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魔族の揺りかご  作者: 広峰
二章 幼体期間

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偽りの喪に服す 一


 ルフェイ領の大地に淡い緑色をした小さなハーブの芽が一斉に現れ、やっと春が訪れたと感じた。


 私は、ルルディア様とリコフォスが隣国へ向かった後で、彼等が発ったと知らされた。

 先に挨拶しておいて良かったと思いつつも、一抹の寂しさを感じていた。

 二人が去ったけれど、一族の長であるクリスは普通に過ごしているし、屋敷で働く魔族達も何ら変わりない。長く生きる彼等には、数年の別れも数ヶ月の別れも同じようなものなのだろう。




 春まだ浅い中、隣領のカシィコン伯爵夫妻がルルディア様のお墓へ花を持って来てくれた。

 事前に連絡が有ったので、私はクリスと一緒に教会でカシィコン伯爵夫妻を出迎えた。


 彼等は故人に敬意を払って、質素な馬車で乗り付けた。上位貴族らしく騎馬の護衛や侍女などを十人近くも連れて来たが、皆、地味な装いで派手な装身具は着けておらず、配慮が(うかが)える。

 伯爵夫妻はそれぞれ落ち着いた茶色い毛皮の外套と帽子と手袋をしていた。夫人のは私が贈った毛皮付き薄茶の手袋だった。

 まだ大気に寒さが残っており、防寒着が手放せないが、全体が渋い色合いだ。


 伯爵夫人のアミーナさんが、クリスとお揃いの黒っぽい毛皮の外套を着た私を軽く抱きしめ、湿った声で言った。


「ああ! あまり気を落とさないで、ティピナさん。なんだか少しお()せになったんじゃなくて? お気の毒に……」


(わあ、ちょっと美味しそう。だけど、食べたら面倒になるから、我慢)

 ほんのり甘さを感じるミルクの香りに、私の中の幼体が食欲を刺激されたようだ。


「大丈夫です。何にも変わりませんわ。お気遣いありがとうございます、アミーナさん。またお伺いするとお約束しましたのに、会いに行けなくなってしまって、申し訳ありません」


 私は同じように彼女を軽く抱き返した。アミーナさんは私を解放すると、いかにも優しげに微笑んだ。


「いいのよ、そんなこと気にしないで。会えないならお手紙があるわ」

「まあ。嬉しいですわ。あの、たくさん書いても良いでしょうか?」


 私も喜ぶような素振りをすると、彼女はうなずいた。どうだろう、わざとらしくなく仲良く見えるだろうか。


 カシィコン伯爵のソストース様は、驚き顔を隠しもせずつぶやいた。


「親しくしているとは聞いたが……」


 すると夫人が「まあっ!」と抗議の声をもらした。


「私の友人に何か文句でも? 失礼ですわよ。ティピナさんは素敵な方ですわ。私達、気が合うんですの」

「あら。アミーナさんの方が素敵ですわ。殿方には分からないかも知れませんが、時々、二人の意見が重なるんです」


 それに合わせて私も言う。嘘ではない。ソストース様を()らしめたいという点では一緒だ。

 ねっ? と女二人で笑い合う。


(友達ごっこするの? 楽しみ!)

