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神愛転生  作者: クレーン
第三章
103/210

097話:突撃

 突撃の前に、まずソルムをキャストからガドラの背に乗せ換えた。

 キャストの得意分野は火魔法で攻撃に特化し、ガドラは土魔法で防御に特化した性能を持っている。

 なので、その特性を考えればガドラとソルムを同行させた方が今回は都合がいいのだ。


 次にオレは無限収納から聖盾セイクリッドを取り出すと、それに意識を向けて他人に貸与できるかを問う。


>貸与可能

>神々から賜れた聖武具と聖道具は他人へ貸与可能ですが、聖杯を除いては眷属以外ではまともな性能を発揮することはできません

>補足

>万が一のセキュリティーとして、収納を意識すれば如何なる距離が離れていても瞬時に収納可能です


 よし、じゃあコレをソルムに貸し与えても大丈夫だな。

 確認したのでセイクリッドをソルムに手渡す。


「旦那様? この立派な盾は一体……?」

「盾神様からもらった聖盾だ。ソルムはこの盾を使って防御に専念すること。ガドラと一緒だから大丈夫だろうけど、ソルム自身も油断しないようにね」

「えええええっ⁈ そんな大切な盾を私なんかが使っても宜しいので⁈」

「いや、むしろ使ってくれないと困る。ソルムの身に万が一のことでもあると、メイリンさんたちに顔向けできないし。ガドラも攻撃はそこそこに、ソルムの防衛を最優先で頼むぞ」

「御意に! ソルムお姉ちゃんには傷一つ付けさせません!」

「わ……わかりました! ガドラくんもどうかお願いね」


 今のメンバーの中で一番レベルの低いソルムが唯一の懸念材料であったが、一応の対策も済んだので大丈夫だろう。

 ちなみに気絶してる簀巻きペルマンは、キャストの背中に頭を後ろ向きにして括り付けた。

 こいつの場合は戦いに巻き込まれてどうなろうが知ったこっちゃない。

 死んだら死んだで、やりようはいくらでもあるしね。


「悪いなキャスト。女の子の背中にこんなヤツを乗せるのは抵抗あったんだけど、どうか頼むよ」

「いえ、問題ありません。ただ一つ、もし戦の最中に目を覚ましたら、再び眠らせても宜しいでしょうか?」

「ああ、問題ない。方法はキャストに任せるから好きにしろ」

「それを聞いて安心しました」


 よし、これで突撃する準備は全て整った。


「じゃあ今から帝都へ向けて突撃を開始する! 念話は常に相互で解放しているから、緊急時は遠慮なく使え。隊列はオレとマークを先頭で道を開く。真ん中はガドラとソルムで防御に専念。最後尾はキャストで遊撃を任せる。追いつけるやつはいないだろうが、後方の警戒にも一応注意しろ。最大戦速で最短距離を一気に駆け抜ける! オレたちの力を存分に見せつけ、クレイト帝国の奴等の度肝を抜いてやれ!」

「「「御意!!」」」「はいっ!」

「では突撃!!」


 オレの号令と共に、神獣三頭が前方に広がる大軍に向けて突撃を開始する。

 向こうもオレたちの動きが見えたのか、陣形の動きが慌ただしくなり、あちらこちらで大きな声が上がる。


「神獣が来るぞ! 重装騎士隊! 防御陣形!」

「弓隊構え~!」


 そんな声が敵陣から聞こえるが無駄だ!

 まずはオレの風魔法で挨拶させてもらおう!


