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私の過ち

作者: ミスPちゃん
掲載日:2026/03/19

フィクションです


団体名も法律も良く分かってないから間違ってるかもしれません


キニシナイで読んでいただけると助かります



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

この物語はフィクションです

登場する人物・団体・名称等は架空のものであり

実在のモノとは一切関係ありません

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*



 生まれた日から、私は望まれていなかった。

父親は知らない。

教えてもくれない。

 名前だけは今は居ないおばあちゃんが付けてくれた。

 ……らしい。

 

 『沢村陽菜』

 

 それが私の名前。

 小さい時は普通だったと思う。

 だけど、気が付いたら大きくなっていた。

 最初の頃はおかーさんみたいだと喜んでいたけど、4年生に成ると……。


「母親より大きい娘ってどーなのかしらね」


 と、母親ですら忌避の目で見てくる。

 こんな言葉だってこうならなかったら知らなかっただろう。


『巨乳症』


 学校は嫌い。

 勉強が嫌いじゃない。

 夏は嫌い。

 特に水泳はもっと嫌い。

 みんなが私を見てくる。

 お友達だと思ってた……でも、着替え終わった時、逃げるように離れて行く。

 先生だって見ていないフリをして見ている。

 目を逸らすけど、視線はいつも感じる。

 授業が受けられなくなったのは私がゴシップ雑誌に載ったからだ。

 誰かの盗撮なので顔は隠されていたが、直ぐに分かる。


 『巨乳過ぎる小学生』


 それが私だ。

 母親はその雑誌を見て怒りはしなかった。

 むしろ嬉々として何処かに電話をしている。

 その理由が分かった時、私は色々な水着を着せ替えさせられて、色々なポーズをさせられて、色々な大人達に好奇の目で見られ、たくさんの写真を撮られた。

 夏の終わりごろ、その雑誌の中綴じのグラビアを飾っていた。


 暫く学校に行けなくなった。

 母親は学校に行けなくなった私を家に放置して何処かへ行ってしまうから、自宅で一人。電話は無いけどゲーム機は有るから、一人で遊んでた。

 つまらない。

 つまらないけど、玄関のドアを開けられない。

 それも冬が近づくと忘れられた。

 ……と思っていた。

 けど、学校へ行くと、お友達だった……ううん、同級生にいじめられた。

 私の使う机には汚い言葉が刻まれている。

 教科書は破られている。

 廊下を歩けば、押される、倒される、触られる。

 そして、原因を私にされた。


 また学校に行けなくなった。

 母親は知らんぷりしていて、学校に行かない代わりに写真を撮りに連れて行かれる。

 母親はいつも見た事の無い服を着ているし、私にも着せてくれるけど、胸を強調するような変な服だった。

 着たくないけど、他に服が無い。


 春が来て5年生に成った。

 一度も学校に行っていない。

 児童支援の人が来て連れ出してくれたけど、そこでも一人だ。

 それでも仲良く成れたと思ったのに、事件は起きた。

 私はトイレで年上の男の子たちにめちゃくちゃにされた。

 事件として報道はされなかったけど、なぜか母親が喜んでいる。

 今は知っている。

 慰謝料をたくさん貰った……らしい。

 らしいというのは、私はそのお金を見ていない。

 でも、引っ越しをする事になって、転校もした。

 一度も行かなかった学校でも、4月になれば6年生に成る。

 母親はますます私を利用するようになっていて、学校よりも撮影だと言う。

 知らない大人が家に良く来るようになったし、父親になると言われてもうれしくなかった。

 その大人は、私は性欲の捌け口にしか考えていなかったからだ。

 そして私は母親が隠しているお金を持って家を飛び出した。

 それが最後の自由な春だったかもしれない。