 フォスアンティピナがわくわくしている。そうだ。仲良くしてソストース様に友人だと認識させたい。


 クリスは面白そうにふっと笑ってから、丁寧にアミーナさんへお願いした。


「伯爵夫人、ありがとうございます。まだまだ貴族社会に不慣れな妻ですが、よろしくお願いします」


 少し頬を染めて彼女は「もっ、もちろんですわ」と言った。思わずどもるほど、今日もクリスの美青年ぶりは完璧だ。


 アミーナさんは、少し離れた男性達には聞こえないような小声で「少しあの人に意地悪してやりますわ。全部小声で話してちょうだい」と、耳打ちしてきた。

「分かりました」と声をひそめて答えると、「そう、そんな調子で」とソストース様をちらっと見て、クスクス笑った。


 自分をちらちら見ながら女性達が小声で話しをする。さぞ居心地悪いだろう。なかなか嫌なことを考えつくものだ。

 ソストース様が怪訝(けげん)な顔でこっちを見ている。彼から、相変わらず蒸れた革袋のような不快な臭いがした。不摂生しているようだ。

 アミーナさんは小声のまま聞いてきた。


「ところで、貴女、エレガーティス子爵家のエフティフィア嬢はご存じ?」

「はい。私共の店をご贔屓いただいております」

「あの方、夫の従姉妹なのだけれど、私がいただいた手袋と同じ物が欲しいようなの。何処の店で作ったのかと煩く聞くから、貴女にもらったと言ったのだけど、そうしたら、どんな手を使って手に入れたのかって、しつこいんですの」

「それでしたら、ご自分で自由にお仕立てなさるよう、エレガーティス支店へ材料を送りましたわ。事情を知った侯爵様が、まとめてお買い上げになりました」


 アミーナさんは微かにうなずくと、忠告した。


「そう。それなら良かったわ。でもあの方、諦めが悪いから気を付けて。私にも絡んで来るのよ。本当は自分がカシィコン伯爵家に嫁ぐと思っていたみたいで。夫の顔がお気に入りなんだそうですわ。

 でも、顔だなんて。見た目の他に良いところを言わないあたり、とても正直なお嬢さんよね。ふふふ」

(あの個体、カシィコン伯爵? は、外側は良いんだね。今日も凄く不味そうな匂いだけど)


 フォスアンティピナもそんなことをつぶやくので、思わずソストース様を横目で見て、失笑してしまう。

 彼も領地管理はそつなくこなしているので、領主としては悪くないと思うのだが。

 彼女にとってそれは当たり前の事で、評価の範囲外なのかも知れないな。


「子爵令嬢は、やっぱり外見至上主義なのですね。うちの容姿の良い店員にも、引き抜きたくて声をかけたようなのです」

「まぁ……。見境の無い。そんなだからあの方、なかなか婚約が決まらないんですわ」


 アミーナさんもこっそり笑った。

 ソストース様が眉間に薄く皺を寄せたところで、クリスが「夫人は誰にでもお優しいのですね。得難い美点をお持ちだ」と褒め上げたものだから、彼は作り笑いで誤魔化していた。

 私の中で、フォスアンティピナが観察しながら楽しそうだ。


 それから伯爵夫妻が帰るまで、べったりアミーナさんと行動を共にした。

 私達は墓の前に花を供え、教会の巫女らと共に女神へ祈りを捧げた。

 その間も私の隣はアミーナさんだ。


「……そういえば、次にカシィコン伯爵家が王宮へ行くのはいつですの?」

「来年よ。去年は私が身重だったから、あの人が一人で行ったわ。我が家は一年おきですの」

「あ、今日ご子息はどうなさいましたか?」

「お祖母様と乳母に預けてきたわ……」


 ひそひそ話したり、クスクス笑ったりしていると、段々ソストース様が不快そうな顔になってきた。

 彼が私へ話かけようとすると、その度にクリスが他愛の無い世間話を振るし、アミーナさんが離れないから手出し出来ないでいる。

 アミーナさんはそれで気を良くし、逆に晴れ晴れした顔になっていった。


「ふふふ。だいぶ溜飲(りゅういん)が下がったわ。何か私に出来ることがあれば、お礼をするわよ?」


 私はちょっと考えて、それならとお願いしてみた。


「でしたら、高級蒸溜酒の瓶を作った硝子職人を紹介して下さいませんか? 新しい調味塩の容器がなかなか決まらなくて、困っておりまして」


 ルフェイ領には陶器の職人がいるけれど、彼等は農業の傍ら家族で小さな工房を営んでいる者がほとんどで、一度に大量の品物を作れないし、一つ一つ手作業だから全てが同じ形にはならない。技術もあまり高くなく、総じて庶民向けの素朴な品物だ。あちこちに頼んで試作してもらったけれど、納得がいかなかった。


