第5話 授業中に
それから、嫉妬の視線が飛び交った、ホームルームの時間も終わり。
ようやく、一時間目に入った。
ちなみにホームルームが終る時、雅はと言うと。
後ろ髪を引かれる様に、何度も後ろを振り返りつつ、教室を出て行った。
そして、それと入れ替わりに、一時間目の担当の教師が入ってきた。
こうして、一時間目が始まったのである。
*********
「お姉ちゃん、良いの・・・?」
「うん、その代わり、後でノートを写させてね」
「でも、僕の字、読めるの?」
「ふふっ、何言っているのよ〜。
だって涼くんの字って、涼くんの顔みたいに、綺麗だよ〜」
「・・・」
亜美の言葉に、涼が顔を赤くする。
その赤くなった涼の顔を見て、亜美がクスクス笑う。
結局、涼は、亜美の膝の上に乗って、授業を受ける事になった。
涼が膝に乗っていると、亜美が机を引く事が出来ないので。
代わりに、涼が取ったノートを写す事にした。
亜美は時々、涼の勉強を見ていたので。
涼の字が、やはり年齢以上の字の綺麗さである事を、良く知っていたのだ。
ちなみに、勉強を見ると言っても、学年でトップクラスの亜美でさえ。
涼の頭脳の前には、やっと優位に立てるくらいであるのだが。
「でも・・・、そんなにくっ付かなくても・・・」
「うん? くっ付かないと、教科書が見えないよ♡」
「・・・」
亜美の返事に、涼が言葉を失った。
亜美の膝の上に、乗っている涼であるが。
そうなると、涼が教科書を持って、二人で見ると言う形にしなければならないけど。
それには、亜美が涼を後ろから抱き締めて、動かない様にしないといけない。
しかし、そうなると当然、密着する事になり。
涼の背中に、亜美の柔らかい膨らみが当たる事になる。
また他にも、ショートパンツから出た素足に。
亜美のミニスカから伸びた滑らかな太股も当たるし。
お互い、夏服の薄い服装なので、薄い布地を通して。
亜美の柔らかい肌の感触、暖かい体温も感じる。
それらは最近、性に目覚め出した涼にとっては。
とても恥ずかしい事であった。
「もっと、教科書を上げてくれないかな〜」
亜美がそう言いながら、涼の頭に頬をくっ付けた状態で。
涼の肩越しから、教科書を覗く。
「あああっ〜!」
「涼くん、動かないでよ〜」
亜美の話す時の吐息が、涼の耳に掛かり。
そのくすぐったさに、涼が亜貴の膝の上でバランスを崩した。
が、その瞬間。
亜美が、涼を抱く力を強め、動かない様に固定する。
「もお、じっとして、ちょうだい」
「お姉ちゃんの息が、耳に当たってくすぐったいんだよ・・・」
「そうだったの、ごめんね♡」
だが、そう言いながら、亜貴は。
涼の頭に、軽く頬ずりをするのであった。
*********
その様な、やり取りをしていた二人だが。
そんな二人に、複数の視線が集中していた。
つまりは、クラスの中で目立っていた訳である。
本人たちは、コッソリしているつもりであろうが。
いかんせん、タダでさえ美人の亜貴が。
膝の上に可愛い美少年を乗っけていると言う。
目立つ状態であるのに、加え。
端から見ると、イチャついているとしか。
見えない事をしているからである。
なので、クラスの中で、思いっきり浮いてしまっていたけど。
当の本人たちは、その事に気付いていなかった。
・・・
そんな状況の中。
教壇で、教鞭をとっていた、数学担当の中年男性教師が。
そのイチャつきぶりを見て、思わず、持っていたチョークを握り潰してしまっていた。
その教師は、30数年間、独身だったので。
イチャついている二人を見て、嫉妬の炎を燃やしたからである。
・・・
「お前らーーー! いい加減にせんかーーー!」
それから、数秒後。
業を煮やした教師が、とうとう二人に雷を落としたのであった。