幼子達の家 一
花の季節がやって来た。それに合わせるように隣領のカシィコン伯爵家で、ソストース様の婚姻式が行われた。
私とクリスは夫婦一緒に招待された。隣領と友好関係であると示したいらしい。
こちらとしても、これ以上波風を立てるつもりは無いので、二人で出席した。
私達は、落ち着いた緑色の布地であつらえた揃いの衣装で参加した。青い飾り帯が差し色になっている。
新郎新婦の主役より目立ってはいけないが、他の貴族から侮られず、なおかつ高位貴族に目を付けられないようにする、というのは存外難しい。
新妻となった伯爵夫人は、ソストース様の婚約者だったあの悋気の強そうな御令嬢で、深い赤のドレスと金色のアクセサリーを身につけ、大層華やかに着飾っていた。ソストース様もお揃いの赤い衣装に金の装身具だ。
彼の金髪と彼女の赤味の強い濃茶髪に合わせたのだろう。伝統ある伯爵家らしくなかなか派手である。
新婦のご実家も伯爵家で、御家族総出で参加していた。ご実家は豊かな農作物の生産地であり、同じ伯爵家と言っても少しばかり格上感がある。やはり政略結婚なんだろうなと思う。
高位貴族が多い場で、男爵という地位は身分的にかなり下の層だ。
他のお偉い招待客が来るよりもずっと早く顔を出して待つが、挨拶は貴族の末尾、平民の商家の前ぐらいになる。
高位貴族には、身分差で話しかけることが出来ないので、向こうから来るのを待つのだが、誰も話しかけてこない。
もしや前伯爵様の醜聞のせいで、遠巻きにされているのだろうか。
あるいは、クリスが目立たないよう振る舞うのが上手いせいかもしれない。何というか、気配を消すのが巧みなのだ。案外それが原因かも。
カシィコン家では、隠居した先の伯爵様は出席していなかったが、ソストース様の祖父母である先々代が出席していた。
こちらをちらりと見られた気がしたけれど、他の高位貴族から取り囲まれ、お祝いのご挨拶を次々と受けてお忙しいご様子だった。
直接の面識も無いのにこちらから近寄れないし、結局、あちらの方から声をかけられることも無かった。
いずれにせよ静かに待ち、ほとんどの貴族が祝いの挨拶を終える頃に、やっと順番が来た。
私達は新しい当主ソストース様へ、型通りの祝いの言葉を述べた。
ソストース様は、貴族らしい感情の読めない微笑を浮かべて、「ありがとう。今度、ご夫人も交えてゆっくり話したいものだ」などと言った。奥方様のじっとりした視線が痛い。
が、クリスは「ええ、もしそのような機会が偶然ございましたら」とあっさり遠回しに断って退けた。
もちろん私は「おめでとうございます」以外、一言も話さず頭を下げ続け、早々に次の待ち人へ場を譲って下がった。
その後はなるべく隅で過ごした。
クリスは誰にも絡まれないよう、場に合わせつつ極力地味に振る舞い、当たり障りのない会話しかせず、私の隣にぴったり寄り添っていた。
私はクリスの付属品になったつもりで控えるだけに徹し、後はお祝いの料理をお腹に詰め込んだ。
失礼にならない程度に時間が過ぎたところで、義務は果たしたとばかりにとっとと辞去した。
後日、私宛てに、カシィコン伯爵夫人が開くお茶会のお誘いがあった。ルルディア様はもう隠居しているので、こちらへ回ってきたのだろう。
貴族のご婦人方向けの、新妻のお披露目会だと思うけれど、嫌な予感しかしない。
茶会の作法等は学んであるが、きっと高位貴族ばかりだろうし、結婚式での新妻様のご様子からして、牽制や嫌味が凄そうで遠慮したい。
クリスに相談したら、必要最低限の義務があるもの以外、特に社交はしなくて良いから、行かなくてもかまわないと言ってくれた。
本当に良いのだろうか? でも助かる。
私は仕事を理由にして、丁寧に断りの返信を送った。
