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神愛転生  作者: クレーン
第一章
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001話:プロローグ・瀧蒼馬という男

俺は親が嫌いだ。


理由を挙げれば様々だが、一番の原因は幼少の頃から「大人になったら養え」そればかり言われ続けられたからだろう。

そんなガキの頃から、自分の人生の行き先を決めつけるような事を散々言われてきたのだ。

正直言って、将来に何も希望を持てなかった。


なぜこんな事を言われたのか?

多分、俺が末っ子でもあるのだが、長男でもある事が一番の要因だと思われる。

俺には姉が3人いるが、親からすれば、待望の男が産まれたという事もあって、その分の期待も大きかったのだろう。


しかしだ!

そんな事は俺には関係ない!

俺は親を養う為に生まれた訳じゃない!


そんな事を思っても、その時は所詮子供。

家族の力を与えてもらわなければ生きていけない。

しかし年齢を重ねる度に「養え」という言葉のプレッシャーがのしかかる。


高校に上がる時、親は「大学には行かせない」そんな事を言いだした。

うちはなんだかんだで貧乏な家だったから仕方がない。

俺自身も、その時は大学にまで行こうという気は持っていなかった。

しかしそんな時にまで、俺の未来に干渉しようとする親の発言。

正直、萎える……。


そして俺は落ちこぼれた。


幾度となく赤点を交えながらも、かろうじて高校を卒業。

そのまま運送会社の事務員として就職した。

上司である老害どもの理不尽な指導に日々ストレスを溜めながらも、給料が出る度に家に家賃を納め、残った額の一部を貯金に回し、その残ったわずかな小遣いで趣味のアニメ・ゲーム・漫画の類を買い漁り、オタク仲間たちと遊びながらストレスを発散させていた。

いや、生きるモチベーションを食い繋げていた。


しかしそんな生活も、予想通り限界(おわり)がきた。


二十四歳になったある日、俺は親と大喧嘩をした。

理由? 今となっては理由も忘れた。

多分、本当にどうでもいい些細な事だったのだろう。

だけど俺の人生最大の「若さ」を炸裂させるには十分な出来事だった。


「こんな家、出てったるわ!」


俺は親にそう言い残し、今まで溜めた貯金を使って、喧嘩日から僅か二週間で関西から関東へと引っ越しした。

いやはや、やはりいざという時の潤沢なお金の存在はありがたい。

この時ほどお金のありがたさが身に染みたことはなかった。


しかしお金があっても、勝手知ったる地元から離れて未知の土地に住む事になるのに不安が無かったわけではない。

だが幸いな事に高校時代からのオタク友人が、数年前から仕事の都合で関東で一人暮らしを始めており、その友人を頼りながら一人暮らしのノウハウを教えてもらった。

まあもっとも、その友人もその時は既に仕事を辞めて、自由気ままなフリーター生活を満喫していたので、俺もその道をなぞる事になるのだが。


俺は友人の勧めでコンビニのバイトを始めた。夜勤で週四日の勤務だ。

高校時代にも接客業のバイトをしていた経験があるので、このテのサービス業に抵抗はない。

しかし都会の夜勤バイトは実に時給が良い。

その上、引っ越し先は結構なボロアパートだったので家賃も安く、週四日の給料でも最低限の生活は十分にこなせる。

貯金もまだ少し残っていたので、かなり心に余裕があった。

なにより親がいないのが最高だった。


そして時代はインターネットの時代へと突入。

俺も貯金を切り崩してパソコンを購入し、この広大なネットの世界を満喫。

そこで俺はネットで知り合った新しいオタク友人たちを得ることになる。


オフ会などに参加してリアルで友人たちと出会い、そして気が付けば、何故か俺の住んでる街に、その友人たちが続々と集まってきたのだ。

俺と同じようにフリーターの者もいれば、システムエンジニアや営業職、IT関連などと職種も様々で、中には田舎町からやってきた学生なんかもいた。

だが共通する趣味をもった仲間たち。

誰が示し合わせる事もなく、必ず誰かの家にたむろしてオタトークやゲーム三昧を満喫していた。


毎日が夢のような、楽しい日々になった。


俺が家を飛び出して二年後、実家の両親から連絡がきた。

「一度家族で話し合おう」と。


まったくこの親どもときたら…。

ようやく俺の親に対する不満の原因に気付いたらしい。

だがもう、俺は実家に戻るつもりはない。

こんな楽しい生活を壊されてたまるか。


俺は一度実家に行き、実家にも関西にも戻るつもりはない事を家族に告げた。

その言葉を聞いて親は落胆していたが、俺は何の罪悪感も感じなかった。

だけど一番上の姉にだけは感謝しかなかった。


家を出る決心を固めた日、俺はその姉に相談して、親の今後を全て丸投げさせてもらったからだ。

そのうえ、引っ越し先の契約などに必要な保証人なども全て請け負ってくれた。

本当に申し訳なさと感謝しかない。


こうして姉の仲裁を交えながら家族会議は終了。

俺は足早に関東へと帰った。



俺の名前は瀧蒼馬たき そうま

この時で二十六歳。

底辺街道まっしぐらの馬鹿オタクである。

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