 行くアテも無いけど、春休みだから子供が平日にウロウロしていても不思議に思われない。出来る限り胸が目立たないような服装をして、一人で時間を潰せる場所。

 大きなショッピングモールにあるゲームセンター。

 お店もたくさん有るから食べるには困らない。

 大好きなフルーツのサンドイッチを食べながらメダルゲームをする。

 ……隣の人が凄い。

 私がたくさんお金を使っているのに、隣の人は増えて、私は減っていく。

 気に成って覗き込むと、気付かれた。


「ん?やり方が解かんないのかな?」


 山を崩すようにメダルを投入口から入れるだけのゲームなのにコツがあるらしい。

 教えてくれたので素直に言われた通りにやると……増えた。


「良かったね。たくさんお金使ってるみたいだったから」

「オジサン、ありがとう」


 何か複雑そうな顔をしている。


「あ、うん。どういたしまして」


 暫く遊んで、増えたり減ったり。

 夢中で遊んでいたらお昼を過ぎていた。

 オジサンも居ない。

 周りの人も減っている。

 だから私は一人で遊び続けた。

 でも、夜になったら遊べない。


「夜だからもう帰りなさい。保護者の人はいるよね?」


 従業員の人に言われたら頷いて帰るしかない。

 残ったメダルは預けられるらしいが、私はそれをそのまま置いて帰った。

 住所と名前を書かなければならないからだった。




 家に帰ったら母親が居ない。

 食卓の上には紙切れが一つ。

 母親は新しい父親と旅行に行ったらしい。

 4月までには帰ると書かれている。

 お金も置いてあった。

 困らせようと思った行動は無駄だった。 



 

 次の日も朝から同じゲームセンター。

 家に居てもつまらない。

 折角だから昨日教わった事をやる。

 ……すっごい増えた。


「お、今日は凄いね」


 昨日のオジサンだ。

 オジサンは昨日のメダルをカウンターで受け取って来たらしく、既にたくさんある。

 なんか狡い。


「預けなかったの?」

「だって名前と住所を書かなくちゃいけないから……」


 オジサンは不思議そうな顔をしただけで追及してこなかった。

 ゲームを始めるとオジサンは減らさない様に増やすのが上手い。

 私が折角増やしたメダルはすぐに減ってしまう。


「君はお金大丈夫なの?」

「多分メダルよりたくさん有るから」


 流石に吃驚していた。

 ……私の顔をまじまじと見たから気が付かれたと思った。

 でも溜息を吐いてこういった。


「無駄遣いは良くないと思うよ」


 だって。

 思わず笑ってしまった。

 ゲームをしながら他のメダルゲームの話をする。

 そして、お昼に成るとオジサンは持っていたメダルを預けて帰った。

 私は一人で続ける。

 他のゲームも気に成ったけど、やり方が良く分からない。

 色々と教えてくれたけど、オジサンの話が難しいんじゃなくて、半分くらいしか聞いていなかったから。


 夕方。

 言われる前に帰る。

 今日は一枚も残らなかった。

 帰宅しても一人。

 コンビニ弁当を食べる。

 風呂に入って寝る。

 朝になればまたゲームセンターに向かう。

 そんな日が一週間続いた。




 オジサンとは仲良くなった。

 他にも私と同じくらいの子供が居るけど、オジサンは話し掛けられれば誰とでも話をするし、私以外と楽しそうに話をしているのを見るのはつまらない。

 ツマラナイ?

 なんてだろう。

 そう思うようになった。

 なんか悔しいから、他のゲームを教えて貰って遊ぶ。

 オジサンはどのゲームも上手で、増えないまでもなかなか減らない。

 私は直ぐに減っちゃう。

 ホントーは駄目だけど、こっそりメダルを貰った。

 でも減っちゃった。

 悔しくて泣きそうになったら頭を撫でられた。

 なんだろう?

 特にカッコよくもない。

 毎日の服装もそれほど変わらない。

 ちょっと小太りで優しそう。

 だけど、昼間から遊んでいる大人ってどうなんだろう?


「オジサンって仕事しないの?」


 笑われた。

 なんでも午前中は暇だから午後から仕事をするんだって。

 特に春休みは暇らしい。

 そんな仕事ってあるの?

