表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
息遣い『僕と彼女の四季巡り』  作者: 珀武真由
31/34

 冬─福寿草

 おはようございます。

 いつもありがとうございます。自分の作品は何処に向いているというより、評価や感想、などが貰えないと視えない顔がありすぎて困りますね。

 と、なぜか愚痴ってしまいました。

 今回もよろしくお願いします。



 寝起きに彼女に怒鳴られた。

 朝早く起きる僕はいつも彼女に気を遣い、布団がめくれないように起きるんだけど、今朝は少し布団がめくれた。

 それだけで「寒い」と。確かに、今日は暖房の余韻もなく、キンと冷えた朝だった。

 でも……、珍しくトゲのある言い方をされた気がした。


(─、ごめん)


 もしかすると彼女的には普通の口調だったかも知れないけど、それは捉え方次第、だからね?

 僕は彼女の身体を布団でそぉおおと、包んだ。


「アレ?」


(今日も体温が高いというか……?)


 ここ最近触れる体の感触に少し違和感を感じたけど、訊ねようにも布団に包まり、気持ち良さげに寝る彼女を起こすわけにはいかない。


(そういえば……月のものは?)


 指折り数え、少し考えたが女性のメカニズムが男に解るわけもないと気を揉むのは止め、身支度を整え始めた。


(最近、よく怒る……し、よく寝る)


 表に出た僕は吐く息を白くさせ、手を擦りつけていた。


「ううっ、寒」


 僕は北風吹く中、首にマフラーを巻きつけダウンジャケットの前をガチガチに閉め、防寒フル装備で目的地の神社へと一人歩く。

 朝の冷気は年関係なく、身体に堪える。首を縮めたまま僕は鳥居をくぐった。

 深々寒々と薄暗い空模様と寒波にも拘わらず、着いた場所は人で賑わう。


 今日は左義長、小正月の火祭りだ。僕は正月に使用した箸やしめ縄、正月飾りを火に焼べに此処を訪れた。


「暖かい」

 

 轟々、パチパチと燃え盛る炎はゆらゆら揺らめき、蒼や青、赤や橙色を僕の瞳の中で舞わせ暖を与えてくれた。

 彼女とここにあまり来ないどころか、あいつとは一回きり。

 朝に弱い彼女はこの寒さにも、嫌気が差したらしい。

 「朝は朝でもこんなに早いのは」と小言を漏らしたきり、彼女は二度と来ることはなかった。


「楽しいのに」


 ぼやく僕は「……楽しいのは僕とお子だけ」と周囲を窺い寂しくなった。だって辺りは、はしゃぐ子どもの家族連れと老若男女の数名、少しばかりの恋人(カップル)しかいなかった。


(…僕は子ども? いやいや、大事な行事を全うしているんだ)


 気焔にジリジリと攻められ僕は一歩後退り、オレンジの燄柱と火の粉が風に煽られ踊る姿になぜかときめいた。

 境内を詣でる前になぜか頭上高く聳えた焚き火に、お祈りをした。


(今年もいい年でありますように)


 天を焦がそうと渦巻く炎を仰視する僕の背後で、何かの影が掠めた。僕はその何かを掴み引っぱり、背負い落とす寸前で止めた。


「うわぁあああ」


 この声は近所の中坊(ませガキ)だ。

 僕に腕を取られた坊主(ガキ)の頭髪が赤々うねる猛炎をチリッと、掠めた。少年と合わさる背中越しに緊張の糸走りがあり、少年の感情が手に取るように感じられた。

 少しニヤつく、僕がいた。


「フム、お前か」

「もう、お兄。武芸も秀でてるなんてセコいよ」

「背後を取るお前が悪い」

「チェッ」


 口を尖らす若僧をゆっくり、地面に降ろした。


「身体は鍛えろと言ったろう?」

「僕は運痴ではないよ」

「あっそ」


 僕は偉そうなガキを転がそうと足を引っ掛けた。そして地面すれすれの所で身体を支え持ち浮かせ、ほぼ宙ぶらりん状態の子どもがいる。


「わっわっ、何ッだよ」


 粋がっていた子どもは驚きタップしてきたのですぐ、解いて遣った。


「もぅ、転けるかと思った。今日荒れてる?」

「いやいや、そんな」


 横で楽しそうに火にあたるカップルがいた。思わず目線を奪われた僕に、中坊は同じものを覗き込むと冷やかした。


「あ~、そういう。フーン」


 鼻に掛け笑うこいつ(子ども)の首を捉え、今度は肘で固めて遣った。


「もう、八つ当たりは勘弁して~」

「いや、戯れてるだけだよ。今さらあの光景を羨んでもネェ?」


(あっ、強がっているように視えたかも)


 案の定強がりと判定され、青二才に慰められた。


「来年あるって!」


 いや、来年どころかこの先も、あの寒がり朝弱彼女には有り得ない、と……。

 僕は心の中で呟き、少年には口角をギリギリ見せ上げ、笑った。


「まあ、彼女はさて置き、こんな朝早くに何をしに来たんだ。神事を重んじるのは良いことだけど眠くない?」


 ほくそ笑む僕にブンブンと、首を振るう中坊は書き初めを披露した。


(きった)なっ」


 見せられた字に思わず本音がダダ漏れてしまい、口を鬱ぐが遅かった。

 少年がちょっとだけ、半ベソに視えた気がしたのは気のせいかな?


