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私の旅は世界の果てに  作者: 鈴亜サクサク
旅の始まり
7/31

イーラドア最後の朝飯

 イーラドアに滞在してはや三年。

 別に二度と戻ってこない訳ではないのだが、世話になった街から発つとなると名残惜しさがある。

 土産も買って今日出発するとなって改めて実感した。

 ……そんなしんみりしちゃだめだな。飯が不味くなる。

 

 気持ちを切り替えて、朝食になるものを売っている店を探す。

 さっきの土産を買った周辺は生魚や果実等の調理する前の食材が売られていたが、今いる市場の中央は串焼き肉だとか焼き餅、蜜漬け果実といった人の手によって調理が施された食事が多く売られている。

 更にはいかにもここで食べてけと言わんばかりにテーブルや椅子まで用意されている。

 

 「何食べよっかな」

 

 数えきれない程の選択肢の中から一つ。多くても二つを選ぶ。

 王道を行く新鮮な海鮮系の物を食べようか。

 初めて見る異国の食べ物に挑戦してみるか。

 それとも、純粋に私の好物を食べるか。

 あぁ、めっちゃ悩ましい。


 とりあえず今は手軽でがっつりと食べれる物を食べたい気分。

 節約は………今日は一旦忘れよう。

 変に安物を買ったら後で後悔する。

 

 「にしても……混んできたな」


 時間が経つにつれてどんどん人が増えていく。

 ちんたらしてると人の波に飲み込まれて通るのも一苦労になりそうだ。

 早いとこ朝飯を探したい。


 そんな願望に呼応でもしたのか気になる看板が目についた。


 『市場限定バゲットサンド』


 とだけ書いてありそれ以外の情報はない。

 名前だけでは何が挟まれているのか見当がつかない。

 物は試しだ。少し並んでいるので待つことになるがここにしよう。


 頼むと店員がその場でバゲットサンドを作ってくれる。

 切れ込みの入ったバゲットにレタスやオニオン、チーズを挟んでいく。

 ここまではなんの変哲もないバゲットサンド。

 何が市場限定なのかと見守っていると、白身の魚の切り身がバゲットに挟まれた。

 その上に橙色の小さな丸い粒をバゲットサンドから溢れそうな程かける。

 それを包み紙で包んだらようやく私の手に渡された。


 「はい、2700Gです」

 「うわっ、結構高い」


 値段見てなかった。

 だが、さっき節約はしないと誓ったので問題なくお金を払う。

 バゲットサンドを受け取ったら空いている席を見つけてそこに座って食べる。

 

 「うん、美味しい」

 

 カリっとした食感のパンにレタスやチーズといった馴染みの味。

 そこに白身魚のクセのない風味が合う。

 橙色の小さな球体もプチプチとした食感と塩味で口の中を楽しませる。


 中々にボリュームもあったが、苦なく食べきる事が出来て腹もいい具合に満たされた。

 なおかつ海の幸に見たことのないものまで味わえて大満足。

 

 結局橙色の小さな球体の正体は分からず仕舞いなのが少し心残り。

 何かの卵かな。初めて食べた。


 店員に聞いてみようかとも思ったが、既に行列が出来ていて、ゆっくり会話出来るような雰囲気ではなかった。

 辺りを見渡してみると他の店にも行列が出来つつある。

 

 少し遅れてればこの行列に並ばされるところだった。

 自分の幸運に感謝しつつ、これ以上人が来て歩くことさえ困難になる前にこの市場を後にした。

 いよいよ訪れるイーラドアとの別れの名残惜しさを心に秘めながら。


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