女神の選択16
「言っとくけど、これで許した訳じゃないからね!」
「分かったよ。だから何度も謝ってるだろ?」
事件から数日後、山崎は妹のカオルを連れてとある美術館を訪れていた。
野崎大輔の巨大ヴィーナス像は、来年の国際展覧会まで、東京の美術館で保管されることになったのだった。
山崎は、連絡せずに家を数日空けてしまったお詫びとして、能登に無理を言って、カオルに巨大ヴィーナス像を見せてやることにしたのだった。美しいものが好きなカオルは、少なからずその絵に感動していた。
そして今、二人は美術館からの帰りの車に乗っていた。車を運転しているのは、無論エリナだった。
「ていうか、何でこの貧乳おばさんも一緒なわけ!?」
カオルは後部座席から運転席のエリナに抗議した。
「私だって野崎先生の絵を見てみたかったんだもん。別にいいでしょ」
「よくない!ていうか東堂さん。結局この前は有耶無耶になっちゃったけど、お兄ちゃんとは変な関係になってないんでしょうね!?」
「だからなってないって。しつこいな」
「本当に!?じゃあ一緒の部屋で長時間過ごしたり、同じベッドで寝たりとかしてないのね!?」
「…」
「何で黙るのよ!そんでお兄ちゃんも何で顔赤くしてんの!?」
カオルは助手席に座っている自分の兄の頭を小突いた。
「痛っ!」
「やっぱりお兄ちゃんと東堂さんは大人の関係になっちゃったんだ!お兄ちゃんの硬く反り立った肉棒が、東堂さんの柔穴に入っては出、入っては出ーー」
「ちょっとやめてよ!違うったら!」
「柔穴って、そんな言葉無いだろ…」
「だって、若い男女が同じベッドで寝て、何も起きないはずないじゃない!」
「本当に何も無かったのよ!一日目は私が酔っ払ってすぐに寝ちゃったし、二日目は山崎さんが疲れてすぐに寝ちゃったからーー」
「二日?二日も一緒に寝てたの?」
「あ…」
山崎は助手席で頭を抱えていた。
「お兄ちゃん?説明してくれる?」
「いや、あのな、カオル」
「許さない!」
「いや、お前今説明しろってーー」
この後、山崎はカオルと、なぜかエリナにも高級寿司をご馳走する羽目になったのだった。
終