そうこうしているうちに、再び夏至が近づいて、私はクリスと共にルフェイ領の別邸、森の館を訪れた。
クリスは一族の新しい長なので、婚姻の儀式を主催する役目だという。
緑豊かで美しい森の館は、相変わらず素敵な場所なのだろうが、昨年の魔族の婚姻式が思い出されて、私は近づきたいと微塵も思わなかった。
けれども、私の中のフォスアンティピナのために森の館へ連れて来られてしまった。
『揺りかご』として必要なことらしい。
到着早々、今も森の館の主人であるルルディア様と、クリスの弟として過ごしているリコフォスことリコさんにご挨拶した。
その後クリスとは別行動となり、敷地内にいくつかある建物のうち、森の館に近い所に建っている比較的大きな離れに案内された。
クリスが儀式で忙しくしている間、私はここで過ごすようにとのことだ。
森の館自体は主催者達と儀式参加者が使うので、招待客は別の場所へ。そういう取り決めだという。
そういえばそうだった。私が参加した婚姻式でも招待客は他の建物を使っていた。
儀式に直接参加することはないけれど敷地内に居るように、だそうだ。
そして、クリスと本邸の皆からは、絶対に腕輪を外してはならないと言われた。
案内された木造の離れは、入り口まで細い道が引いてあり、木立に囲まれ若葉に埋まるように建っていた。
時々魔族の世話係が出入りして、食事や身の回りのことなど滞在中の面倒を見てくれるそうだ。
儀式を行う庭と木立を挟んでいるが、そう離れてもいない。何かあってもすぐ駆けつけられる距離だ。
離れにはいくつか部屋があって、私は寝室としてその内の二階の一室を割り当てられた。一階には大きな広い部屋があり、食事や談笑する場所だと教えてもらった。多目的室として自由に使用して良いらしい。
世話係の魔族はこの離れを『幼子達の家』と呼んだ。が、小さな子供など何処にも居なかった。
代わりに離れの中で待っていたのは、小柄な黒髪の女性型魔族だった。
「お久しぶりですわね、クリオスアエラス様の契約者……ええと、そう、エクディキシ商店のティピナ様」
そう言って女性型魔族は、美しくにこりと笑んだ。
彼女には見覚えがあった。去年の婚姻式に参加していた一人。確か名前は……ブロフィダ何とかだったような。
「お久しぶりです。あの、ごめんなさい、お名前をちゃんと思い出せなくて……」
正直に謝ると、小さなクスクス笑いと一緒に答えが返ってきた。
「ブロフィダクリヨンよ。でも気にしないで。気軽にロフィーダと呼んで下さいな。ティピナ様は相変わらずなんていい匂いなのかしら。本当に素敵な『揺りかご』ですこと。……ああ、私は世話係ではないの。私がここに居る理由は、『贄』のアピリスティアがここの奥の部屋で眠っているからなの。そっとしておいてくれるとありがたいわ」
思い出した。アピリスティアは、婚姻の儀式の最中に、ロフィーダが願いを叶えていないとごねて契約を反故にしようとした女性だ。その時、「卵の贄にする」と彼女は言ったのだった。
「そうでしたか。分かりました。儀式の間だけですが、ここでお世話になりますので、どうぞよろしく」
了承するとロフィーダは、ちらりと私の手袋をはめた手の上から装着した腕輪を見た。それから小さな溜息をつき首を振ると、気をとり直したように聞いた。
「夜の森の色ね。貴女の魔族の名前をうかがっても良いかしら?」
「フォスアンティピナです。あの……ロフィーダさんの幼体の、魔族のお名前は?」
「……まだ、決まってないのよ。……失礼するわ」
目を伏せてロフィーダは小声で答え、くるりと背を向けた。
「あっ……」
うっかり気に障ることを言ったかと不安になり、何か言おうと口を開いたけれど、彼女はそのまま足早にすたすたと去って行ってしまった。伸ばしかけた手が空しく空を切って落ちた。
