表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神愛転生  作者: クレーン
第一章
11/210

幕間:世界神

私の名は世界神。

この天上界で五大神の一柱を担う神だ。


今日は千年に一度の祝福の日なのだが、まさかこの日に命を落とし、人間でありながら我らが住まう天上界にやってきた「特異点の男」が現れた。


異質な気配を察知した死神が、様子見も兼ねてその者を迎えに行ったが、その際におこなった彼の身体調査の結果や過去の記憶が私の中にも流れ込んでくる。


特異点となる男の名は瀧蒼馬。

我ら五大神が造り出した「地球」と呼ばれる世界で暮らしていた人間だ。


もっとも、現在の五大神の中で地球創造に関わったのは創生神だけで、あとは全員先代様方なのだが……。


しかしこの男、一言で言えば「歪んで」いる。


己の親に対して相当な嫌悪感を抱いており、自分自身も親になりたくないという考えから、異性との接触を極力避けた生き方をしてきた様子だ。


そんなことを考えていると、死神がその問題の彼を連れて私達の席まで戻ってきた。


とりあえず私は、彼に現在置かれている状況を説明した上で、別世界のフォーランドへ行くことを推奨した。


え? 本当にそれでいいのかい?


彼の思考が流れてくるが、どうやら本当に地球での生活には未練が無いらしい。

しかもその基準の大半は、彼の親に対する嫌悪感から起因している。

……本当に歪んでいる……。


しかし我々神の目から見ても、因果律の穴を抜けた特異点の存在は非常に貴重だ。

この男の存在を消すのは簡単なことだが、それ以上に特異点が及ぼす因果律の変革には実に興味がある。


結局、私の提案した話の流れで彼の肉体を造り替え、希望する上神たちの加護を数点与えてから、フォーランドに転移することとなった。


それまでの間に彼と接触して、一つ誤解していたことがある。

彼は確かに自分で思うように自己中心的で利己的な性格ではあるが、本質的なところでは非常に真面目だ。

それは彼の親の躾が良かった点に起因する。


だがそれと当時に、彼の親が放った何気ない言葉が、彼の繊細過ぎる感受性に長々とした悪影響を及ぼしたのだ。

やがてその悪影響は歪みとなって感情に表面化する……。


つくづく人間というのは、御し難い生き物だ。

だが、それゆえに愛おしくもある……。


しかしこの特異点となる男なんだが、さてどうしたものか?

外見は変わったし、上神の加護をいくつか得て、人間の範疇を超える存在にはなったが、根本的なところが変わっていないので、結局のところは以前の地球と同じような暮らしに落ち着いてしまうのではないだろうか?


そう考えると、偶像神だった頃の人間に近い感情が少し蘇ってくる。

――色々とちょっかいを出したくなってきた。

たまには「神々の悪戯」をしてもいいだろう?




結局のところ、恋愛神へ念話で指示を出し、彼女の加護ではなく祝福を与えてフォーランドに転生させてやった。


恋愛神の加護を得れば、好色な者なら嬉しかろうが、とりあえず彼には祝福に止めておいた。


加護に比べると、祝福は直接的には何の影響も無い。

だからこそ、彼に恋愛神の祝福を与える本当の意味は別にある。

それに彼が気付くかどうか?

しばらくの間、その新しい人生を覗かせてもらうよ……。


私の名は世界神。

かつてアルステアという、地球によく似た世界で偶像神として生まれ、「愛の神エルロス」と呼ばれ祀られていた神だ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