塩おにぎり
どうしてこんなに、
美味しいでしょう。
中には何も入っていない、
海苔も巻かれていない、
ただの、塩おにぎりが。
小さい頃の記憶。
お母さんの、手作り。
懐かしい味がして。
あぁ、もう帰りたいかも。
…いいや、駄目なんだ。
夢を叶えるまでは、
帰らないって
決めたんだ……。
「元気か」なんて、
電話の向こう側から問われても
涙しか出て来ない。
「ちゃんと、食べてるのかい?」
その、優しい言葉に、
愛のある言葉に、
電話のこちら側で
私は無言で頷いた。
待っててね。
いつか胸を張って、
笑顔で帰って来るから。
お母さん、
おにぎり作って
待っててね。