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高貴なる王妃の決意  作者: mona
ひとりぼっちの白雪姫
9/32

初めての買い物

チュンチュン、チチチチ


「う…ぅーんん……」



小鳥の囀りが聞こえて、朝だという事が分かる。


薄っぺらなカーテンからは光が溢れ、眠りから覚めた白雪姫は一度大きな欠伸をした。



「ふふ。こんなこと、お城じゃあ絶対に出来ないわ。

一国のお姫様が大欠伸しているなんて、御令嬢方もびっくりなさるでしょうね」



窓を開け、朝の森の爽やかな空気を取り入れる。


ここは心も体も癒し、気分はすっきりと洗練されたように思える。



初めて城から出て一晩過ごすのだから、怖くなったりしないか不安だったが、思いの外ベッドに入ってすぐに寝ることが出来たため、それも杞憂に終わった。



夕食も小屋の裏にあった林檎やらベリーやらを摘んで凌いだせいか、自分は案外サバイバルには強いかもしれない、と思い始めていた。


…尤も、他のお嬢様達が率先してこのような生活をしようとは思いもしないが。



小川で口と顔を濯ぎ、持ってきたタオルで水気を拭き取る。



洋服はあまり身分の高くないメイドから拝借した物で、3着ばかり持っている。


紺色のローブに白いエプロンという簡素な格好になり、食料と情報を集めに街へ行こうと白雪姫は意気込んだ。




ちなみに服を拝借した件に当たっては、お礼にと、ちょっとした髪留めを渡そうと白雪姫自らが出向いた。


しかし、メイド達は畏れ多いとのことで逃げられてしまったため、代わりに彼女たちのために新調して新たにメイド服を作らせた。


ならばその新しい服を白雪姫に、との申し出もあったが、それでは意味が無いのだと主張した。


着古した物の方が街に馴染みやすいと考えたのだ。




いざ近くの街へ行ってもあまり活気の無い、どんよりとした雰囲気が立ち込めていた。


もう日が登ってだいぶ時間が経っているはずなのに、お店はあんまり開店していない。


とりあえず、パン屋の看板を立て掛けてあるところに入ってみた。



「ごめんください。

あの、パンを頂きたいのですが、いくらですか?」


カウンターの奥に御老婦人が座っていたので声を掛けてみる。


「生憎食パンしかないよ。

ちゃんとお金は持ってるんだろうね?


子供だからって、同情はしないよ」


とぶっきらぼうに答えられた。



「あ…はい。お金ならきちんと持っています。

金貨一枚で足りますか?」


姫は慌てて手提げ袋から金貨を取り出した。


それを見た老婦は驚き、取り乱してしまった。


「あんた、パン一つにそんなに高いわけないだろう!

そんなのも知らんで買い物に来たのかい?


……そういやぁ、服装もきちんとしとる。

あんたはアレかい、王都の大っきな家の新入りの女中さんかい?」


そう聞かれたので、ひとまず頷いておく。

何も間違ってはいない、なにせ今の格好はメイドなのだから。


と、正当化しつつも、物の相場すら全然知らない自分に軽いショックを受けた。


なんと、この食パンは銅貨4枚で買えるらしい。


しかしここ数年不作が続いていて、食糧関連のお店に打撃を与えているとか。


なので、このパン屋も前までは沢山の種類のパンを揃えていたのだが、それも厳しく、やっていくためには僅かに値上げした食パンを売るしか考えつかなかったようだった。


「そうだったのですか…。

いろいろ教えてくださり、ありがとうございました。


では、この食パンもありがたく頂戴致します」


とお辞儀をして挨拶をすると、老婦は初めて豪快な笑いを見せた。


「いやね、ホントはもっといろんなパンを作りたいわけよ。

だけど、見ての通りだからさ、せめて食パンくらいは美味しく作らなきゃってね、私としても意地があるのよ。


気に入ってもらえると嬉しいさね」


そして、店を出て行く際に声を潜めて、こう注意したのだ。


「あんたみたいな若いお嬢さんが、大金持ってるなんて知られちゃいけないよ。


いいかい、今この国はみんな貧しいから、隙があったらやられてしまうからね。


気をつけてお家に帰るんだよ」

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