表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

第2話 職員室にて

 少年こと涼が、校門をくぐってから、校庭を通り。

玄関で下駄箱に靴を入れ、上履きに履き替える。


 前もって、自分用の下駄箱を教えられていたので。

そこに靴を入れたのである。




 「(ぽて、ぽて、ぽて・・・)」




 そこから、廊下を歩いて、ひとまず職員室へと向かう。




 「(チラチラ)」


 「キャッ〜!」




 通りかかった女生徒二人組が。

涼をチラチラ見た後、小さな声だが騒ぎ始める。


 廊下を通る間じゅう涼は。

通りかかる生徒の、好奇心に(あふ)れる生温かい視線と。

若干の、(よこしま)な欲望を含んだ視線に、(さら)されていた。




 「はあ・・・」




 だが、不安感に襲われていた涼は。

そんな視線にまで、注意を向ける余裕は無かった。


 こうして、涼が周囲の視線を一身に集めながら。

職員室へと、廊下を歩いていたのだった。




 *********




 「(ガヤガヤガヤ)」




 涼が、職員室に着いた。


 扉が開いた出入り口から、色々な人の話し声が聞こえる。




 「しつれいしま〜す〜」


 「(ピタッ!)」


 「(ガヤガヤガヤ)」 




 涼が出入り口で、緊張した面持ちになりながら、一旦、立ち止まり。

そこで、場違いな高くて幼い声を出しつつ、一礼をする。


 すると、職員室の中が一瞬、静まるが。

全員が涼を一瞥(いちべつ)すると、すぐに喧騒(けんそう)が戻った。


 職員、全員が、涼の事は承知していたみたいである。


 頭を下げていた涼が、顔を上げると、職員室の中に入った。


 そうして、職員室の中に入り。

それから職員室にある、ある席の前まで歩いたら、そこで立ち止まった。




 「先生、おはようございま〜す」


 「あら、宮山くん、おはよう」




 涼が、まだ緊張した表情のまま立ち止まり。

幼い声で挨拶すると、机の前で何かを書いていた女性が。

振り返り、少年に挨拶を返した。


 振り返った女性は、髪をうなじで切り揃えた髪型で、眼鏡を掛けており。

服装は、グレーのレディーススーツに、黒のタイトスカートと言う。

如何(いか)にも、”女教師”と言った外見の女性であった。


 その振り返った女性は、今度、涼が編入する教室の担任になる。

来山寺(らいざんじ) (みやび)である。


 ちなみに、担当教科は世界史である。




 「ちょっと待っててね、今片付けてるから」



 そう言って、机に向き直した。


 だか、机に向かった雅の目は、喜色(きしょく)に染まっていた。


 実は、雅は涼の様な可愛い男の子が、好みであったのだ。


 それだけでなく。

前にも”幼気無(いたいけな)い少年を守るため”と言う。

明らかに、取って付けた様な理由で、涼に、何度か接触した事があった

 

 このとき雅は、教師と言う立場を利用し。

防犯と称して、涼の手を握りながら、一緒に、歩いたりしていたのである。


 そう言う訳で、涼は少しだけ雅とは面識があるのだ。


 また数日前に、顔合わせに涼と会った時。

涼が、自分のクラスの生徒になる事を、校長から告げられると。

表面上は冷静さを装いながらも、内心では狂喜乱舞していたのであった。


 それは仕事が終わり、自分のアパートに帰ると。

すぐさまベッドへと駆け込みダイブし、クッションに抱き付いて転がりまくったり。

喜びの余り奇声を発したりと言った。

近所迷惑な奇行を、延々(えんえん)と繰り返していた事からも分かる。




 「(あ、イケナイ、イケナイ、よだれが出ている)」


 


 雅が、その時の事を思い出していたら、思わず顔が緩んでいるのに気付き。

気合を入れて、顔を引き締めなおした。


 そうして、自分の顔を撫で回し、引き締まっているのを確認したら。

振り返り、涼に向き直した。




 「ほら、ほら、そんなに緊張しないの」


 「(なでなで)」




 余りにも、緊張していた少年を見かねた雅が。

涼の頭を撫でたのである。




 「(きゃ〜! 気持ち良い!)」




 雅は、涼の髪の感触の良さに感動の余り。

心の中で、絶叫していた。


 それから、涼を見てみると。

涼の方は、撫でられる感触に目を細めていた。


 そうやって、気持ち良さそうな涼の顔を見ながら。

思わず抱き締めて、頬ずりしたくなる様な衝動を。

必死で抑えていた雅であった。




 *********




 「さあ、行きましょうか」


 「はい」




 しばらくの間、涼の頭を撫でていた雅が。

微笑みながらそう言うと、涼がニコやかに返事を返した。


 雅が、涼の雅を信頼したような笑顔に、内心、身震いしながら喜んでいたけど。

努めて平静を(よそお)っていた。 


 それから雅が、涼の小さな手を握り、一緒に職員室を出た。


 涼の小さく柔らかい手に、緩みそうになる顔を必死になって抑えつつ。

二人で手を繋いで、一緒に教室へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSして女性化した兄が、甘えん坊の弟を溺愛する物語
・TSお姉ちゃんは、弟が可愛くてしょうがない
TSでは有りませんが。
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうかご覧ください。
・星空プロフィール

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