 そして、オジサンが誰とでも良く話をしている理由が解かった。

 ここに居る子供達の半分くらいは顔を知っていて、オジサンの仕事場にも来るって。


『児童福祉施設』


 オジサンはそう言った。

 私の事は直ぐに気が付いていたらしい。

 でも、オジサンはそんなソブリを全く見せなかった。

 知らない大人は私の顔と胸を見るけど、このオジサンは特に感じない。

 むしろ、ずっと一緒に居たいと思い始めていた。

 だからオジサンが帰ってしまうと、凄く寂しい。

 家に帰ってもオジサンの事ばかり考えてしまう……。

 寝るのだって寂しい。




 今日はオジサンが居なかった。

 だから、一人で遊んだ。

 他の子供も今日はいない。

 家に帰ったらお風呂にも入らないで泣いた。

 気が付いたら朝になっていた。




 昨日来なかった事を問い詰めたら、仕事だって。

 そう言われたら何も言えない。

 そしたら、どこかに遊びに連れてってくれると言ったので、直ぐにオジサンの腕を引っ張って外に出た。

 ゲームセンターはつまらない。

 引っ張る腕が止まった。


「あ、えっと、こっち」


 逆方向へ行くと車が有った。

 軽トラックだ。

 助手席に乗ると、車が走る。

 当たり前だけど、凄く新鮮だった。

 オジサンは色々とお話ししてくれた。

 私の事を知っているから事情も理解してくれる。

 父親が居ない事と母親が旅行に行って帰ってこない事を教える。

 今まで見た事の無いほど渋い顔になってた。

 ちょっと怖い。

 けど、すぐにいつもの優しいおオジサンの顔になってホッとした。


「俺の仕事場に連れて行っても良いけど、いろいろと面倒だから」


 面倒な理由は分かる。

 そして、オジサンは私の事件の事も知っていて、あの事件は児童福祉の中ではよくある事とも言っていた。

 子供の心が荒んでいて、それを何処にぶつけるのか。子供同士で妊娠してしまう事も有るらしいけど、そう言った後で凄く落ち込んでいた。

 子供に言う事ではなかったからだと思う。


「ごめんね」


 たぶん、私はオジサンに凄く興味を持ったのはこの時だったかもしれない。

 話の内容じゃない。

 そんな事はどうでもいい。

 私に向かって「ごめんね」なんて言葉を使った大人なんて知らない。

 まだ、興味だったけど。

 それが変わるのにたいした時間は必要なかった。

 だって、オジサン、私の事を子供として扱わなかった。

 もちろん子供の扱いという意味では子供だけど、アレが駄目とか、これにしろとか、命令口調もない。

 暫くして到着したのは海。

 ちょっと寒いけど、良い天気で風も弱い。

 波で遊んで、貝を拾って、小さな蟹を捕まえて、走り回って疲れたらオジサンに抱き付く。

 引っ越したばかりで近くのショッピングモールしか知らなかった私は、すごく楽しかった。

 でも、オジサンはまた言った。


「ごめんね……明日から学校が始まる前にやる事が増えるからもう会えないかも」

「仕事だもん、仕方ないよ。お仕事頑張ってね」


 不登校なのは知っているけど、どんなに子供をゾンザイに扱う母親でも保護者は保護者である。勝手な事は出来ない。

 オジサンは最後に名刺を渡してくれた。

 それは別れるって事なのは分かってたけど、泣いてしまった。

 泣いて、泣いて、泣き疲れて……。

 オジサンは私に言った。


「ご、ごめん……家何処?」


 ちょっとカッコ悪い(笑)




 4月になった。

 母親は帰ってこなかった。

 転校したので手続きも有ると言っていたのに、何もしていない。

 ゲームセンターにも行かなくなった。

 コンビニのごはんにも飽きた。

 スーパーで買い物をしてカレーを作った。

 初めて作ったけど失敗しなかった事に満足して、色々な料理に手を出した。

 それから料理は日課になった。




 入学式の日。

 母親は居なかった。

 私はまた外に出られなくなった。

 電話が無いから連絡も無い。

 私の数少ない知り合いの大人が家に来たのは、母親と連絡がつかなくて困ったからだと言う。

 その大人は仕事の人で、私の撮影の仕事の日になってもスタジオに来ないから直接来たらしい。


「仕事してもらっても良いかなー?」


 その日、私は初めて主張した。


「いいけど、お母さんにお金渡したら意地でも撮影しないから」


 その日から私の家はスタジオの中になった。

 帰る意味がない事と、仕事のスケジュールを無理矢理空けて男と遊びに行ったのが母親だった。

 母親が居ないからだろう。

 私は半裸の写真を撮らされた。

 拒否権は無い。

 いや、有る。

 貰ったお金でスマートフォンを買う。

 名義は私じゃない。

 銀行口座も作り、仕事のお金は全部が私に入るようになった。

 そして、あの家に帰宅しないまま三ヶ月が経過した。




 私の姿は雑誌でしか見られなくなっていた。

 外にも出ないし、イヤらしい大人の世界も見せられた。

 この身体の所為で、子供なのに大人に扱われる。

 そのくせ、ビジネスでは子供のように舐められる。

 たくさんの大人に囲まれるようになったけど、テレビの出演は断った。

 本の中の私は凄く幸せそうだけど、全て嘘だ。

 目の前の大人が私の保護者になればもっといろいろ出来るみたいだけど、親権は無いし、母親は行方不明だ。

 そんな時、オジサンが私の目の前に現れた。

 何故?