 だったら、高価だが硝子瓶はどうかと思ったのだ。

 が、硝子職人達は基本定住しない。彼等の工房は、硝子を作る材料を求めて転々と移動する。伝手が無いとこっちへ呼べないのだ。


 アミーナさんはにっこりした。


「そんなことで良いの? 分かったわ。そちらへ出向くよう手配しましょう」

「ありがとうございます。完成したら一番にお届けします」

「楽しみにしてますわ」


 別れ際にはアミーナさんに大銀貨二枚を握らせて、伯爵夫妻を見送った。

 とうとうソストース様とは話さず終いだった。彼の相手は、ずっとクリスが務めてくれたので助かった。


「なかなか面白い事をしていたね?」


 悪戯っぽい笑みでクリスが私の額をつつく。


「伯爵夫人と仲良くする約束を守っているだけよ。仲良しに見えたかしら?」

「うん。親友のようだったよ」


 それなら良かった。今後もこれで行こう。


「商談をしてたのかい?」

「えぇ、そうよ。硝子職人を紹介してもらえそうです」

「ほう。それは良かった。しばらく我が領で働いてくれると良いが。ついでに技も教えてくれたら嬉しいのだが」


(クリオスアエラス、一族のこと考えてる? なんだか楽しそう)と、フォスアンティピナがつぶやく。

 うーん。職人を呼べても、技術提供は流石に難しいと思う。

 独自の技を持っている優秀な工房は、非常に閉鎖的な集団だ。価値を高めるため身内にしか技を伝えず、弟子を多く抱えていても、後継者は常に(ふるい)にかけられ、場合によっては下働き止まりだったりする。なかなかに難しい人達だから。




 ……後日、硝子工房がルフェイ領へやって来た。


 カシィコン伯爵夫人から紹介された硝子工房は、ルフェイ領の中でも端にある森を気に入り、クリスの許可を得てしばらくその奥に滞在し、硝子容器を沢山作ってくれた。

 色々試行錯誤の末、最終的に蓋の飾りつまみと底に綺麗な色が付いた、琥珀色の容器に決定した。

 私は、大小二種類の容器を注文したのだが、容器の形を六角柱にしようとしたら、「その形は暗に卵を示しますから」と魔族達から反対されてしまった。

 大きい容器は五角柱、小さめの容器は円柱に変更となった。

 これはこれで気に入った。色硝子に遊び心があってとても良い。


 しかし予想以上に高価だった。

 彼等が滞在した森では、材料と燃料とで薪を使うからと、木々がどんどん伐採されて森の面積が大幅に減った。工房を設置した森の真ん中だけ、ぽっかりと大きく空いた土地が出来てしまい、少々みっともない。

 成る程、これは長く一つ所に居られないわけだ。居座られたら森の木がみんな消えてしまう。恐るべし、硝子商品。


 そういう訳で、彼等の作った品物は大層魅力的だったが、仕事を終えて去る時、私は大いにねぎらうだけで引き止めなかった。

 硝子工房は、ルフェイ領滞在中に領主の紹介で新たな弟子を採用し、別の作業地へ連れて行った。工房の跡地はそのまま残してあるが、追加注文するかどうかはまだ分からない。






 それはそれとして、春先にカシィコン支店から手紙が届いた。

 業務に関する報告の他、私的な手紙も同封してあり、差出人はオストアロゴだった。


 彼の手紙の内容は、住まいについてだった。

 「母親と住みたいので、出来ればもう一部屋借りたいです」と書かれただけの短い手紙を読んで、私は急速に冷たい冬へ逆戻りしたような気持ちになった。


(ティシア、落ち着いて)

