094話:ペルマン領解放と、お風呂タイム
オルソンたちとの会話を終えて地図レーダーを確認すると、どうやらマークがペルマンと接触したみたいだ。
マークたちのマーカーが地図の表示外に印されているので、ペルマンがいた位置は都市部でも結構奥の方ってことになる。
そしてペルマンの状態が気絶になってるから、多分マークの威圧スキルでやられたんだろう。
『どうだマーク? ペルマンは捕らえたか?』
『はい主様。全て滞りなく』
『主様、早馬に乗ったペルマンの近衛騎士が二騎ほど、北門から脱出した様子ですが如何なさいますか?』
『ボクが追いかけましょうか?』
多分それは帝都への伝令役だろう。
『いやいい、放っておけ。南の城門付近にいるから、ペルマンを連れて戻ってくるんだ』
『『『御意』』』
それから数分後、マークが気絶してるペルマンを銜えながら、キャストとガドラを伴って悠々と戻ってきた。
そしてその後ろには数十名の騎士たちが白旗を掲げて付いて来ている。
「みんなお疲れ様。で、後ろの騎士たちは?」
「降伏した騎士たちです。貴様たち、我が主様の御前である。控えよ!」
マークがそう告げると、騎士たちはオレの前で一斉に跪いた。
そしてその中の一人。皆と違って綺麗な装飾を施された鎧をまとう中年騎士が立ち上がると、頭を下げてオレに話しかけた。
「我々は完全に降伏する。どうか私の首一つで部下や領民を助けてはくれまいか?」
「あんたは?」
「私はペルマン伯の騎士団長を務めているガラン・ライアンと申す者。仮面の少年よ……身勝手な願いであることは重々に承知しているが、どうか伏して願い申す!」
「いや、別に敵意がないなら何もしないよ。オレの狙いはこのペルマンとアルグランスに宣戦布告した皇帝だけだ。オレの邪魔をしないってのなら、あとは好きにしてくれ」
「は?」
「だから、好きにしろって言ったの。あんたたちは本気でアルグランスと戦争したくてこんなことやってたわけじゃないんだろ?」
「それはそうなのだが……」
「じゃあそうしてくれ。命まで取るつもりはないし、領地を乗っ取ろうなんてことも考えてないから」
唖然とした表情のガランにそう告げると、気絶してるペルマンを厚手の布とロープで簀巻きにし、口には布で作った猿ぐつわを付けた。
目を覚ましてもどうせ煩いだけだろうからな。
「さっき、そこの騎士たちからも話を聞いたけど、アルグランスと戦争したがってるのって一部の貴族たちだけなんだろう?」
「その通りだ。ペルマン伯や帝都にいるハイルマン候と、その息がかかった貴族。そして…………皇帝陛下もな……」
「じゃあオレがそいつらにガツンと一発見舞ってやるから、あんたたちは平和な国づくりに尽力してくれ」
「神獣を従える少年よ……貴殿は我々を解放してくれるというのか?」
「そこまで大層なことは考えてない。だけどアルグランスには仲間がいる。だからそいつらを傷つけようとしてる奴らをぶちのめしに行くだけだ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
オレはそう言いながら、簀巻き状態のペルマンをマークに銜えさせてこの場を去ろうとした。
「待ってくれ! 貴殿は…………神の使徒なのか?」
ガランがそう尋ねてくる。
だから頼むからその「神の使徒」ってのはほんとやめて欲しい。
ぶっちゃけ、こっ恥ずかしいんだよね……。
あ、そういやオレはまだ名乗ってなかったな。
ガランもきちんと名乗ったことだし、一応オレも名乗っておくか。
「ソーマだ」
「え?」
「オレの名前。こっちの獣人はメイドのソルム。神獣は大きいのがマーク。小さい方がキャストとガドラ。みんなオレの大切な家族だ。もし良かったら覚えておいてくれ。それじゃあ」
「それでは皆様方、ごきげんよう」
「クレイトの騎士たちよ。貴様たちは勇敢に戦った。そのことだけは誇りに思え」
「ただ今回は相手が悪かっただけの話です」
「じゃあね~ オジサンたち~♪」
オレたちはそう言い残してこの場を立ち去った。
ペルマン伯爵領の都市部を離れて小一時間ほどが経過した。
時間は二一時を少し過ぎた辺り。
流石にこれ以上の行動はソルムに負担をかけるので、今日はこの辺りで野宿しようと思う。
いまだに気絶してる簀巻きペルマンは適当な木に括り付け、マークたちを見張りに付けたので大丈夫だろう。
ささっとテントや風呂を設営し、諸々の準備をする。
特に今日は風呂に入りたい。
昨日はシャルク侯爵のお屋敷泊まりで汗を拭う程度だったし、今日は一日この騒ぎでバタバタしたから全身がベタついて気持ち悪い。
それに一日中マスクをしていたから、頭髪も少し臭う。
お湯を沸かしている間に食事を済ませ、ようやくお風呂タイムとなった。
「ぷっは~! 生き返る~♪」
「今日は一日お疲れ様でした。旦那様♪」
…………うん……やっぱりソルムも一緒です……。
今まではダイルも一緒だったから、いつものアルグランス風景ってことで、あまり意識しないようにはしてたけど、流石に男女二人っきりでのお風呂ってのは……やっぱ気恥ずかしさが半端ないです……。
ソルムはスキンシップの傾向が少し強めな娘なので、お風呂の時はオレを膝上にのせて後ろから抱きつく姿勢が定番となっている。
二人でスペースは十分にあるから、無理にこの態勢にならなくてもいいのに……。
もしかしてソルムはこうするのが好きなのか?
まぁ色々と言いたいところではあるが、背中に当たるふくよかな双子の山脈に抗う術をオレは持ち合わせていなかったので、今は良しとしておこう。
「今日は本当に色々ありました……。旦那様や神様のお話も驚きでしたが、まさか私が旦那様の家臣になれただなんて、今でも夢みたいです……」
「家臣だなんて大袈裟だよ。でもソルム……本当に良かったのかい? 急な話で巻き込んじゃった形になったけど、オレの眷属になってくれて?」
「ハイ! 最初は色々と驚きましたが、姫様の名のもとにアルグランスでの務めは正式なお暇をいただきましたし、なにより旦那様にずっとお仕えできるようになったのが嬉しいです♪ いつか旦那様がアルグランスを去ることになれば、そこでお別れと思っていましたから……。ふふふ♪ お屋敷に戻ったらみんなに自慢できます♪」
「そう言ってくれると嬉しいよ。じゃあオレもソルムの主人として相応しい人間にならないとな~」
「では当面の間は私のお給金を稼いでいただきませんとね♪」
「うっ! ……が、がんばりまふがぶぶぶぶ……」
ソルムの鋭い一言に、思わず顔の半分を湯の中に沈めてしまった。
そうだ……ライラたちと違って、ソルムはオレがちゃんと面倒見なきゃいけないんだった。
手持ちのコパルを売れば当面の金銭面は問題ないだろうが、今回の一件が全て片付いたら、ちゃんとした仕事を探そう。
いくらお金があっても少しは働かないと人間駄目になる……。
「旦那様。これからも幾久しく、ソルムを可愛がって下さいましね♪」
ソルムは満面の笑顔でそう言いながら、背中からオレを抱きしめる。
「ハイ……誠心誠意頑張ります…………」
ソルムの愛情と圧力にたじたじのオレであった。
やっぱ女の子には勝てんわ……。




