第4話 偶然の再会
第6話より、涼がお姉様達から、本格的にイジられ始めるので。
もう少し、お待ち下さい。
「あなた達! いい加減、静かにしなさーーーい!」
再び、教室が騒がしくなったので、
業を煮やした雅が、キレて大声を出した。
その声を聞いて、今度こそ本当に教室が静かになる。
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ようやく静かになった所で、雅が涼が座る席を教える。
「それじゃあ、宮山くんの席は・・・。
あそこの、開いている席に座って頂戴」
「あれ?」
静かになった教室の真ん中付近にある、一つだけ開いた席を雅が指すと。
涼が、その席の隣に座っている人物を見て、軽く驚く。
「涼く〜ん」
「お姉ちゃん!」
その人物が小さく手を振ると、涼が大きく手を振り返す。
それと同時に、知り合いに出会った所為か。
涼の表情から、若干、固さが取れ笑顔になった。
「杜山さんを知っているの?」
「はい、隣に住んでいる、お姉ちゃんです」
涼の反応を見た雅が尋ねてみると。
涼が、そう言って答えた。
彼女の名前は杜山 亜美。
涼が言っている通り、隣の家の娘で。
涼が物心が付く頃から知っている、要するに幼なじみのお姉さんである。
「はい、そうです、涼くんが赤ちゃんの時から知ってます。
その頃は、私が涼くんのオシメを取り替えた事もあったしね♡」
「お、お姉ちゃん・・・」
そんな、お約束の台詞を亜美が言うと。
涼が、顔を赤くしながら恥ずかしがる。
自分が知らない、幼い頃の涼を知っている。
それも、涼の大事な物を直に見ていた、亜美を見て。
雅が亜美に、羨ましそうな視線を送っていた。
「先生!」
「何、宮山くん?」
「これ、机が高くてノートが書けません〜」
「あら、本当だわ」
涼が机に行き、ランドセルを机の横に引っ掛け、椅子に座るけど。
机が高すぎて、涼の手がマトモに乗せられない。
学校関係者も、まさか小学生が飛び級で高校にやって来るとは、予想だにしていなかったし。
来ると決まったのも数日前で、余りにも急だったのと。
連絡ミスで、専用の机と椅子を用意していなかったのだ。
「はあ〜、どうしましょう、困りましたね・・・」
雅が頬に手を当てつつ、頭を傾けて思案していたら。
「こうすれば良いですよ」
「(ひょい)」
「えっ!」
突然、亜美が立ち上がると。
そんな事を言いながら、涼を持ち上げた。
亜美の、イキナリのその行為に対し、涼が驚きの声を上げる。
呆気に取られた涼を他所に。
亜美は、涼を自分の膝の上に乗せ。
まるでヌイグルミの様に、涼を後ろから抱き締めたのである。
「昔は良くこうしてたじゃないの〜♪」
「お、お姉ちゃん・・・」
そう、昔は良く亜美が、涼を膝の上に乗せていたのだが。
最近では、涼が恥ずかしがり、膝に乗ってくれなくなっていた。
涼もお年頃になったのか、亜美の甘い匂いや柔らかい感触。
特に、大きな胸を意識する様になったのだ。
「もお、最近は嫌がってさせてくれないんだから」
「・・・」
亜美は文句を言いながら、涼を抱き締めていたけど。
涼は、背中に当たる柔らかな感触に、無言になる。
それは、亜美だけで無く。
最近では、他の女性の膝に乗せられた時も、同様な反応をするようになっていた。
そんな二人を雅は、微笑ましく見ていたが。
良く見ると、その笑顔は引き攣っていた。
そして、内心では。
「(うらやましかねーーーーー!)」
なぜか九州弁で、物凄く羨ましがっていた。
だが羨ましがったのは、雅だけでなく。
教室中から、同様な意図を含んだ視線が、二人に集中していた。
こうして、後ろからの柔らかな感触に顔を赤くしている涼と。
久しぶりの抱き心地に、ご満悦の亜美。
そして、その二人を羨ましそうに眺める周囲と言う図が、出来上がっていたのであった。