碧眼の姫
王妃と姫を取り囲んだ者達は、その姫の笑い声を聞いて涙ぐみながら互いに手を取り合い、喜んだ。
「姫様は素晴らしいお方に違いない!
普通の赤子ならば、子猫のような産声をたてるのだが、姫様は王妃様を認識した上で微笑みなさった」
だの、
「産まれたてでいらっしゃるのに、これはこれは、玉のように輝くばかりの笑みでございますなぁ!」
などと言い、姫の将来に多大な期待と希望を抱いていた。
ーーーその中心に居た王妃以外は。
王妃は自分そっくりな顔に場違いな碧い目が、怖くて怖くて仕方なかった。
この子は自分だけでなく、王の血も流れているのだと強く主張してくる。
『そなたは我からは逃げられんぞ』
甘いテノールが頭の中で鳴り響く。
それは心地良いものではなく、恐怖しか感じる事が出来ない。
間違いなくこの姫は自分の枷になるだろう。
愛しく、可愛いはずの我が子に対して畏怖の念を抱かずにはいられなかった。
喃語を言いながら、小さな手を必死で自分に伸ばしてくる娘に、混乱してくる。
もう、限界だった。
体力的にも精神的にも。
「いやぁーーーーーっ!!!」
極度に取り乱した王妃は絶叫し、崩れる他なかった。