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三題噺もどき4

就寝前

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくじゅう。



※花食べるの好きなのでジェネリックだと思っていた吸血鬼さん、悲しみの顔※

 




 窓を叩く小さな音が聞こえてきた。

 どうやら雨が降り出したようだ……ここ数日若干の天候不良が続いている。降ったりやんだりとしていて、タイミングを見ながら出ないと外に出るのもままならない。

 傘をさすのは好きではないから……今日なんて特に、迂闊に散歩にも行けなかった。

 いつ降りだすかわからないような天気は勘弁願いたい。

「……」

 しかしまぁ、家の中で聞く分には、雨音は嫌いではない。

 滅多に経験することのない水の中にいるような感覚を味わえる……ような気がする。これがザーザーと降っているとそうでもないのだけど、これくらいの降り始めは案外近いものではないのだろうか。

 まぁ、低気圧のおかげで、多少の頭痛がする程度が、たいしたことはないし。今日はもう寝るだけだから、今から降ろうと私には関係ない。

「……」

 仕事も終えて、風呂にも入って、夕食も終えて、今は、洗い終わった食器の片づけをしていた。今日は珍しくワンプレートだったので、そんなに多くはない。

 その夕食を作った本人は、風呂に入っている。……私は夕食前に風呂に入る派なのだが、アイツは夕食後に風呂に入る派なのだ。まぁ、効率はいいかもしれないがなぁ。

「……」

 今日は、散歩に行けなかった分、仕事がよく捗った。明日する予定だった仕事まで半分ほどおわったから、明日はゆっくりと出来るかもしれない。緊急の仕事がない限りだが。

 そういうのは、少なくなりつつあるから休めると期待している。

 別段仕事が嫌いだと言うわけではないのだけど。

 休む時間は誰にだって必要だろう。

「……」

 食器を元の位置に戻し、棚の扉を閉める。

 キッチンの掃除を軽くしてから、水気が残っていないことを確認して。

 風呂からアイツが出てくるのを待つついでに、少しソファで休憩する。

 休憩も何も、さっさと寝室に戻ってしまえばいいのだけど……アイツは人に言うくせに自分は適当に乾かしてくるときがあるから、乾かしてやらないといけないし。

 先に寝てしまうのも、なんだかなぁ、と思ってしまうので。

「……」

 ぼうっとしながら、時計の針が進んでいくのを眺めている。

 ついでに机の端に置かれていた、えんぴつを手で遊びながら待っている。

 くるくると回すだけだが、これが案外楽しい。

 たまにアイツも無意識にやっている。

「……」

 そういえば、ぼうっとする時間って。

 最近あまりなかったような気がするな。

 いや、そうでもないか……?

「……」

 たまにはこういう。

 何もしないと言う時間もいいものだ。

「……」

「……」

「……」

「……ご主人」

「ん」

 いつの間にそこにいたのか。

 頭の上にタオルを乗せたままの、小柄な青年が立っていた。

 たたんで置いているわけではなくて、広げて乗せられているので、ちょっとした頭巾みたいになっている。耳の長いうさぎとか、あんな感じに見えるよな。

「……ココア飲みますか」

「……うん」

 何を思ったか、そんなことを言い出した。

 そちらの方がよく眠れることがあるので、貰うことは貰うが。

「桜のましゅまろが安くで出てたんです」

 なるほど。安くなっていたということは、期限が近いのだろう。

 だから、早めに食べようと。まぁ、ココアに浮かべて食べるのは美味しいからな。多少甘さが際立つが、コーヒーを飲むよりはいい。

「……お湯は沸かしておくから、髪を乾かしてこい」

「……はい」

 素直に、渋々と浴室に戻っていく。

 まぁ、耳がいいし私以上にうるさく感じるのだろうけど。

 明日起きて困るのは自分なんだから……私が言えたことではないが。

「ふぁ……」

 ココアを飲んで、さっさと寝るとしよう。




「これ、色がピンクなだけなのか?」

「桜の味はしませんね」

「……」

「そんな顔しないでください」

「……さくら」

「早く飲んで寝ますよ」










 お題:桜・ココア・えんぴつ

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