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僕の身体は妹に捧げる  作者: TARO


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第八話 秘密

「龍治さん…起きて…龍治さん…」

声が聞こえる。

「龍治さん…早く…」

また聞こえる。

「龍治さん!」


はっきりと自分を呼ぶ声を聞いた龍治は起き上がった。そして、自分がどこか分からない部屋にいることに気が付いた。

「ここは…病院か…?」

龍治がいるのはベッドの上。ベッドの横には点滴チューブが。

「そうだ…僕は…っ!」

左腕を見る。そこには腕は――無かった。

「夢じゃなかったか…。というか、僕は生きていたのか…」

病室と思しき部屋を見渡してみる。窓が無い。

今は朝なのか、夜なのか。携帯電話も持っていないようだった。

ただ一箇所だけ外とつながっているであろうドアの向こうからパタパタと足音が聞こえた。

「龍治さん!」

ドアを勢いよく開けて飛び込んできたのは龍治のよく知る人物、真由希だった。

「やれやれ…何をやっているのかしらね。とんだヘマをやらかしてくれたものだわ」

真由希の後ろからもう一人現れる。

その人物が誰かを確認したとき龍治は身構えた。

「っ…!」

痛みに表情が歪む。

「止めておきなさい。取って喰うわけじゃないんだから。

 大丈夫よ、まだ(・・)契約は生きているから。

 さっさと身体を治すことね。

 それじゃあ真由希ちゃん、後をお願い」

背中を向け病室を去っていく早紀に、真由希はずっと頭を下げていた。






「体調はいかがですか?」

早紀が去った後真由希との会話はこの言葉から始まった。

「概ね問題ないです。腕が無いことを除けば、ですけれど」

「単刀直入に言います。この事は莉子さんにおっしゃったほうがよろしいのでは?」

若干考える素振りを見せた龍治だったがゆっくりと、しかし確固たる意志を持って首を横に振った。

「そうですか…。とりあえず私が龍治さんの携帯で連絡をさせていただきました。

 今は早紀様の所にいることになっています」

「ありがとうございます…」

龍治の感謝を笑みで返した後、一拍置いて話し始めた。

「龍治さんを襲撃した犯人は恐らく会議室(・・・)の人間の差し金でしょう」

「会議室…?教員の中に犯人がいると言うことですか?」

驚きが顔に浮かんでいる龍治を見て真由希は言い直した。

「ああ…会議室というのは別名、円卓と呼ばれるものです。

 都内にある栖鳳のビルの屋上にあるもので、企業的に繋がりの深い重役たちが軒を連ねていると聞いています」

「つまり、栖鳳派の人間ってことですよね?」

「そういう理解でいいと思います。ただ何分企業の頭たちですから一枚岩ではないそうです。

 それと、これはついでに入った情報なのですが栖鳳緑子学園長が昨日より行方不明となっています」

「はぁ…」

余りに多くの情報が入ってきたためさすがの龍治も情報処理が停止しつつある。

「ところで、今龍治さんに差し迫っている問題はその腕です。

 その腕を何とかしないと莉子さんにきっと事実が知られてしまうでしょう」

「それは…そうですね」

龍治の情報処理キャパシティは満杯になった。

「栖鳳が積み上げた技術の一つに義体製造と言うのがあるんですが、それを使うと表面上は以前の身体と違和感が全く無いそうです。噛み砕いて言えば、普通に見ても分からないと言うことです。

 唯一つ、問題があります」

声のトーンが下がった真由希を見て龍治の思考は再び動き始めた。

「この義体製造は、新しく出来た素体そのものに欠陥があります。

 それは…」

言葉を濁らせる真由希。

「続きをお願いします」

龍治の真剣な顔を見て言葉を続ける。

「この素体には制限時間があります。しかも時間は未定。いつその時を迎えるか分かりません」

「…それは一体どういった原因で?」

「素材の金属と細胞はどこか反りが合わないのか結合部から細胞が壊死してしまうんです。

 有効な治療法はありません」

「では、それをお願いします」

即決だった。呆けている真由希に言葉を並べる。

「僕にはやらなければならないことがあります。この一年間が勝負なんです。

 僕と、早紀(かのじょ)との」

真由希はしばらく逡巡した後、

「分かりました」

と短く答え、病室を出た。






数日後。

「遅い…遅いよお兄ちゃん!」

莉子は怒っていた。

早紀に何度連絡しても「龍治は仕事中」の一言で片付けられてしまう。

普段早紀との会話が苦手な莉子としては滅多に無いくらいの頻度で電話を掛けていた。

電話に出るのは大抵執事の重山さんだった。

運良く早紀に繋がっても…同じことの繰り返しだった。

その日は学校に行かなかった。

メイドが来ても体調不良だからと部屋には入れなかった。

さすがに朝から何も食べてはいなかったので夕食を食べにベッドから起き上がった。

その時、ドアが開く音がした。

「ただいま…」

「お兄ちゃん!?何かあったの?」

龍治は首を横に振った。

「仕事が少し延びただけだよ。夕食はまだ食べていないのかい?」

莉子は頷いた。

「じゃあ、食べに行こうか」

「うん!」

莉子は龍治の左腕に縋り付いた。

ギシッという小さな音がしたが、莉子は気が付かなかった。


そうして、兄は妹に対してもう一つの大きな秘密を抱えることになるのだった。

ようやく落ち着いてあとがきが書けます。

今、別作品にも挑戦中ですwwしかも2種類も(バカか俺は?)

現在構成段階をほぼ終え、いよいよ書けそうな展開です。

一種類はファンタジー系、もう一種類は時系列を若干遡る予定。

見た方はどんどん感想をお寄せください。

私の成長の為に(笑)

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