 嬉しい以上に驚いてしまった。

 ココには見られたくないモノもたくさん有るから……。

 不思議に思っていると、学校に行ったらいないし、在校生のリストにも無かったとの事。それを仕事の大人達に説明すると、思った以上にあっさりと引き下がった。

 面倒な事は嫌だという事はオジサンに教えて貰ったけど、オジサンが一番面倒な事になるんじゃないかな。


「仕事がしたいのならスタジオに行くのは止めないよ。母親がどんな契約をしたか知らないけど、それを叩き付けられると僕も困る事になるから」


 でも今は子供だからという理由で連れ出す事が出来た。

 それから、オジサンは凄く忙しくなった。

 行方不明の母親と連絡を取る事。

 学校の手続き。

 住んでいる家はいきなり家賃未納状態、電気ガス水道の振り込み手続きもしていない事が分かった。

 このままだと住めなくなるし、行くアテも無ければ暫くスタジオに居るしかない。

 学校に行く事も出来るが、少しどころじゃないほど有名に成りすぎた。

 パパラッチにも追われていると言われて身動きが取れなくなっている。


「スタジオに暫くいるわ。仕事もしないと怒られちゃうし」

「最近のだけど、ちょっと危ない写真が多いよ」

「オジサン、私の写真見てくれてたんだ?」

「え、雑誌自体殆ど読まないからさっき買って見ただけだよ」

「そっかあ……」


 ちょっと残念。


「今日はどうしようもないからスタジオに戻って貰うけど……」

「ヤダ」


 私は汚い大人に成ったのかもしれない。

 オジサンは凄く困っているけど、このまま何もしないでオジサンと別れたくない。


「ヤダって言ってもあっちの家は住めないと思うよ」

「ヤダ」


 困った末の決断だった。

 オジサン。

 そう、オジサン。

 私は名前すら知らないオジサンを困らせて喜んでいる。

 そこでオジサンの名前を訊いたら、困った顔で教えてくれた。


『河瀬陽太』


 名前を知って驚いた。

 オジサンから貰った名刺は今も大事に持っている。

 その名刺はもちろんオジサンの名前だった。

 名刺に書かれている名前なのだから当たり前だけど、それがオジサンの名前だと思わなかった。

 だって……。


「オジサン、社長だったの?」

「あ、まあ、経営者かな……」


 昼間から遊んでも怒られない立場というモノがある。

 それはそれでどうかと思うけど、あのゲームセンターに行くのには理由もあって、不登校の子供が最初に行く場所として有名に成っているらしい。

 それにしては服装が変わらないし、お金を持っているようにも見えない。

 個人経営で厳しい経営だなんてこの時の私が知る筈もない。


「困ってる子供を放置できない性格でね。僕自身もそうだったから……」


 オジサンは孤児だった。

 親に捨てられたのを知ったのは15歳。

 それから、不登校になって、独学で大学を卒業し、今の仕事を始めたのは5年くらい前。やっと経営が軌道に乗り始めた頃に病気が大流行して火の車に……。


「あ、そんな話じゃなかった。ぼくの事は横に置いといて、ヤダって言われても困るんだけど」

「オジサンの家は?」

「え、あるよ。有るけど……」


 この時、私は知らなかった。

 本当にオジサンが困っている理由を。

 私は一途だったかもしれないが、汚い大人の世界を悪く知り過ぎた。


「オジサンの家じゃないとヤダ」

「……」


 簡単に着替えと大事なモノを持って、あの日の軽トラックに乗った。

 私は気分が良くなったけど、オジサンは家に着いても一言も喋らない。

 家の中は誰もいない。

 オジサンが部屋の電気を付けると、吃驚するほど汚かった。


「掃除……」

「ご、ごめんね」


 辛うじて寝室は及第点だったけど、キッチンはめちゃくちゃだった。

 オジサンは仕事に戻らないといけないという事で、私を一人置いて行ってしまったけど、戻ってくる約束はしているし、オジサンなら信用できる。

 だから私は……。




 帰宅したオジサンが吃驚していた。

 何かの書類みたいなものをたくさん持っていたけど、それを全て足元に落としたぐらい驚いていた。

 分かるゴミはゴミ袋。

 不明な物は箱に詰めて、掃除機は有るけど、一度使ったかどうかの、使っていないくらいの新品。

 衣服の洗濯は手が出せないけど、少なくとも体を拭くようなタオルは洗った。

