守りたい女13
都内某所。今日も喫茶コロンボに、山崎とカオルの姿はあった。
「はい!お兄ちゃんの好きなオムレツだよ!あーん」
「自分で食べるから返してくれないかな」
「一回でもあーんで食べてくれたら、後は自分で食べていいよ!」
「じゃあいいよ。オムレツはカオルが食べて」
「何でよ!」
「山崎さんは、こんなキモい妹より、ロリっ子の私からあーんされたいんですよね!」
「ちょっとあんた!仕事中でしょ!向こう行きなさいよ!」
「いいのよ!どうせ山崎さんたち以外に客なんて来ないんだから!」
「小林さん。それはさすがにマスターが可哀想ですよ」
山崎はカウンターにいるマスターの方を見たが、特にこちらの会話を気にしている様子もなく、相変わらずコップを拭いていた。ミクの言う通り、自分たち以外に客はいないのに、どうしてコップを拭く必要があるのだろうと山崎は思ったが、それについて特に言及することはなかった。
「あれ。そういえば、あの貧乳メガネおばさんは?いつもここでご飯食べてるとガミガミ言いながら入って来るのに」
「そう言えばそうね。あのゴキブリババア、今日は来ないんですか?」
「酷い言われようだなあ。東堂さんなら、今風邪で休んでます」
「風邪?この前インフルエンザになったとか言ってなかった?」
「それが治ってすぐに僕がいろいろ大変な仕事をお願いしちゃったから、また体調を崩しちゃったんだって」
「お兄ちゃん。さすがの妹でもその鬼畜さには引いちゃうよ・・・」
「いや、仕方なかったんだよ。必要な捜査だったから。そのおかげで、今回も事件を解決できたんだから、東堂さんには感謝してもしきれないよ」
「本当にお兄ちゃんって、天然のドSだよね」
「そうかなあ」
「でも、ミクはそんなドSな山崎さんも愛してます!」
ミクは山崎に抱きついて言った。
「山崎さん!子作りしましょう!」
「しないですよ。そんなことしたら、子供ができる前に僕が捕まります」
「大丈夫です!合意の上なら問題ありません!」
「ありますよ。・・・でも、子供か・・・」
「何?どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、今回の事件で、親子って何だろうって考えさせられたんだよ。僕は子供がいないから分からないけど、いつか分かるときが来るのかなって」
「それってつまり、今すぐ子供が欲しいってこと?」
「え?いや、そういう訳じゃーー」
「じゃあお兄ちゃん!カオルがお兄ちゃんの子供を産んであげる!だから、今からお家に帰って子作りしよう!」
「何言ってんの!山崎さんの子供は私が産むの!ね?山崎さん!私、今日はあと一時間でバイト上がりですから、その後子作りしましょう!何なら、今すぐ上がってもいいです!どうせお客さんなんて来ないし!」
「だからマスターの前でそういうことはーー」
山崎がカウンターの方を見ると、マスターは相変わらず無言でコップを拭いていた。
「お兄ちゃん!私と!」
「いいえ!私と!」
カオルとミクに両側から腕を引っ張られながら、山崎はエリナを酷使し過ぎて体調を崩させてしまったことを深く後悔するとともに、早く帰って来てこの場を制して欲しいと願うばかりであった。
終