その後「お食事です」と世話係に広間へ案内されたが、がらんとしたそこでロフィーダの姿を見ることは無かった。
日が暮れて、良く晴れた夕べになった。
これから婚姻の儀式が始まるはず。……私には直接関係のないこと。
けれど、気持ちが不安定で妙に胸がざわつく。
ただ待つだけの時間は何となく手持ち無沙汰な感じがして、どうも落ち着かない。
でも、儀式が行われる屋外へ出る気になれなくて、とりあえず建物の中を探索がてらうろついてみた。
二階には六つの部屋。宿泊客用の寝室のようだ。各部屋と部屋の間に、趣味の良い風景画や高そうな花瓶が飾ってある。一番奥はロフィーダ達の部屋だ。近寄るまい。
一階には玄関、それに続く踊り場と階段。廊下を挟んで、控え室らしき部屋と広間、厨房と浴室と作業部屋、少し離れて厠、物置部屋。一軒の家として十分な機能が備わっている、そんな感じだ。
一周して広間の手前へ戻ってきたところで、背後から声をかけられた。
「失礼、ええと、もしやエクディキシ商店のルフェイ男爵夫人ですか?」
弾かれたように振り返ると、男性が立っていた。ちょっと陰りのある色気をまとった綺麗な顔の人だ。袖無しで膝丈のゆったりした上着を羽織り、襟と腕は中の白い長袖を見せ、飾り帯を上着の上から締めるという、異国風の装いをしていた。
「はい。貴方は……」
「スタヴローノです。一年ぶりですが、覚えていらっしゃるでしょうか」
その名前は聞き覚えがあった。確か、プリンティーなんとかという女性型魔族が連れていた契約者の名前だ。
しかし、連れていたのは陰気そうな青年だった覚えがある。だが、目の前の彼は見違えるほど魅力的な男性だ。均整の取れた体付き、ふわりと揺れる艶のある砂色の髪の毛、長い睫毛の下は理性的な若葉色の瞳、最初に会ったときとは比べものにならない。
何よりとても美味しそうな香り。
「スタヴローノさん、いらしていたのですね。……びっくりしました。ずいぶん素敵になっていて」
「おや、貴女がそれを言うのですか。大変お美しくなられましたね。……良い香りだ」
スタヴローノは眼を細めて微笑した。
ふと彼の手元を見ると、六角形模様の連なる『揺りかご』の腕輪があった。
私の視線の先に気が付き、スタヴローノは唇の片端を皮肉気に上げた。
「ああ、僕もまだ外せないですからね。煩わしいですが仕方ない。幼体がもう少し成長しないと」
「あ、そうなのですか?」
彼は少し眉根を寄せた。
「契約相手から腕輪の装着期間について、聞いていないのですか?」
「ええ」
「意外に暢気な方なんですね」
「最近までクリスは多忙でしたので」
含みのある言い方に、ちょっとむっとしながら答えて彼を見上げた。
「最近? 一年前には腕輪を渡されていましたよね? ……というか、契約した際、色々と確認しなかったのですか?」
呆れたような顔で、スタヴローノが私を見てきた。
契約した際。
言われて私は思い返す。
最初にクリスが言葉をかけてきたあの時、私は追っ手から逃げている最中で、怪我と寒さと空腹の中、雨に濡れて倒れ伏していた。生きるか死ぬかのぎりぎりで、朦朧とした状態だった。
その後は、思えば環境が変わり貴族生活に慣れるため、いっぱいいっぱいだった。しばらくの間は勉強に集中していたし、それが終わると店の事ばかりを気にしていた。
周囲も私のする事に協力してくれたが、誰も契約や魔族について、進んで詳しく教えてくれなかった。私は他に気を取られたままで、魔族のことを深く探ろうとしなかった。
今なら分かる。質問する機会はあった。
それなのに、目の前に差し出された別の事柄へ目を向けるよう、それとなく誘導し誤魔化されていたと。
スタヴローノがそう聞くということは、彼は魔族と契約する前に色々と確認していたのだろう。そして腕輪の必要性を正しく知っているのだ。きっとそれ以上のことも。
