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山崎警部と妹の日常  作者: AS
119/153

愛され過ぎた女14

「お待たせしましたー!」

 トレイに注文の品を乗せたミクが、山崎たちのテーブルにやって来た。ミクはエリナとマイコの前にカフェラテ、カオルの前にトマト抜きのサラダ、そして、山崎の前に大盛りのオムライスを置いた。オムライスにはケチャップで「抱いて」という文字がハートマークで挟まれていた。

「何か、嫌な事件でしたね」

「愛され過ぎるのも考えものね」

「僕にはよく分かりません」

 エリナの言葉にマイコが反応し、山崎がオムライスを口に運びながら会話に混ざった。

 綾乃を連行した山崎一行は、その後喫茶コロンボで打ち上げのようなものを開いていた。いつもは山崎とエリナ、カオルの三人で行くのだが、今回はマイコの貢献も大きかったということで、エリナが誘ったのだった。

「この店、初めて来たけどすごく良い感じね」

 マイコは、ミクとは一緒に旅行に行くなど交流はあったが、ミクがアルバイトをしている喫茶コロンボに来たのは初めてだった。

「そうですよね。マスターの料理もコーヒーも美味しいし。もっと目立つところにお店出せばいいのに」

「そうしたら、僕たちの平穏な場所が他の人に邪魔されてしまうのでやめて頂きたいですね」

「いや、お客さん来ないとお店自体が無くなっちゃうじゃないですか」

「大丈夫ですよ。多分」

「多分て……」

 山崎はオムライスを頬張りながらエリナと言葉を交わした。

「山崎さんはカオルちゃんやミクちゃんや東堂さんに愛されてますけど、山崎さん自身は誰かを愛したことってあるんですか?」

「ちょっとマイコさん! 私をその中に入れないでください!」

「誰かを愛したことですか? そうですね……」

「お兄ちゃんはカオルのこと愛してるもんね! 女として!」

「いや、妹としてだけど。そうですね。そうやって聞かれると、僕は今まで誰かを本気で愛したことって、実は無いのかもしれませんね」

「へえ」

 マイコはニヤニヤ笑った。

「じゃあ私、山崎さんの彼女に立候補しちゃおうかなあ」

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 マイコの言葉に、三人の女が同時に反応した。

「ちょっとマイコさん? さすがに冗談ですよね?」

「あら東堂さん。私、冗談は嫌いなのよ。この前だって、山崎さんと一緒にホテルに行ったし」

「え!?」

「え!?」

「え!?」

「ちょっと小倉さん! 誤解を招くような言い方はやめてください!」

「ちょっとお兄ちゃん! どういうこと!?」

「そうですよ山崎さん! 説明してください!」

 カオルとミクが山崎に詰め寄っている間、エリナはマイコに直接尋ねた。

「マイコさん。本当なんですか?」

「ふふっ。秘密」

 マイコはいたずらっぽく舌を出して笑った。

「ちょ、ちょっと小倉さん? 早く説明してくれませんか? じゃないと僕、関節が曲がらない方向に曲がっちゃうんですが」

 山崎は、カオルとミクに二人掛かりで関節技を極められていた。

「いいじゃない。どこまで曲がるか試してみたら?」

「いや、ちょっとお願いしますよ」

 山崎の懇願も虚しく、マイコは山崎の顔を見て終始楽しそうに笑うだけだった。



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