 廊下に積まれたゴミ袋の中身が間違っていないか確認してもらうと、私を見て泣いている。


「え、間違ってた?」

「完璧すぎて驚いてる。小学生だよね?」


 胸は大人サイズだけど、子供なのは間違い無い。

 一人で自宅にいる時間が多かったから、家事が出来るってだけ。


「料理できるものが何にもなかったから買い物してカレー作ったよ」


 また泣いた。

 泣いて謝っているので、椅子に座らせれば頭を撫でれる高さだ。


「よーしよし、オジサン彼女いないでしょ?」

「……この顔でモテたら苦労しないよ」


 笑われた。

 良かった、元気になったみたい。

 あれ、どっちが心配されているんだっけ?


「味は好みか分からないけど食べられるから安心して」

「僕、こうやって女性に料理してもらったの初めてだよ」


 あー、また泣いてる。

 カレーが塩味になっちゃうよ。

 でも、実はこれがメインではない。

 私には計画がある。


「服も汚いしご飯の前にお風呂にする?」

「あー、ご飯が先でいいかな。お腹空いちゃって……」

「しょうがないわね」


 妻になった気分がして、私は満足だ。




 鍋で作ったカレーは全部なくなった。

 オジサンが殆ど食べちゃったけど、見てるだけでお腹がいっぱいになるくらい良い食べっぷりだ。

 満足してソファーに座ってしまう。


「眠くなるなあ……あ、でもダメだ。ココには泊まれないから」

「なんで?」

「未成年はダメなんだ」

「保護者代理人じゃないの」

「あー、法定代理……まぁ、いいや。ともかく、それが可能だとしても今の僕はまだ」

「いづれは成ってくれるんでしょ?」

「んー……一応、他にもそういう人は居るから、君さえ良ければ」

「問題が有るの?」

「いっぱいあるよ。でも、今の君の母親は行方不明だろ」

「うん。連絡も出来ないし仕事の人も分からないって」

「明日君の名前で行方不明の届けを出すつもりなんだけど……」

「オジサンがお父さんになるのかあ……」


 ちょっと嬉しかったけど、それはそれで困る。

 お父さんじゃ……。


「とりあえずお風呂入ってから考えよ」


 オジサンは自分の匂いを嗅いでから頷いた。

 顔が歪んでいたからそういう事なんだと思う。




 オジサンはお風呂に入っている。

 私は知っている。

 お母さんがどうやって生活していたのかを。

 お母さんがどうしたのかを、今は知っている。

 私の自信は、今考えれば馬鹿な事だった。

 でも、その時はとっても大事で、必要な事だと信じていた。


「えっ……なんで?!」

「誰かとお風呂に入りたかっただけだよ」


 当たり前だけど、お風呂だから一糸纏わぬ姿だ。

 こんな姿を自分から見せるなんて初めてすぎて、自分でも心臓がどきどきしている。

 オジサンは目を逸らしてから湯船に沈んだ。

 苦しくてすぐ出て来たけど。


「子供の裸でしょ」

「え、あ、う……ん……」


 オジサンの顔が真っ赤だ。

 湯船から出ようとしてたみたいだけど、隠すところが有って恥ずかしくて出れない。

 だから先手を取った。


「オジサンそのままにしててね」


 同じ湯船に入る。

 背を向けてオジサンを背もたれにした。


「オジサンぷよぷよしてて気持ちいい」


 私の身体よりも柔らかいかも。


「ど、どうして、こんなこと……」

「オジサンの事、大好きなの」

「うー……」


 唸るオジサンの顔を見ようと向きを変える。

 こっちを見て、顔が真っ赤になっている。

 私は見られ慣れているので何とも思わないけど。


「ご、ごめんね……」

「私がやってるんだよ。オジサンは悪くないよ」


 抱き付くと柔らかくて気持ち良い。

 下から頬にキスをすると、オジサンの身体が痙攣した。

 そのまま力が抜けていくのかと思ったけど、もっと硬くなる。

 アレが。

 知っている。

 私を見て膨らませている大人達。

 汚い目で見る大人達。

 オジサンは違う。

 だから、その後にしてあげた事を私は後悔していない。


「私、オジサンじゃないとヤダ」


 その後の事は良く覚えていない。

 ただ、お風呂から出た後にオジサンはぐったりとしてソファーで寝てしまった。

 私はオジサンの身体を布団にして寝た。

 凄く気持ちよかった事はゼッタイに忘れない。

 



