第9話 子犬にモフられる夢
そうやって、周りから弁当のオカズをもらった涼は。
周りに居る人間の数も多い所為か、思ったよりも満腹になった。
「いや〜だ〜、そうなの〜」
「そうそう、だからねえ〜」
弁当を食べ終えると。
集まったクラスメート達は、めいめいに会話を始める。
「ねえ亜美。あの店、どうだった?」
「う〜ん、そうねえ・・・」
そして、膝に涼を乗せた亜美も、その中に入っていたのである。
「(コックリ・・・、コックリ・・・)」
それぞれが会話に、夢中になっていたので。
一時的に、涼に注意が向いていなかった。
その上、予想以上のオカズの量に、お腹が一杯になっていたので。
涼は睡魔に襲われ、船を漕ぎ出している。
しかし、亜美達は、会話に夢中で。
涼が船を漕いでいた事には、気付いていなかった。
朝から神経を使っていた涼は。
その事にも安心して、ますます眠りに落ちて行ったのであった。
・・・
***********
「すー、すー、すー」
「あれ?」
会話に夢中になっていた亜美は。
腕に急に倒れこんだ、涼の頭の感触に気付き見ていると。
涼が、寝息を立てて寝ていた。
「くすくす、可愛いなあ・・・」
寝ている涼を見た亜美が、微笑みながら涼の頭を撫でた。
「きゃ〜っ! 可愛い〜!」
「しっ! 寝てるんだから静かにしなさい」
「・・・ごめん」
涼の寝顔を見て、一人のクラスメートが声を上げるが。
それを別のクラスメートが咎めると、すぐに謝った。
「でもホント、可愛いねえ・・・」
だが、別のクラスメートが手を伸ばし、涼の頬を撫でてみる。
それを見た何人かのクラスメートが、更に手を伸ばし涼を撫でた。
「ツルツルプニプニで、気持ち良いよ」
「脚も、まだ毛が生えてないから、女の子みたいだね」
何人ものクラスメートが、涼の体を触りまくる。
「こうすると、イタズラしている気分だね。
あっ! フニフニしたのが当たった〜」
「コラっ! 変な事したダメだよ」
調子に乗った一人の娘が、手を涼のショートパンツの裾から入れた。
それを見た、亜美がその娘に注意する。
「ねえ、ねえ。体も手触りが良いよね〜」
「ホントだ、肌が手にくっ付くよ〜。
あ〜あ、私の肌もこれくらいならなあ・・・」
「んんんっ〜」
「もお〜、あなた達、いい加減にしなさい」
他にも、二・三人のクラスメートが、Yシャツの前合わせから、手を入れ。
涼の体を撫で回している。
その感触を受けて、涼が寝ながら体を捩らせる。
そんな、調子に乗った娘達に、亜美が怒って言うが。
それでも、誰も止めようとはしなかった。
***********
・・・
「ク〜ン、ク〜ン」
「あれ?」
涼は夢の中に居た。
夢の中で涼は、なぜか公園に居て。
なぜか足元から、動物の鳴き声がしている。
見ると、足元には、柴の子犬が座っていたのである。
「可愛いなあ〜」
子犬は、チョコンと座りながら。
ピョコピョコと、尻尾を振っている。
「ペロペロペロ〜」
「うわっ! くすぐったい〜!」
動物好きの涼は。
その可愛さに思わず、しゃがみ込んで子犬を抱え上げると。
その子犬を、顔に近付けてみた。
すると、子犬が涼の顔を舐め始める。
その子犬の舌のくすぐったさに、涼が顔を仰け反らせた。
「「「「「キャンキャン!」」」」」
「えっ?」
そうやって、子犬に顔を舐められていたら。
周りから、犬の鳴き声が聞こえてきた。
顔を舐めている子犬から、顔を離して見ると。
いつの間にか、涼の周囲を子犬の集団が取り囲んでいたのである。
それも、ゴールデン、ラブ、コーギー、柴、マルチーズ、ポメ。
様々な犬種の子犬が、涼を取り囲んでいた。
「「「「「キャンキャン!」」」」」
「ちょ、ちょっと〜」
周囲を取り囲んでいた子犬達が、突然、涼に襲いかかってきた。
「「「「ペロペロペロ」」」」
「やめてよ〜! くすぐったいよ〜!」
子犬達は、涼に襲いかかると、涼の体を舐め始める。
それも、顔などの露出した部分だけでなく。
ショートパンツの裾から、Yシャツの前合わせから。
頭を突っ込んで、舐めていたのである。
子犬たちの動きは、現実のクラスメート達の動きを、なぞっているのだが。
夢の中の涼は、そんな事に気付くはずもなかった。
涼は、子犬たちから逃れようとするが。
子犬たちは、多勢に無勢に涼に襲いかかる。
「だ、誰か、助けて〜!」
余りのくすぐったさに、涼は助けを求めるが。
当然、夢なので、誰も助ける事はなかった。
そうやって、涼は夢の中で、子犬たちにモフられたのであった。