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私の旅は世界の果てに  作者: 鈴亜サクサク
旅の始まり
6/31

実家への手土産を買おう

 目覚めたのは日も登りきっていない朝早く。

 正直まだ眠い。

 何でそんな早起きをしたのかというと両親への手土産を買う為に、港町で開かれる朝市に行きたいからだ。

 シーズン外でも朝市は毎日のように開催されており、シーズン時よりは劣るものの、賑わいを見せる。

 そこでは船乗りが捕ってきた新鮮な魚や、異国の食材や工芸品が売られていて、手土産を買うには十分事足りる。


 「ふぁ~あ、眠っ」

 

 間抜けな欠伸をしながら着替えて財布だけを持ったら、他の客を起こさないように静かに一階に降りる。

 この時間だと他の客はおろか女将も居ない。

 音を立てないように扉を開けて外へ出た。


 ◇


 市場へと向かって歩くことしばし。

 私と同じく朝市に行く人、品物を運ぶ商人や船乗りの姿があり、賑わいの鱗片を見せはじめる。

 朝早くにご苦労な事だ。

 

 「というか、何買おっかな」

 

 買いたい手土産については一切考えていない。

 もうじき市場に着くのでそろそろ考えておく。

 まず手頃な値段なのが第一前提。

 それでいて両親が驚いてくれるようなインパクトがあるものがいい。

 ……でっかい魚丸々一匹とか?


 そんな事を考えながら、市場に着いた。

 巨大な屋根の下に魚や野菜、果実を売る屋台や敷物の上に商品を並べただけの簡素なものまで様々な店が並ぶ空間。

 それに加えて客や店員が生み出す活発な声。

 今でも賑やかだというのにまだ本調子ではないというのが驚きだ。

 

 「さて、どうしよ」


 考えが纏まりきってないままに、店に並べられた商品を物色しながら市場を散策する。

 見たことのない食べ物だったり、可愛い工芸品や可愛くない工芸品があったり……。

 とにかく見ていて飽きない。

 うっかりしてると魅入ってしまい、本来の目的を忘れそうになってしまう。

 

 誘惑に負けぬよう、意識を強く保ちながら市場内をぶらぶら。

 いくつか魚を丸々一匹売ってる店はあるのだが、どれも値段が高く、魚を見つけては付けられた値札を見ては即、止めにするを繰り返す。

 それに冷静になってみればこんなのどうやって持って帰るのかを考えてなかった。

 

 「魚は止めとこう……」

 

 小ぶりなものだったり切り分けてあるのを買う選択肢もあるが、普通過ぎてつまらない。主に私が。

 

 次に見つけたのが海老。

 海が近くにない故郷では珍しく、私でも購入可能な値段。

 そして海老は箱に大量に詰められ活きが良く蠢いているのでインパクトもある。

 いや、キモいな。

 だがこのキモさは驚かせるにはうってつけだ。


 「すいませーん、これちょうだい」

 「お、どれくらい買うんだい?」


 どれくらい……。

 どれくらい?

 聞く方が早い気がしてきた。


 「両親への土産なんだけど、どれくらいあればいい?」

 「土産か……ちなみに両親はどこ住みだ?」

 「アト村って所。こっからは結構遠いよ」

 「聞いたことねぇな。だが、遠いってなら……」


 店主のおじさんは革袋を二つ用意して海老を入れていく。

 ぱっと見た感じ十匹位ずつ入っただろうか。

 そこに氷をいくつか入れた。


 「はいよ、中の氷は時々入れ換えろよ」


 注意と共に海老入り袋を渡された。

 代金と引き換えに袋を受けとる。

 決して安くはなかったが、いい土産を買えた。


 土産も買えたし、そろそろ帰ろうとも思い時計を見てみたがまだ六時にもなってなかった。

 まだ時間に余裕はある。

 折角だから、もうちょっとこの市場を見ていくついでに腹ごしらえもしていこう。

 こんだけ店があればイーラドア最後の食事に相応しいものはきっと見つかる。

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