 オジサンが帰らない私に困っているが、手続きはテキパキと行われた。

 何か焦っているようにも見えたけど、その日は唐突に訪れた。


「警察です、開けてください」


 私は警察に呼ばれるような何かをした記憶は無かったから、何も考えずに玄関の戸を開いた。

 そこにはオジサンと、警察官が居る。


「通報があってね。子供がココに住んでると。沢村陽菜さんで間違いないかな?」


 その後は地獄だった。

 行方不明だった母親が警察署にまでやってきて、オジサンとは会えなくなった。

 母親のウソ泣きは私には分かるが、警察の人は騙されたようだった。

 私はオジサンの優しさを警察に訴えた。取り調べのような事もされたオジサンを助けたかったけど、全て母親に邪魔された。

 何故こんなタイミングで帰って来たのか。

 それは、私が仕事をしたお金を全て受け取ったからだ。

 母親がお金が入らない事で戻って来たらしく、仕事をしなくても定期的に入るお金がなかった事に腹を立てて戻って来たのだった。

 もちろん、そのお金は渡さない。

 渡さないでいると、母親はオジサンに示談金を要求した。

 仕事の事も有って何千万か要求されたと知ったのはつい最近の事で、その時は知らなかった。

 オジサンは示談には応じなかった。

 応じてくれればオジサンに会えたのに、オジサンは私と会うと捕まるようになってしまい、それから私が18歳に成るまでオジサンと会う事が出来なくなった。

 一度も名前で呼び合った事が無い関係なのに、オジサンは私にとって大切な人だった。それに気が付いたのはあの日からだったのは分かっている。

 だから、何も出来ない自分に腹が立った。

 お金が得られなかった母親は、今度こそ本当に行方不明になった。




 仕事はしばらく続けた。

 事件の事も有って、みんなは私に対して興味が薄くなっている。

 オジサンはどうにか執行猶予が付いたことで仕事には戻れたが、経営は更に悪化したのを知っている。だから私は我慢して仕事を続ける事が出来た。

 影で仕送りをする為に、私は頑張れた。

 それでも大人の世界に飛び込むにしては年齢が足りないし、学校だってまだ義務教育が残っている。

 学校に行かないままだと困るので、それからは猛勉強して、高校に進んだ。

 学費も何もかも、自分が稼いだお金だ。

 オジサンに会いたい。

 けど、今は知ってしまった。

 私のした事がオジサンを犯罪者にしてしまった事を。


『未成年者・児童誘拐』


 それは未成年者が親の目の離れた所で見知らぬ成人の家に宿泊しただけで適用される。どんなに私の意思が有っても、保護者意外には通用しない。

 私はオジサンの大切な人になりたかった。

 優しいオジサンは私の大切な人だから。

 優しいだけで取り柄が無いって言われているのも知ってる。

 だけど、そんなオジサンが大好きだ。




 二日に一度は後悔して泣いた。

 ほぼ、毎日オジサンの事を考える。

 仕事と並行しての学業は大変だったけど、オジサンの事を少しだけ忘れられた。

 そうでもしないと泣きそうになるからだ。

 友達は出来なかった。

 私に興味を持つのは殆ど男。

 女は近付きもしない。

 仕事を理由に早退する事も有ったけど、成績は中の中ぐらいで何とかなった。

 有名人だから勝手に賢い判定されるのもうざったい……。

 卒業が近付き、ギリギリのラインを攻めた写真集を最後に仕事は辞めた。





 私は18歳に成った。

 

 オジサンに会える。

 

 オジサンは私の事を覚えてるかな。

 

 オジサンは私の姿を見ても笑わないかな……。

 

 私は絶対に最初に言わないといけない言葉がある。




『ごめんなさい。ありがとう……大好き……』






※あとがき


二人は倖せになれたでしょうか?


彼女に悪い所は有りません

周りが彼女の扱いを間違えているのです

ですが、間違いだったとしても、彼女は知る事が出来ません

それは、間違いかどうか判断する事が出来ないからです

オジサンは出来るといいね……

うん。

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― 新着の感想 ―
Xから来ました。拝読させて頂きました。 恵まれない環境で育った少女とおじさんの不思議なお話でした。 色々と考えさせられました。 他の作品も拝読させて頂きます。 ありがとうございました。 巳ノ星壱果
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