 フォスアンティピナが気遣わしげに伝えてくる。大丈夫。怒ってはいない。まだこれは相談段階だし。

 でも、返事は決まっている。否だ。


「ティー様、どうなさいましたか」


 休憩のためハーブのお茶を淹れてくれていた魔族の侍女が、目敏く手を止めてこちらを伺う。心配させたようだ。


「何でもありません。大丈夫ですわ」


 読んでいた手紙を伏せ置いた。

 オストアロゴの母親は、先代カシィコン伯爵の愛人だ。一緒に住みたいって、まさか、隠居中の先代の伯爵と離れて息子と暮らすということか。

 ……義父母と過ごした思い出の詰まった、大事な私の家で。冤罪の遠因となった人物が。

 冗談ではない。


 淹れてもらったお茶へ滋養液を垂らし、一口飲んで気を落ち着けた。


「何か、ご心配な事がございましたか?」


 お茶請けにと、焼き菓子を山ほど盛り付けた皿が差し出される。


「……いいえ、まだ。でも、最近は領外へ出ていないから、貸している家や支店の様子が気になって」


 私が肩を軽く上下すると、魔族の侍女は、あぁ、とうなずいた。


「左様でございましたか。でしたら、誰かに様子を見て来てもらいましょうか?」

「お願いしても良いの? 忙しくはないかしら?」

「はい。大丈夫ですわ」


 穏やかに微笑んで侍女が言った。有り難い。ならば頼もう。


 それから私は、カシィコン支店への指示を記した手紙へ、

「オストアロゴさんにお貸ししている部屋ですが、他の部屋を貸すことは出来ません。別の物件をこちらで探しましょうか? と聞いてみて下さい。ただし、ルフェイ領ならいくらでも融通が利きますが、カシィコン領内だと時間がかかります。もし、別の物件を希望された場合、カシィコン支店で物件探しを行って下さい」と追記した。


 もう一口飲むと、フォスアンティピナが滋養液を喜ぶのを微かに感じた。

 小さな焼き菓子も一つつまむ。中に練り込んだのかチーズの風味がして美味しい。


(ティシア、もっと食べて)

 最近、幼体が忍耐強く飢えを我慢している気がする。

 私は焼き菓子を黙々と口へ運んだ。




 十日くらいして、侍女が気遣わしげに報告を持ってきた。


「ティー様、カシィコン伯爵領の支店と、ご実家の建物の様子なのですが……。

 支店の方は概ね問題ありません。新しい調味塩の売り込みを進めています。

 食事処の『馬の骨』は、最近辛みの強い異国風調味塩の焼き物料理が評判になっています。それと、二階の一部屋にオストアロゴとその母親エラスティが住んでいるようです」

「……は?」


 思わず声が出た。

 何で? どういうこと? あの人が住んでも良いとは一言も言ってないのに。

 もしや前伯爵に何かあったのだろうか。

 内心の疑問に答えるように、侍女が追加した。


「どうやら隠居中の前伯爵とエラスティが痴話喧嘩したようです。エラスティが家出と言いますか、息子の所へ押しかけて来て、世話になっているらしく、店の者はオストアロゴが無理をしているのではと、心配しているそうです」

「まあ、迷惑な。一体いつからそんなことに」

「冬前からですわ」


 ああ。それで、あんな手紙が来たのか。

 私はため息を吐くと、どうしたものかと思った。

 オストアロゴには可哀想だが、母親には出て行ってもらいたい。


(あの個体、ティシアにとって要らない個体。でも、オラニオトクスが狙っている。けど、貴族の持ち物だから、狩ったら面倒臭いことになる。そう簡単に排除出来ないやつ)

 うーん、とフォスアンティピナが考えている。


「ティー様は、母親に出て行って欲しいとお思いなのですか?」


 ずばり、侍女が聞いた。

 魔族に嘘を言っても仕方が無い。正直にうなずいた。


「……ええ」

「でしたら、カシィコン伯爵夫人を通じてあちらの手をお借りしては? オストアロゴの母親が、何故か許可無くティー様の所有する家に滞在しておりますが、こちらで相応の対処をしても良いでしょうか、とお(たず)ねすればすぐですわ。あちらもティー様が不快に思うことはしたくないでしょう」

