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山崎警部と妹の日常  作者: AS
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守りたい女8

 午後の通し稽古が終わると、明日が本番ということもあり、いつもより早めに稽古は切り上げられた。

 都子は稽古場を出ると、車で帰宅し、シャワーを浴びて汗を流した後、野菜中心の軽めの夕食を食べた。都子は、本番前は消化の良いものしか食べないことにしていた。

 夕食を終えたのは夜九時過ぎだったが、都子はもう眠ることにした。明日も朝からリハーサルがある。夜更かしは禁物だった。

 寝室のベッドに入り、都子は五十嵐を殺したときのことを思い出した。あのときのことを決して後悔はしていない。あの男を生かしておいたら、自分はおろか、巽にまで危害が及ぶことになっていたのは火を見るよりも明らかだった。もちろん殺人は犯罪だが、判断を間違えたとは思っていなかった。

 殺した後の隠蔽工作も、自分なりに上手くいったはずだ。目撃者がいない状況で自分の殺人を証明するものは、五十嵐を殴ったあの灰皿しかない。しかし、あれは今、海の底に沈んでいる。いくら警察でも、広大な海の中から灰皿一つ見つけ出すのは不可能に近いだろう。

 ただ問題なのは、あの山崎とかいう刑事だ。あの男、人当たりの良さそうな振りをしているが、五十嵐を殺したのが正当防衛でないと疑っているのはまず間違いない。わざわざ五十嵐の情報を自分に報告してきたのが良い証拠だ。腕の良い刑事であることは確かだろう。

 だが、やはりあの刑事でも、自分の犯行を証明しきれてはいないようだ。まだ何一つ核心は突かれていない。楽屋に灰皿があったかどうかを聞いて来たときは肝を冷やしたが、それも何とか切り抜けた。

 都子は、あの刑事には絶対に自分の犯行をバラす訳にはいかないと決意した。それは、自らの保身の為ではない。全ては巽の為である。何の罪もない自分の息子を、生まれて間もなくして人殺しの子供にする訳にはいかない。これは、絶対に隠し通すべき事実だった。

 今後どんなふうに攻められたとしても、真実は死んでも隠しきる。そう静かに決心して、都子はベッドの中で目を閉じた。



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