×20」を得た
>「スタミナ回復薬×20」を得た
>「エリクサー×10」を得た
>>以上を「薬」タグへ移動
>「干し肉×30食」を得た
>「白パン×30食」を得た
>>以上を「食材」タグへ移動
>「簡易テント」を得た
>「万能ロープ」を得た
>「多目的ナイフ」を得た
>「トイレットペーパー×∞」を得た
>>以上を「道具」タグへ移動
ヲイ……。
AR表示中央下に表示されているログ枠が凄い勢いで流れたが、なんかRPGで馴染みのある凄い回復アイテムがなかったか?
すぐに「薬」タグに移動して、その「ある物」を確認。
>エリクサー×10
>>HP・MP・FP・スタミナ・状態異常・部位欠損を完全回復
再び砂浜に突っ伏すオレ……。
おいおい五大神様~?
こんな最高峰の回復アイテムを十個とか大判振舞い過ぎやしませんかね?
今まで読んだ転生モノの内容から考察すると、こんなの明らかにトラブルの元にしかならないだろう?
というか、ハイポーションの時点で「部位欠損完全再生」とか説明出てるよ……。
とりあえずフォーランドの薬や回復魔法の類の事情が判明するまで、これは極力人前では使わないように心掛けよう。
あと、トイレットペーパーに関してはマジで感謝!
排泄も尊い行為です! 何気に超助かります!
これで人間の尊厳は守られた!
しかし………………。
そうなると残りのプレゼントボックスを開けるのが、凄く怖くなってくるなコレ……。
いやだな~ 怖いな~
オレは恐る恐る「剣神の贈り物」を選択し――
>「剣神からの贈り物」
>開封しますか?
>>はい
>>いいえ
――意を決して「はい」を選択する!
>「聖剣エクスカリバー」を得た
>「聖剣フルンティング」を得た
>「聖剣アロンダイト」を得た
>「聖剣レーヴァテイン」を得た
>「聖剣フラガラッハ」を得た
>>以上を「武器」タグへ移動
聖剣のバーゲンセールかよ!!
もうやだ、このギフト開封……。