最終話 新たなる旅立ち
最終話です。ここまでお付き合いいただき有難うございました。
これからは外伝で本編の補完を行っていきます。
別連載のほうもよろしくお願いします。
あれから色々大変だった。
結局軍艦と一緒に海中に没した赤坂早紀の遺体は発見できず。
潜水艦に乗っていて船と運命を共にした坂崎真由希については左腕から上しか見つかっていないという。
ドイツ・キール港内に停泊した赤坂私兵の日本海軍船はEAU(ヨーロッパ・アフリカ連合)の艦隊に曳航されていった。
行き先は軍のドックで、曳航された船はすべて解体・破棄される。
今回の海軍船襲来による第四次世界大戦は回避された。
責任が全て赤坂家に押し付けられたからである。
厳密に言えば、早紀に全ての責任が行くところであるのだが無論国家間の問題を人一人で責任を取りきれるということはないので、結局赤坂家は政治中枢要職から手を引いた。
これが長年牛耳られてきた日本の政治を立ち直らせる事になるかどうかはまた別の問題である。
唯一政治ではなく経済界の重鎮として財を成していた赤坂元春に至っては何ら問題はなかったようであるが。
更に日本政府は財閥を解体した。
過去栖鳳の本社ビルで行われていた円卓会も当然無くなった。
資産が減少したということは無いので、所謂金持ち同士の密接な繋がりが若干薄くなっただけと言う程度の物である。
日本海軍艇ドイツ近海に出現セリとの知らせを受けた外務卿が自らドイツに赴き事態の収拾を図ったというところもあり、これからの日本は良くなっていくだろうというのが最近の有識者間の共通見解である。
龍治達の事についても話しておかなければなるまい。
あの日、赤坂早紀の放った長大口径ライフルより発射された銃弾は龍治の左半身を吹き飛ばした。
元々、機械化細胞と化していた龍治の左半身であったがこの衝撃で全ての機械化細胞は死滅。
EAUの国際緊急派遣医師たちの手によっておよそ三十時間長に及ぶ大手術の結果一命を取りとめた。
結果的に龍治の機械細胞の治療のためにデータバンクを開く必要もなくなったのである。
龍治の治療費は栖鳳家が半分持ち、もう半分は赤坂元春が出した。
元春曰く、
「先行投資は時としてリスクを負うが、この投資は決して無駄にはならないだろう」
ということである。
また、龍治の左腕は真由希のものである。
これを莉子が知ったとき『フランケンシュタインみたいだね!』と冷やかしたかと言えば決してそういうことは無く、ただ目を覚ました龍治に縋って泣き続けていた。
全治一年である。
リハビリなどを兼ねると更に延びるのだが、龍治達は手術後緑子の呼んだヘリコプターによって日本へと帰国した。
この時兄妹が『パスポート…』と言っていたかどうかは不明である。
坂崎家についても話しておかなければなるまい。
ICPOによる坂崎家関連施設の一斉捜索は日本警察も参加の上で踏み切られた。
聴取の中で坂崎家現当主は自らの関与を否定した。
しかし、定期的に坂崎真由希に対しての薬物投与が認められ今回の真由希の凶行はそれによるものが原因であると決定付けられた事により坂崎家当主は逮捕、起訴された。
国際社会、日本政府、大手企業などの圧力を受けたのか、裁判は一週間と言うスピード判決となった。
判決は死刑。
坂崎家の財産は全て燃料漏出海域の清掃費用へと回された。
判決により坂崎真由希は情状酌量の余地があるとして被告人不在のまま無期の判決が言い渡された。
それからも様々ないざこざがあったがどれもたいした規模にはならなかった。
栖鳳緑子は学園長に復帰。
赤坂龍治、莉子は長期に渡る休学扱いとなった。
最も、校舎襲撃事件によって破壊されてしまった校舎の建て直しがあったため生徒たちは別途の教室で授業を受ける事となった。
爆破事件による死者がいなかったのは不幸中の幸いであった。
この安全性に良家の子息女たちを通わせている親たちも安心したのであった。
学園爆破事件の実行犯、莉子を誘拐した犯人たちは行方知れずとなっていたが赤坂の早紀邸の家宅捜査の際に処分したという旨のメモ書きを発見、事実確認が取れたため被疑者死亡とされた。
事後処理を全て済ませた警察はこれで日本国内における複数テロ事件捜査を終了させた。
ICPOも事件は全て解決したと国際司法局に報告をいれ此度の大規模捜査は終わったのである。
世界を若干揺るがした大事件から一年後…
栖鳳学園の校門の前に一組の男女がいた。
「お兄ちゃん、着いたよ」
「ようやく帰ってきたな」
門の前にいた警備員が近づいてくる。
「失礼?赤坂家のお二人ですよね」
二人は首肯する。
「学園長がお待ちですのでどうぞ」
警備員に言われて少女は青年の乗る車椅子を押して中に入っていった。
終
全十六話という作品でしたが、いかがでしたでしょうか。
改めて振り返ってみても拙作感が否めません。
今後ともよろしくお願いします。