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第1章 はじまり その3

これは、昭和も終わりの頃の、


ある男女の話である。


では、恭子の方はどうであったか。


最初は年上の男に対する軽い憧れの気持ちであった。


社会人1年生として不安の満ちた世界で、


高崎は自分のような者にも丁寧な言葉使いで接してくれたのである。


そして古参の係長たちとは違い、


職場の中では仕事を体系的に教えてくれる唯一の人であり、


最初に頼りに思った男であった。


また、仕事を離れた状況でも、


若い男たちのように露骨に誘ったりしないが、


自分を見る目が自分を女として見てくれていると感じたのである。


彼は初めて恭子が好意をもった大人の男であった。




そして公園でキスを交わした翌日から、


二人は仕事を終えると、


職場の者と会うことの可能性が少ない場所を探して


毎日のように、落ち合って会うようになったのである。



そんな付き合いが始まって高崎が恭子に最初に聞いたのは


「これまでどんな人と付き合ったの?


最後の恋人とはどうなっているの?」


という質問であった。


彼女は「きっとそれは聞かれると思っていました」と答え、


大学時代の交際について始めから終りまでを正直に話すのだった。


それがあまりに率直な話であったので


彼は過去の彼女の恋人に嫉妬することを止められなかった。


そして彼は一番聞きたい「君はどこまで許したの?」という質問を、


かろうじて止めるのが精いっぱいであった。


そんな彼の気持ちを知ってか、知らずか、


彼女は無邪気に聞いた。


「奥様との出会いは何だったのですか」


ダンスで知り合ったと彼が答えると、


「私もダンス教えて下さい。」とほほ笑むのだった。


しかし同時にこうも聞くことを忘れなかった。


「これまで職場の女性とお付き合いしたことはなかったのですか」


それを彼はすぐ否定したのは嬉しく思ったが、


他の女性社員の噂から考えて、


その言葉を完全に信じることはできなかった。


そして彼の妻には感じない嫉妬を、


他の女性に感じるのは何故かという、


彼女は自分でも奇妙な感情だとは思った職場で彼が他の女性と親しそうに


話をしている光景を思い出すのであった。


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