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山崎警部と妹の日常  作者: AS
132/153

愛しすぎた女13

「ごめんなさい!」

「もう頭上げてください。マイコさんが気に病むことないですよ」

「でもーー」

「本当に。そもそも別に怒ってませんから。だって、山崎さんとマイコさんが何かあったって、私には何の関係もないことじゃないですか」

「ううん」

 事件解決から数日後。エリナを呼び出したマイコは、喫茶コロンボで山崎とのことでからかったのを謝罪していた。

「でも、本当にごめんね。私も調子乗っちゃって。本当に悪い癖だわ」

「だからいいんですって。山崎さんとマイコがどうなったって私はーー」

 エリナは頼んでいたカフェラテを一口飲んだ。

「なーんにも気にしませんから!」

「めちゃくちゃ気にするじゃん……」とマイコは思ったが、口に出すことは無かった。

「ありがとう、東堂さん。でも、今日は私に奢らせて。何でも好きなもの頼んでいいから」

「そんな、悪いですよ」

「いいの。そうしないと私の気が済まないもの。今日は黙って奢られてよ」

「そうですか? ……じゃあ、今まで気になってたけど、高くて手が出なかった、このスーパージャイアントミラクルアルティメットパフェ、六四八〇円頼んでもいいですか?」

「もちろん! 好きなだけ頼んじゃって!」

「やった! ミクさん!」

 エリナは注文待機していたメイド風制服姿のミクを呼び、メニューにでかでかと載っているスーパージャイアントミラクルアルティメットパフェを注文した。そのとき、ミクに「本当にいいのね?」と何度も聞かれたのが気になったが、エリナはそれを押し切って注文を通した。

「マイコさん」

「何?」

 スーパージャイアントミラクルアルティメットパフェが来るまでの間、エリナはマイコとさっきの話の続きをすることにした。

「実際のところ、マイコさんは山崎さんのこと、どう思ってるんですか?」

「どうって?」

「だって、何もしてないとはいえ、一緒にホテルに行ったのは本当なんですよね? それもマイコさんから誘ったそうじゃないですか。何とも思ってない人をホテルに誘うなんてことしないと思うんですけど……」

「まあ、そう思うのも当然よね。東堂さんには借りがあるから、正直に答えるわね」

「はい……」

「私は、山崎さんのことーー」

「はい……」

「すーー」

「お待たせしましたー! スーパージャイアントミラクルアルティメットパフェでーす!」

 そのとき、ミクが大きな声で商品名を読み上げた。そしてミクは、よくバラエティ番組でお笑い芸人の頭に落ちているサイズのタライを両手で抱えていた。

「ミクさん? それは?」

「だから言ってるでしょ。スーパージャイアントミラクルアルティメットパフェだって」

「パフェって……」

 ミクが抱えているタライの中には、目を覆いたくなるほどの量の生クリームやフルーツ、チョコレートにフレークなどが敷き詰められていた。

「ちょっと! このメニューの写真ではちゃんとパフェ用の容器に入ってるじゃない! 何でタライなのよ!?」

「よく見なさいよ! ちゃんと注意書きに『実際のものとは異なる場合がございます』って書いてあるでしょ!」

「にしても限度があるでしょ! 限度が!」

「知らないわよ! 最初はちゃんとパフェ用の容器に入ってたけど、マスターがどんどん調子乗っちゃってこんなになったの! 文句ならマスターに言って!」

「ぐぬぬ……」

 何となくだが、マスターには強く当たれなかった。それはエリナだけではなく、山崎やカオル、マイコにミクなど、喫茶コロンボによく来る者たちは皆そうだった。

 仕方なく、エリナとマイコはこのスーパージャイアントミラクルアルティメットパフェを食べることにしたのだが、案の定食べても食べても減ることはなかった。

「東堂さん。これ、どう考えても無理な気がするんだけど。私もう限界……」

「でも、食べないともったいないですよ……。げふ……」

 エリナが今にもパフェを全部吐き出しそうになったときだった。誰かが喫茶コロンボのドアを開け、店に入ってきた。エリナはその黒いスーツの男と、その傍らにいる憎たらしいほど美人でスタイルの良い、男の妹を見た瞬間、ニヤリと笑った。

 その後、エリナとマイコに加え、山崎、カオル、ミクも加わり、何とか五人がかりでパフェを食べきったのだが、五人の血糖値は、この日だけで相当数上がったという。

 だが、食べ終わったエリナの顔は、どこか晴れやかだった。


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