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語り手の独り言
お伽噺には、お姫様と王子様が素敵な恋愛をして、ハッピーエンドになるものをよく見かけるでしょ。
そして、邪魔者……例えば魔女とか強欲な王様とかも必須キャラよね。
だって、普通に結ばれるよりも、困難に立ち向かい障害を乗り越えて愛し合える方が、とってもロマンティックじゃない?
ねぇ、今夜は私の特にお気に入りのお話をしてあげる。
タイトルはね、ーーー"白雪姫"よ。
でも私がお話ししてあげるのは、王子様のキスで目を覚ましたお姫様がメインじゃないの。
白雪姫を、本当は誰よりも愛していた人のお話よ。
いい?
悪役は、ラブストーリーのエレメントの一つとして必ずと言っていいほど登場するけど、あくまでも主役達を引き立たせるエッセンスとしてなの。
さっきも言ったと思うけど、壁がある方が面白くなるのよ。
【悪者は悪者らしく】
つまり彼女は最期まで悪い母親・悪い魔女で居続けたわーーー白雪姫の幸せの為に。
けど、それじゃあまりにも可哀想じゃないかしら。
だから私が真実をひっそりと教えてあげるの。
高貴なる王妃の決意を。