「あ、それは思いつかなかったわ」


 目の前が拓けるような思いでこくこく頭を振ると、侍女はささっと筆記用具を用意してくれた。


 私はカシィコン伯爵夫人宛に手紙を書いた。もし、あちらが愛人のことを知らぬ存ぜぬと言うなら、立ち退きを要求するなり家賃を徴収するなり、こちらで好きにして良いだろう。


 その後、続けてカシィコン支店宛に、記憶していた近所の不動産屋を思いつく限り羅列した手紙を書いた。それらに当たるなどして、オストアロゴに引っ越し先を斡旋(あっせん)してやって欲しい。


 書き物が終わって一息ついていると、侍女が懸念を口にした。


「ティー様、ご実家に管理人を置いた方が宜しいかも知れませんね。目が届かないのは少々不用心ですわ」

「でも、店舗は問題無く使っているようだし、そんなに心配しなくても……」

「それは大家のティー様が、時々、先触れ無しに食事で訪れていたからです。喪中でいけなくなった途端、面倒が起きています」


 そう言われると、ちょっと心配になってきた。現に前伯爵の愛人が勝手に入り込んでいるのだ。

 ふう、と息がもれた。


「……考えておくわ」




 しばらくして、カシィコン支店から業務報告と一緒に、オストアロゴに新しい家を斡旋したと手紙が来た。

 不動産屋の情報が役に立ったそうだ。ただ、引っ越し資金が貯まるまで、もう少し時間がかかるらしい。

 

 また、カシィコン伯爵夫人のアミーナさんからも返事が来た。

 それによると、愛人を前伯爵が回収したとあった。そして、

「前伯爵プロカッロの愛人エラスティは伯爵家と無関係であり、彼女に何かあったとしても関知しない。何かあればそちらで対処しても特に問題無い。今後、プロカッロとエラスティの個人的な交流が継続していようとも、伯爵家はエラスティを庇護しない」とあった。


 私は胸をなで下ろした。

 フォスアンティピナが言う。

(じゃあ、あの美味しそうな個体、いつ狩っても良くなったね。オラニオトクス、喜ぶかな)

 まあ、そうなった訳だが、彼があれを選ぶかどうかは、私には分からないことだ。




 翌日、クリスが改まって私にたずねてきた。 


「すまないが、ティーに相談がある。聞いてくれるかい?」

「何かしら」


 珍しいな、と姿勢を正した。


「実は、夏至が来る前に、ロフィーダが幼子を連れて森の館から出たいらしい」


 あっ、夏至の儀式か。

 幼体が脱皮したなら、幼子達の家に居座る必要は無い。むしろ新しい卵のために、場所を空けてやるべきなのだろう。

 私はうなずき、無言で話の先を促した。


「それで、当面の落ち着き先を探していたので、前に言っていた貧民街のある土地を勧めたんだが、その中でカシィコンが気に入ったようだ。安心だからね。君の支店が在るし、隣領だから何かあった時、急いで来られる」

「ええ」


 私はまたこくりとうなずいた。

 やはり、知り合いが近くに居るというのは心強いものだろう。


「それで、だ。君は実家に管理人を置く検討をしているそうだが、まだ適当な者が決まっていないなら、ロフィーダはどうかな?」


 クリスの提案を考えてみる。

 彼女が私の実家を管理するのを想像し、何となく彼女は誠実な人だと……契約を守り、私が嫌がることをしない人、いや魔族か。とにかく、信頼できそうだと勘が言う。

 それに、ロフィーダに対して嫌悪感が無かった。不快でないのは大事なことだ。


「ええ、彼女なら良いかも知れないわ」


 私が了承すると、クリスは嬉しそうに頬を緩めた。



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