深い森4
勘弁してーーー!!!
心の中で叫びつつ、火球を放つ。
わたしが放った小さな火の玉は、獣のような魔物に一直線に向かい、毛皮を焦がす。
「グルル・・・!」
多分、熱かったのだろう。喰らいつくのをやめ、こちらへ振り向く。
ジ・エンド・オブわたし・・・
思わず白目になって、聞いたことのあるようなセリフを呟いてしまったが、こうなったら仕方がない。
勝たなきゃ、ヤられる・・・!
その魔物は、今まで見たどんな魔物よりも大きく、凶悪だった。
2mを超えるであろう巨躯に長く太い牙。空腹に殺気立ち、唸る声・・・
正直、勝てる気はしないが、死にたくはない。
数多の戦いをともに潜り抜けてきた木の棒を構え、突っ込んでくる魔物に振りかぶる。
「!避けられた!?」
今までのとは違い、襲い掛かってくるだけでなく攻撃の回避までしてくる。
飛び掛ってくるタイミングをずらされ、仕掛けた攻撃もかわされる。
たまに魔法攻撃を繰り出してみるが、焦りと恐怖でたいした効果も得られず、それどころか、気力と体力が奪われていくような感覚さえ覚える。
まずい。非常にまずい。
「ぐ・・・っ!」
攻撃が空振り、バランスを崩したところにタックルを喰らい、なすすべもなく地面に転がされてしまった。
絶体絶命・・・わたし、こんなところで死ぬんだろうか。
このままでは、自分も、倒れているあの人も食われてしまう・・・じりじりと迫ってくる魔物に、思わず後ずさる。
・・・と。
「いっ・・・?」
指先に触れる、冷たく硬い感触。
つい魔物から目を離し、そちらを見てしまった。
自分の指先にはわずかに血が滲む。
これは・・・
「グオオ!!」
目を離した隙に一気に距離を詰められ、魔物が喉元に噛み付かんと牙を剥いて迫ってきている。
しかし、この世界に神がいるかはわからないが、どうやら、まだ見捨てられてはいないらしい。
わたしは覚悟を決め、魔物が接近してきたのを見計らい、手元に落ちていたナイフを魔物の首筋に叩き付けた。
「ガァッ・・・」
うまく急所を捉えたのだろう、ナイフは深々と突き刺さり、巨大な魔物は重たい音を立てて地へ沈む。
「か・・・勝った・・・?」
自分が突きたてたナイフの柄を呆然と見つめる。
木の棒とは違う、胸の悪くなるような感触を思い出し、体が震えだす。
改めて、自分はとんでもないところに来てしまったのだと、思い知らされたような気分だった。