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第十二話 対決

どれくらい時間が経過しただろうか。

「莉子ッ!」


龍治は到着した。莉子のいる場所に。

素早く近寄り莉子の調子を確かめる。

「痛いところはないか?」

「うん…」

幸いなことに後ろで手を縛っていた太めの綱は簡単に解けた。

莉子を背中に庇い、龍治は対峙した。最も近しい関係のうちの一人と。


「案外遅かったのねぇ~」

早紀はどこかリラックスしているように見えた。

「事実関係を確かめていたんですよ。虚偽の可能性もありますから」

早紀がニヤリと口の端を歪めた。

「聞いた?莉子ちゃん。あなたのことを後回しにして私のことを調べてたのよ~?」

莉子は無視を決め込んだ。


上手く付き合ってくれなかった莉子を一瞥すると龍治のほうに向き直った。

「それで?確認は出来たの?」

「いいえ。誰も教えてはくれませんでしたよ。あなた(・・・)の今回の凶行の原因もです」

「あなた、なんて他人行儀な言い方しないで欲しいわね~」

「失礼しました」


「まず3年前の話から振り返らせてもらいます。

 莉子は契約の件は聞いたんだろう?」

莉子が首肯する。

「あの時叔母さんは穏健派でも強硬派でもないと言っていましたね」

「それが何か?」

早紀の言葉に棘が混ざった。

「そうですね。あなたは女帝派だったんですからね」

「女帝派?」

莉子が首をかしげた。

「女帝派と言うのはね、赤坂家仮当主・赤坂早紀を中心とするグループのことさ」


「言っておくけど、私が自ら女帝を名乗っているわけではないのよ?」

早紀がおどけた様に言った。

「というか、龍治君。貴方そんなにインテリジェンスじゃないでしょう?

 本業の力を見せてくれない?

 それとも莉子ちゃんが邪魔?」

最後の一言だけ他よりも温度が低かった。


重山が早紀の前に立った。

するとそれと同時に周囲にあった輸出用コンテナの陰から全身黒ずくめの男たちが現れた。

「手にはスタンガンですか?物騒ですね」

「貴方のような危険人物と駆け引きをするのですから当然でしょう?」

何処か余裕を見せる早紀。

龍治は焦っていた。

(どうする?庇いながら戦うのは当然として後ろまで囲まれているのは厳しいものがあるな…)

その時だった。

「龍治君!こっちです!」

「龍治さん、早く!」

左右からそれぞれ声が聞こえる。

シルエットと共に現れたのは左が栖鳳家現当主代行・栖鳳緑子、右が坂崎財閥令嬢・坂崎真由希。

各人物が連れてきたであろう兵士らしき人間たちが場を埋めていく。


「あら、真由希ちゃん。夜遊びの時間ではなくってよ?」

「ご心配なく。早紀様と違ってまだまだ遊び盛りですから。

 それよりも学園長、学校を空けていてよろしいのですか?」

「構わないわよ。どうせ上手く回っているでしょうし。我が校の教師は優秀なのよ」


火花が散っている、と兄妹は感じた。

それぞれが陣営に戻った途端、それは始まった。






場は混戦の様を呈している。

各員が持っているのは恐らくスタンガンだろうから殺傷性はほとんどない。

勿論それを知っているわけではない莉子はひたすら脅え龍治は流れを見据えていた。


そんな二人にも、鉛弾(・・)が飛んできた。






銃声?

莉子は喧騒の中から聞こえた音に関心を向けた。

この状況で銃を撃てる人間は、各陣営のトップだけ。

それを向けていたのは叔母さん。

向けている方向は私達。

気が付いたときにはもう遅く…。


その場に場違いな音が響いた。





龍治は莉子を庇うため咄嗟に手を伸ばした。

左腕を。

その場に響いた金属と金属が触れ合う音は、その場にいた人々の行動を止めた。

弾が跳ね返る。

跳弾がコンテナを突き破る。

兵士の肩に掠る。

龍治は莉子の手を引いてそのままその場から走り出した。

余りの衝撃の出来事に莉子は呆けている。

「急がなければ…」






龍治はひたすら走る、莉子の手を引いて。

後ろからは男たちの声が聞こえる。

曰く、「こっちだ!」とか「囲むんだ!」などなど。

これが、マンガや小説に出てくるような暗殺者とかになると多分無言なんだろうな…と龍治は一人ごちた。

「お、お兄、ちゃ、ハァハァ…ちょっと、もう、走れない…」

莉子の限界を声で感じながら声をかけた。

「もう少しで着くから頑張れ」

二人の前方に見えてきたのは倉庫だった。


「これに乗って」

「う、うん…」

怪訝な顔をしつつも龍治の言うとおりにする。

「じゃあ行こうか」


真っ暗な夜の海に兄妹は出発した。


行き先は…ドイツだった。



明らかに対峙したけど対決してないような…(汗)

続きます。


ドイツ好きだなオイ

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