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 2013年3月10日を持って閉館する「なにわの海の時空館」。どうせ暇だし最期の姿を記憶してみようと思い立って行ってみる事にしたのは昨日、3月6日の話である。


 最寄の駅から京阪でまずは淀屋橋へ行き、地下鉄で本町まで行って中央線に乗り換えて海へと近づいていく。この中央線は地下鉄と言いつつも地上を走る区間がある。しばらくは左手に大阪ドームが見えるぐらいで普通の町並みが続くが、海へ近づくにつれて派手な建物が増えていく。何やら大きな橋があったり、プールの外観もなかなかに立派だ。


 終点となるコスモスクエア駅までは海のトンネルを潜るのでまた地下に戻る。目的地だけを目指すならこのコスモスクエア駅で降りても良かったのだが、ちょうど時間が正午頃になっていたのでニュートラムに乗り換え、トレードセンター前駅で降りた。どうせ値段は同じだし。


 コスモスクエア駅の次の駅がトレードセンター前駅なのだが、その道中で地上に顔を出すので上がったり下がったり無駄に忙しい。それはともかく、ニュートラムが地上に顔を出した時、最前列にいた私が目にしたのはやけに派手な落書きが書かれた壁面だった。これこそがアジア太平洋トレードセンター、通称ATC。大阪市が1465億円かけて建設したもののマシンガンのように赤字を量産した事で有名な建物だ。


挿絵(By みてみん)


 駅からは連絡通路を使ってATCへと向かう。この連絡通路もご覧の通り格好良くて、なるほどこれはかなり金かかってそうだなあという感じだ。まあひとたび右を向くとごらんの有様だが。


挿絵(By みてみん)


 ATCはO's棟とITM棟に分かれていて、O's棟は割と普通のショッピングモール、ITM棟は生きる廃墟となっている。とりあえず昼食のためにO's棟をうろついてラーメンを食べた。まあ味はどうこうという話ではないが、役所の職員みたいな客が多かった。


挿絵(By みてみん)


 O's棟は北館と南館があって、北から南へと繋がる連絡通路を進む際に右を見ると春の海がたおやかにきらめき、左を見ると凄まじく巨大な塔が私を見下ろしていた。これは本当にでかい。圧倒的威圧感。これこそが1193億円をかけたものの全然活用できずに結局大阪府が尻拭いする羽目になった「WTCコスモタワー」改め「大阪府咲洲庁舎」である。見ているだけでも首がつりそうになる。


挿絵(By みてみん)


 本当の日程を言うと昼食の後すぐに本来の目的地である「なにわの海の時空館」に向かい、ここの見学が終わったところでまたATCに舞い戻って改めてこっちをうろついたのだが、文章の構成上まずはATCの探索結果について語りたい。特にITM棟について。


 ここは色々とゴチャゴチャしているもののじゃあどういうところなのか、何が売りでそれをどう生かしているかという定見がないビルというイメージだ。派手なのは外見だけでなく内装も赤、青、緑でギラギラしているが、まったく賑わいがないのがいかにも空虚で、なまじカラフルな色合いもそれを助長していた。


 三階には「くらしのひろばエル」という施設があった。マルチとかああいう悪徳商法に関するパネルが展示されているが、基本的には商売とか経済関連の本がいっぱいあるけど品揃えの悪い図書館という感じ。windowsXPに関する本とか今更必要なのか。もう一つ、この三階には「商い繁盛館」なる施設もあるが水曜日は休館だった。起業を考えている人向けの施設らしい。


 四階と五階はアウトレットモールが広がっている。ノートが50円で買えたりするのだが、平日なのが悪かったのだろうが人がいなかった。この五階からエレベーターで下まで降りようとしたところ、役所っぽい人たちと乗り合わせた。「港湾局かな? 水道局かな?」と思ったがどうやら建設局の人だったらしい。ITM棟の上のほうは市役所関連の部署が入っているようだ。


 二階には本屋があるがここもスペースは広いのに持て余している雰囲気だし、駄菓子を売っているスペースとか廊下でアウトドアグッズを売っているのもよくわからない。ガストの看板がよく目立つ。


 自動演奏のピアノが巨大な吹き抜けの空間を埋めるようにメロディーを奏でていたが余計に淋しく、不気味でさえあった。ここも本当は写真をアップロードしたはずなのだがなぜか消滅している。呪いか。


 ついでに大阪府咲洲庁舎にも行ってみたが、ここのエレベーターは本当に凄い。最大で五十階以上までも行くが、さっき見ると十二階とかだったのに瞬きするだけでもう二十五階、三十二階、そして四十七階へと瞬く間に押し上げられていく。気圧変化も凄くてエレベーターの中で三回ぐらい唾を飲み込んだ。でもそれよりもっと凄いのは、こんな凄いエレベーターを使う人が全然いない事だった。あまりにも大きすぎて一人だと淋しくなるので、この巨塔からはそそくさと退散した。


 ついでにちょっと言い訳すると、写真は携帯電話のカメラで撮っている。いわゆるガラケー、しかも液晶画面にちょっとしたバグなども出てきて正直そろそろ買い替え時かも知れないと思い始めている代物を使っての撮影なのであまり綺麗な写真はない。ただ一応そこに何があるかぐらいは分かるはず。


 実はこの数ヶ月前から携帯電話の調子は悪く、ただ今回の小旅行では比較的好調を保ったものの翌日以降はほとんど液晶が死んで使い物にならず、間もなく買い替えた。だからここの写真たちは彼が最後の力を振り絞って私達に残してくれた遺言のようなものだ。本当によく戦ってくれた、今までありがとうと、この場を借りて今はもう動かない携帯電話に最大限の感謝を贈りたい。

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