第3章 恋の翳り その2
これは、昭和も終わりの頃の、
ある男女の話である。
その週の土曜日に二人は、
しばらくぶりに外で会った。
食事をしたあと高崎は、ラブホテルに恭子を誘った。
二人が体を合わせるのは、
旅行以来であった。
高崎は既に知った恭子の身体を
今度はゆっくりと味わっていった。
彼女は最初の時にはあげなかった喜びの声をあげて彼の愛撫に応えた。
彼は彼女の身体を味わいつくすと
彼のものを彼女の身体の中に納めたが
もう彼女の身体はなんの抵抗もなく
彼のものを受け入れたのである。
やがて彼が恭子の中で果てたあと、
彼女はしばらく反対側を向いていたが
彼に言うともなくぽつりと口を開いて
「こういうところでないと二人きりになれないのですね。」
と言ったのである。
そのことが終わって高崎は恭子に、
先日部下たちから聞いた職場の噂の話をした。
すると彼女は困惑した顔をするかと思いきや、
顔に満面の喜びの色を浮かべ、
彼の胸のなかに自分の体を押し付けて、
言ったのである。
「知っています。別な職場の方から聞きました。
その方は、
そういう噂があるから私に気をつけなさい
と言ってくれたのですけれど、
課長はあなたのことを好きなんじゃないの
とも言っていました。」
「・・・」
「もちろん私はすぐに
課長が私みたいな小娘を
好きになるはずがないじゃないって言いましたけど、
そう言われたことが嬉しいのです。」
高崎は恭子のその無防備な言葉を聞いて、
ぞっとしないわけにはいかなかった。
高崎は恭子と会うまでに考えてきた言葉を言った。
「そういう噂がこれ以上広がるのはまずい。
夜に会えなくなるのは辛いけれど
しばらくは、
夜に会うのは自重しよう。
その代わり土曜日にゆっくりと会おう。
土曜は夜まで会って、
そしてこういうところに来て
二人きりになろう。」
しかし彼女は意外なことを言いだした。
「土曜日に会うのは構いませんが
私はこのようなホテルで会うのは嫌なんです。
あなたは会ったらいつも
こういうことをしなければいけませんか?」
と言い出したのである。