考えてみれば、私も当然そうすべきだった。これが商売だったなら、契約事は慎重に行っていただろうに。
私は今更ながら、自分が思っていた以上に流され易い子供であったことに気付いた。その迂闊さを認め、愕然とした。
正直に言った。
「しませんでした。契約時はそんな余裕ありませんでした。その、死にかけてましたから。その後はずっと、自分の願いのため貴族の勉強や商売に必死で努力していました。『揺りかご』になってしまってから、やっと私の勝手な思い込みに気がついて、疑問点をたずねるようになったばかりです」
「……なるほど。さすが長ともなると、獲物を逃さぬために狡猾なことだ。すると、もしかしてきちんと『揺りかご』とは何なのか、願いが叶ったら自分の身がどう扱われるのか、詳しく説明を求めたり聞いたことは無かったというわけですか?」
おずおずとうなずくと、スタヴローノは残念至極という目になった。
「……だから私は、色々な事が分からなくて。でも契約については後悔していません。貴方は、良くご存じなのですね?」
たずねれば、彼は考える様子になり、くいっと親指で広間のほうを示した。
「落ち着いて話しませんか、男爵夫人」
広間にはもう誰も居なかった。
趣味の良いテーブルと椅子がいくつか置いてある中、スタヴローノは奥のテーブルへ向かった。テーブル上には小さな花瓶があり、一輪俯き加減の白い花を飾っている。
添えてある椅子を引いて、私へ掛けるよう勧めると、彼は角を挟んだ斜め隣の椅子についた。そして少し早口で話し始めた。
「まず最初に。この腕輪は、成長した幼体が特有の匂いを発するまで、装着しておかなければなりません。通常は婚姻式から翌年の夏至の後までです。
理由ですが、魔族のネライダ族は匂いで獲物や同族を判別します。しかし若い『揺りかご』はまだ獲物の匂いだけで魔族の匂いがしない。また、産卵の印が衣類の下で目視できないため、卵や未熟な幼体のいる『揺りかご』に、産卵印の模様を身に付けさせます。うっかり他の者が契約者を奪ったりしないよう、所有者が居る目印として腕輪をつけるのです」
「そうだったんですか……」
腕輪の模様を改めて眺める。確かに、六角形が連なる形だと思った意匠は、産卵された後で背中に浮かんだ網目のような模様と同じだ。
スタヴローノは真っ直ぐ私を見た。
「そもそも、彼等の言う『揺りかご』とは、寄生虫における宿主とほぼ等しい存在です。
宿主の中で孵化した幼体は、宿主を栄養分として成長し、成長したら宿主の体を割って出て来る。それまで宿主の体内に卵を産みつけた親個体は、『揺りかご』を守ることで幼体を育てます」
それは、今までなんとなく予測していたことだったが、はっきり告げられると心に重くのしかかった。
昔話で良く聞く、魔族や悪魔の依り代とか乗っ取られるとか言われるお話しよりも、現実的で腑に落ちる。
「『揺りかご』から出て来た幼体は、まだ完全な成体ではありません。見た目も宿主のごく若い頃の姿と酷似した、人間の子供のような容姿です。幼体は宿主を模倣しながら成長します。宿主の性格や好み等、考え方も引き継ぎ、似通った振る舞いをします。そっくり擬態するのです」
「……やはり、そうなのですね。……以前リコさん……『揺りかご』のリカルドさんに会ったことがあります。リカルドさんが、クリスの弟の小さなリコフォスになっていて、驚きました」
スタヴローノは、それはそれは、と小さく肩をすくめた。
「知らずにいたのなら、さぞ驚いたことでしょう。
……脱皮後の幼体は、ある程度までは人間と同じ速度で成長します。丁度、見た目が人間の思春期の終わりぐらいになると成長が停滞し、最初の子の宿主を選ぶ。そして最初の婚姻の儀式で羽化して成体となる。それまでは成体とみなされません。それから、おそらく飛行して上空で交配を行ったのち、彼等が『揺りかご』と呼ぶ宿主の体内に産卵します。そうして子孫を残す」
