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僕の身体は妹に捧げる  作者: TARO


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第三話 初日―朝―

入寮して一日が経過した朝、龍治は莉子を起こすことなく寮の外へ出た。

彼が毎日行っている日課、いわゆる体力づくりをするためである。

今朝の場合は学園の敷地をおおよそに確認しておく必要があったから、という別の理由もあったが誰に言い訳をする必要もないので特に気にはしていなかった。

「これは一周するのは無理そうだな…」

事前に渡されたパンフレットを眺めながらつぶやく。栖鳳家の金遣いの荒さがにじみ出てくる様な広大な敷地はさながら一都市であった。

さすがに国地図に地形として載るような湖ほどではなかったが。

「とりあえず、今日は寮の周りを走ってみるか」

朝食が予定されている時間までおよそ一時間。龍治はそう言って走り始めた。


寮の周りは生徒が通るところは舗装されていて道を挟むように樹木が並んでいる。

鳥が鳴いていたりするところはどこにでもある、朝の風景であった。

しばらく走っていると、およそ一般家庭で飼われているはずのないペット―虎―が隣にいる飼い主らしき人とすれ違った。

通常の人ならここで驚くところではあるが龍治の家である赤坂家にも虎ではないがそれ相応に一般に馴染みのないペットなら数匹いるため、軽くすれ違いざまに挨拶をするだけだった。

そのため、龍治に向けられた視線には気が付かなかったのだが。


寮から走って三十分ほどの距離に小さな―学園の総面積に比べて―池があった。

龍治は休憩もかねて池に近づいていくと制服を着た少女を発見した。

池に向かって餌らしきものを投げていた彼女に後ろから声をかけようとする前に相手から声をかけられた。

「おはようございます。朝がお早いのですね」

「ええ、僕は元々早起きなので。それに敷地内の見学も兼ねてますので」

そこで気が付いたのか彼女は振り返って龍治の姿をまじまじと見つめる。

「もしかして、編入生の方ですか?」

「ええ、赤坂龍治と言います。以後よろしくお願いします」

「ご丁寧にありがとうございます。私は坂崎真由希です。こちらこそよろしくお願いしますね」

龍治の丁寧な口調に驚くことなく鷹揚に返事を返す真由希。

「ところで、赤坂さんはどの学年に編入されたのですか?」

「確か二年生だったと記憶していますが」

「そうですか…。私は三年生なので一応上級生ですね」

一応という言葉に対して疑問符を浮かべる龍治に気が付いた真由希が補足する。

「私、一学年飛んでいるんです。ですから、年齢は赤坂さんと同じだと思います」

「栖鳳は名門だと聞いていますが、その中で飛び級とは坂崎さんは凄い方なのですね」

何気ない龍治の一言に真由希は顔が赤らんだが龍治は真由希を見ていなかったので気が付かれなかった。


しばらく会話を続け、龍治が時刻を確認すると朝食十分前だった。

「そろそろ朝食の時間ですので、失礼します」

「もうこんな時間でしたのね。私もそろそろ貴族寮に戻らなければ…」

「奇遇ですね、僕も貴族寮生なんですよ」

真由希の言葉遣いから恐らく上流階級の人間であることは想像していたため、龍治は驚きはしなかった。

「でしたら一緒に参りましょうか」

二人は連れ立って貴族寮へと戻った。






寮で迎えたのは対面に二十人が掛けられる長机だった。

帰ってきたことに気が付いたミカが二人に声をかけた。

「龍治様、お帰りになられましたか。真由希様もご一緒されていたのですね」

「池で鯉に餌を与えていたら赤坂さんがジョギングをされていたのです」

「ええ、偶然でしたよ」

それはさておき…とミカが本題に入る。

「龍治様、莉子様がまだいらっしゃらないのですがまだお休みになられているのでしょうか」

「多分そうです。ちょっと呼びに行ってきます」

「よろしくお願いします」

「少しばかり朝食の時間に割り込むかもしれませんがいいですか?」

「かまいません。朝食は時間内であればいつでも配膳されますので」

「私は赤坂さんの妹さんにお会いしたいです」

二人の話を横で聞いていた真由希が唐突に言った。

「あとで紹介します。朝食時間が少なくなっては困るので坂崎さんは先に朝食をどうぞ」

約束ですからね~とあいている席に歩いていく真由希を横目で見つつ彼はエレベーターホールへ向かった。

間違いなく朝食時間は少ないだろうという確信を持って。






当然のように莉子は眠っていた。ベッドさえあれば何時間でも眠っていられると普段から言っているだけの事はあるなと苦笑しながら龍治は起こしにかかる。

「莉子、起きるんだ。朝食の時間だよ?」

「朝食…私はお味噌汁が食べたい…」

寝言なのか会話が通じているのか―多分前者であると思われるが―莉子はニヤリと笑顔を浮かべた。

「莉子、お味噌汁はあるから。起きないと食べられないよ?」

「お兄ちゃんが食べさせてくれるんでしょ~?」

「早くしないと置いていくよ?」

段々と会話が通じてきたため狸寝入りであると気が付いた龍治は言葉を変えた。

「起きるっ!起きるから置いてかないで!」

ぴょんとベッドから降りた莉子は洗面台へと走っていった。

それからものの十分ほどで身だしなみを整え、二人は一階へと降りていった。



結果から言えば料理はおいしかった。

料理誌やテレビなどで紹介されたこともあり一度は目にした事のある料理人が作った料理はさすが名門校であり、上流階級の子供が住んでいる貴族寮の食事であると感じられる程度の料理だった。

しかし、龍治たちはそれを満足に味わうことは無かった。

食事を開始したときは登校時間十分前。

寮から校舎までの距離は歩いて五分。

周りは既に席を立ち続々と学校へと向かっていった。

そんな中二人は急いで―立ち振る舞いは勿論マナーに即した完璧なもので―簡単に食事を済ませ、走ることは無く悠々と学校へと向かったのである。

編入生の紹介は一時間目が終わったためであるためもう少しゆっくり登校しても良いと言われていたことを忘れていたというところを踏まえると実際は悠々と、ではなかったのかもしれないが。


三話です。登場人物が一人増えましたね。

本当は朝の情景をここまで長く書くつもりは無かったのですが…なってしまったのでサブタイトルに「朝」を付けることになってしまったんですね。

予定通りの進行です。現在の投稿ペースはおよそ週一になっています。

当面はこの間隔を維持する予定です。

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