 先頭の先発隊まで距離二〇〇メートルのところでオレは風魔法を放つ。


「◇◇…………(ウィンド)!!」


 魔力制御でほぼ最大限に魔力を込め、(ウィンド)を敵の先陣に叩き込む。

 その突風はまるで見えない津波のように地面の草や土を捲れ上がらせながら前方へ広がり、敵陣めがけて襲いかかる。

 そしてそれが敵陣に接触すると、敵兵士や騎士、騎馬を紙屑のように吹き飛ばした。


「うわ~~~⁈⁈」

「なんだこの突風は⁈」

「まさかこれが風魔法の威力なのか⁈」

「陣形を保てません!」


 あちらこちらでそんな叫び声が聞こえるが、今の風魔法で先発隊のど真ん中に大きな道が開ける。


「マーク、あそこを突っ切れ!」

「御意! 皆も続け!」

「「はい! 父上!」」


 オレの指示で神獣隊列が敵陣のど真ん中を駆け抜ける。

 そして両サイドの陣形からなんとか体勢を立て直した弓兵たちがオレたちを射ようと弓矢を構えるが、それよりも先にオレがそいつら全てを弓で射る。


「な、なんだ? 仮面の少年が持つあの弓は⁈」

「あんな姿勢から弓矢を⁈」

「なんという連射速度⁈」


 そう、オレは駆け抜けるマークの背に立ちながら、聖弓デュランダルに矢をフル装填して射撃を行っている。

 「聖弓デュランダル」弓神様からいただいた聖弓の中でも連射に特化したロングボウだ。

 五〇本もの矢を自動で装填する装置が備え付けられたそれは、正にこの世界における機関銃とも呼べるべき代物だ。

 この聖弓の性能とオレの身に宿る弓神様の加護の力、そして地図レーダーなどもフル動員し、走るマークの背の上で舞い踊るかのように回転しながら、こちらに矢を向ける弓兵をことごとく射貫いてゆく。

 もしかしたらフラメン姉さんの加護の力も混ざってるかも知れないな。


「うわっ⁈」

「ぐっ⁈」

「ぎゃあ!!」


 オレに射貫かれた敵兵があちらこちらで叫び声をあげる。

 地図レーダーで標的を確認しながら射貫いており、悪党以外は急所を外している。

 瞬時にそんな判断ができる思考力の速さも、この体の特筆すべき能力の一つだ。

 信じられないような矢の応酬に怯んだ敵兵たちは思わずその脚を止める。

 思う壺だ……。


「キャスト!」

「御意に!」


 オレの号令と共に、キャストが後方からジャンプで舞い上がると、そのまま体を回転させながら火魔法で火炎を放つ。

 その炎の勢いは凄まじく、周囲の敵兵を炎で包み込む。


「ひい! 逃げろ~!」

「火が! 火が!」


 オレの風魔法とキャストの火魔法の二発で敵の先発隊の陣形は総崩れだ。


「よし! 完全に道が開けた! ここを抜ける!」

「御意!」


 オレたちは先発隊を抜けて、そのまま後方に控える中堅隊に突撃する。


「放てーっ!!」


 中堅隊の指揮官らしき騎士の号令と共に、弓兵から矢が放たれる。

 前方から無数の矢の雨が襲いかかってくるが、流石に伯爵領のときとは雲泥の差で、とにかく量が凄まじい。


「ガドラ! 前方に土壁を作れ!」

「御意! え~い!!」


 一旦停止しながらオレの指示でガドラが前方に高さ、幅ともに一〇メートルの土壁を作りあげると、オレがそれに土硬化(コンクリート)の魔法で瞬時に固める。


「ソルムは念のために盾を構えて!」

「はい!」


 その返事と同時に矢がオレたちのいる場所に着弾する。

 大半の矢は土壁に遮られ、無数の矢が土壁に刺さったり弾き返される。

 どうやら全ての矢をやり過ごすことができたようだ。


 オレはその土壁に風魔法を叩き込んで砕き、そのまま前方めがけて破片を飛び散らせながら中堅隊に突撃する。


「うわ~! 壁の破片が飛んでくるぞ!」

「退避! 退避~~!!」


 最初からこの風魔法で弓矢を吹き飛ばせば良かったのだが、それではビジュアル的にインパクトが薄い。

 完全なる防御を見せつけ、且つ、それを利用しての反撃の一手。

 伯爵領での戦いのように、生温い気持ちで攻めているのではないという意思表示を示す。

 今回の戦いはその辺りも盛り込んでいる。


 オレは再び駆けるマークの背に立ちあがり、デュランダルを構えて矢をフル装填する。

 逃げる者は追わず、こちらに武器を向ける者には容赦なくその矢を放った。


「こっちはまだ半分も戦力を出していない! それが理解できない者はいくらでも相手してやるからかかってこい!」


 マークの風魔法で声を拡張し、辺りの敵兵にオレの声を聞かせる。

 その声を聞いた敵兵からどよめきの声が上がり、半数近くの兵が逃げるかどうするか迷いながら脚を止める。

 そう……本当にまだ半分も戦力を出していないのだ。

 むしろ殲滅させないように手加減すらしている状態だ。

 この言葉の意味が理解できない奴は――――


「我こそはクレイト騎士千騎長が一人、エドガン・マーズ! 仮面の少年に一騎打ちを申し出る!」


 ――やっぱりいますよね~。


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