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私の旅は世界の果てに  作者: 鈴亜サクサク
旅の始まり
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宿屋『蓮湖亭』

 泊まる宿屋にはあらかじめ目星はつけてある。

 暑い中当てもなく歩き回るなんて馬鹿な真似はしない。

 

 目星を付けたのはこの都市イーラドアの北に位置する港町エリア。

 そこに建つ蓮湖(れんこ)亭という宿屋だ。


 格別安い訳ではないが、部屋の窓から青く美しい海を眺めることが出来る。

 漁のシーズン時は船乗り達が集まってこの宿屋も混雑するが、それ以外の時期では人も少なく静かなので考え事をするのには丁度いい。

 そして私が歩いている港町も人通りがまばらで静かだ。


 重い荷物に息を切らしつつも、なんとか今日の宿に辿り着く。

 綺麗なレンガ造りの二階建ての建物。


 蓮湖亭の扉を開けると広間をホウキで掃除する女将の姿があった。

 ここの女将は若く見える。

 前に年齢を聞いたことがあるのだが、オホホホと微笑みながら「17歳よ」という答えが返ってきた。

 これは絶対嘘ついてると分かる。

 私は20代後半と予想している。

 事実は闇の中だが。


 女将はこちらに気付いて掃除を止めて話し掛けてきた。


 「あら、リリナちゃん、いらっしゃい。なんか疲れてそうだけど何かあったのかしら?」

 「うん、色々あったんだよ」

 「そう。いつもの部屋だったら空いてるから受付の所から鍵持っていって勝手に入ってていいわよ」

 「よくないでしょ。私が金でも盗って逃げたらどうすんのさ」

 「あなたがそんな悪い子じゃないのは分かってるから大丈夫」


 そう言ってまた掃除を再開した。

 私も特に何も言わず、受付の机の中から鍵を取りだし二階へと上がった。

 改めて思うが、ここの女将は色々適当だ。

 過去に指名手配犯を気付かずに泊めてた事もあるとか無いとか。


 二階の一番奥の部屋。

 蓮湖亭に泊まる時はいつもこの部屋を使わせてもらってる。

 この部屋は他と比べて少し狭いが一番海が見やすい。

 狭いと言っても一人身には十分な広さはあるので広さは些細な問題だ。


 私はひたすらに重いバッグを床に下ろし、疲れた体を労るように大の字になって床に寝転がる。

 

 「あー疲れた」


 ギルドハウスから蓮湖亭の大したことのない筈の距離を移動しただけなのにとても疲れたように感じる。

 やはり体力が無いってのは色々と苦労する。


 寝転んだまま、壁にかけられた時計を見つめる。

 時間は11時、昼御飯にはまだ早い時間だ。

 とりあえず今日必要な着替えを取り出してバッグの上に乗せといて部屋の端に寄せておく。

 

 それから海を眺めつつ、今後について考える。

 

 とりあえずしばらくはクエストもないので今の内に里帰りしてもいいかもしれない。

 親とは三年は会ってないし、調度いい機会だろう。


 「あ、船だ」


 遠方に船が二、三隻。

 おそらく漁船だろう。

 シーズン外とはいえ、少なからず漁は行われている。

 

 意識が逸れたな。


 んで、里帰りしたあとだが……。

 今ある貯金を使って世界を巡る旅でもしようと思う。

 実の所、ギルドに入った理由なんて生きるための金稼ぎと私のスキル磨きの為だけで、莫大な富とかSランクの名誉とかにはさほど興味はない。

 なので、金が貯まり、実力がついたらギルドを脱退して、流浪の旅でもしようかなとは考えていた。

 今旅に出るのは準備不足なのは否めないが……。

 それもまた一興。

 予定外の旅こそ冒険者の華。兄貴の言葉だ。


 そこから旅先の美味しい料理や美しい風景への妄想に更けて、しばらく経つと女将からご飯出来たよと呼ばれたので、腹ペコの私は早足に一階の食堂へと向かった。

 

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