ここまでは体験したので分かる。私はこくりとした。
彼は私が理解していることを確認すると、続けた。
「彼等ネライダ族は、宿主の人間を模倣することで、見た目には性別があるように見えます。が、実際は雌雄がありません。普段隠れていますが、頭部には感覚器の触角があり、尻尾のような長い産卵管を隠し持っています。また、繁殖期のみ翅があり、産卵後には抜け落ちる。
産卵数は『揺りかご』一人につき一個。一生で産む卵の数や、卵が成体になる割合は不明ですが、一体の育成にかなり時間がかかることから、次の産卵までの間隔は長く、最低十年はかかると推測しています」
私はまたうなずいた。クリスもリコフォスも、『揺りかご』と長く一緒に居た。
「一族の数は少ないと聞きました」
「それはそうでしょう。ネライダ族の幼体は『揺りかご』と相性が悪いと上手く育たないと言っていました。また親の与える滋養液をたびたび必要とします。更に、栄養が不足した時の他にも、幼体は成長の節目で人間の生気を欲します。故に障害が大きく、大変成長しにくいと察せられます」
クリスもそんなようなことを言っていた。それより、彼の言葉に引っかかる部分があった。
「待って、滋養液とは何ですか。もしかして滋養茶のことですか?」
「茶? ああ、多分そうでしょうね。お茶に入れて濃度を調整したのでしょう。僕は酒に混ぜるほうが多かった。
滋養液自体は、成体が生成する麻酔のようなものです。僕が考えるに、滋養液は狩りをする生物が時々有する、麻痺成分を含む唾液や針毒のような分泌物に類似しています。獲物を麻痺させたり眠らせるのに使いますが、同時に、滋養強壮や治癒促進効果もあるようです。
推測ですが、本来は狩った獲物の鮮度を保つためのものが変化したのでは、と思います。相性が悪いと効果が強すぎたり弱いらしいです」
獲物を麻痺させ鮮度を保つ分泌物。
気に入って飲んでいたお茶にそんな効能が。確かに飲んだ後は眠くなったし、翌朝の調子が良かった。
獲物。
成る程、私達は彼等の獲物に違いない。つい、顔が強ばってしまう。
「それと、あの、成長の節目って、いつですか?」
「知っている範囲では、孵化直後、脱皮の前後、産卵前です。いずれも特に栄養を必要とする時期に当たります」
思わず体が震えそうになる。では、あと最低でも三回はあるということだ。いや、脱皮後はもう魔族に取って代わられているから一回か。
彼は私の質問に軽く返答すると、表情を変えることなく説明を続けた。
「親は幼体を非常に大切に育てて『揺りかご』にも執着するようです。逆に『揺りかご』から幼体が出た後、つまり脱皮後ですが、親は次の産卵準備が始まるため、一転して子を放任するようになる。
彼等は成体になれば、人間より力が強く、知性があり、長命だ。人間に擬態することで、狩り場の中に居ながら人間社会で文明の恩恵を受け、楽に暮らしていける。これは生物として中々賢いやり方です。
また、彼等は『揺りかご』を得るに当たって、契約を結ぶ。人間の欲望と対価を秤にかけ、同意を求めることで獲物を精神的に縛る。知性ある生き物相手ならではの方法です。大変興味深く実に面白い生き物です」
スタヴローノの説明には、どこか感嘆が含まれていた。魔族を語る彼はきらきらと瞳を輝かせ、楽しそうですらあった。
「……貴方はなぜ、自分が魔族の餌になると知って、なお、『揺りかご』になったのですか?」
思わず聞いてしまった。
彼は一瞬動きを止め、きゅっと口を結んだ。一転して難しい顔になる。少し迷う素振りだったが、見つめる私にひとつうなずいてみせた。
「……僕が契約した経緯をお話ししましょう」
長いので分けています。続きます。