「どうせお兄みたいに綺麗な文字じゃないよ、だから願掛けに燃やすんだ」


 そう言い、長半紙を風に乗せた。

クルクル回り、ぼうっと火の粉を乗せた紙が空を泳ぐ。

 紙全体が赤く仄かに色づいたと思った矢先、赤黒い紙塊はポゥと塵芥に空気に消えいる。


 薄暗い朝焼けに交差する雅な─、光景だった。


「きちんと燃えてる時にお願いした?」

「何を?」

「吉()天筆和合楽の御神様江、字が綺麗になりますように」

「はぁ? 何だよそれ意味不」


 少年は顔を歪め、僕を訝しんだ。


「僕も爺様に教えられたんだ『吉書 天筆和合楽 地福円満楽 天下泰平楽』のあとに願い事を唱えるとその年、神様が願い事を或いは吉兆へと導いてくれるらしいよ」


 気難しい表情を見せた坊主は溜息をついた。僕は首を傾げた。


「僕が最初に唱えたのはその簡略版」


 次に中坊はポカンと、していた。


「そう言うことは燃やす前に教えろよ。もう無いじゃん」


 怒りながら空を指差す少年がいる。謝り笑う僕に、餡が添えられた焼きたての餅皿と甘酒が振る舞われた。

 少年には善哉とお茶が持てなされた。


「俺、コレが楽しくて来てるんだ」

「あっ、僕もそうだよ。しかもこのお餅はその(左義長)焚き火で焼かれてるから厄災除けにもなる」

「またウンチクかいっ! まっ、良いけどね」

「……字が綺麗になると良いね」


 僕はガキの爪先で膝を軽く蹴られた。痛がりもせず、普通にデコピンでお返しすると少年ははにかんだ。

 帰りに近所の大工屋に声を掛けられた。


「よう兄ちゃん、コレ貰ってくれんか? 確か花好きだろう」


 見せられたのは可愛い黄金色の福寿草だった。


「俺んとこ今回、庭の植樹依頼されたがこいつが妙に余ってな」


 じゃぁとひと言返事でその鉢を貰い受けた。しかも丁寧に盆栽仕様に仕上げられ、苔の上で小さい松と並んでいた。


「兄ちゃんと言うよりお姉さんが、だよね?」

「まぁ、そうかな?」


 黄色く咲き誇る花を見て僕は大分前のことを、思い浮かべた。


(そう境内に咲いてたんだ)


 僕はまだあるかどうか解らない花の場所を目指し、走り出した。

 

「お兄?」


 不思議そうに少年が後を追い掛けてくる。

 思い当たる場所に僕を待つようにそれはそこにあった。朝陽が差し込み、ちょうど朝露に照らせられた小さな福寿草。

 僕は手に抱えていた鉢を置いた。そうして眼前に生えている福寿の横を掘り起こした。


(そう、確かここに──、また来たいと……)


 土から小さな御守り袋が、顔を出した。


(入れたんだ、この中に。彼女の耳で輝いていた)


「……あった」

「何それ」


 追いついた中坊は戯けた表情で、それを窺う。


「彼女の私物(イヤリング)


 また一緒に来たい。そう思い、彼女の耳で煌めく飾りを奪い()()にわざと埋めた。それにここは、彼女が見つけた思い出の場所。


「あれ、コレも福寿草?」


 少年は僕の手にキラリ反射する物より下にある、土から顔出す黄色い物を斜視した。


「そう。今年も咲いてくれてた」


 本来、この花は二月に咲く。それなのに……、黄金の花片を広げていたんだ。


「前と同じでよかった」


(咲いてないと地面との見分けが)


 茶色い地面と翠苔の間からひっそり微笑む、福寿草。


 彼女と僕のあいだにある、

 ──つぶらな約束


 今度来られたら

 気が向いたら

 また見られたら


 そう呟いた彼女は中々来ないけど、また観ようと言ったことを思い出した。


(コレは返そう。……覚えているかな)


 朝焼けの中、周囲に生える松の根を押し退けひっそり咲く花。

 少年がポツリと、此処を訪れた時の彼女と同じことを囁いた。


「可愛いね、ほっこりするね」


 子どもの素直な意見通り、僕もそう思った。


「お兄のはこれからこんな風に開くんだ」

「うん、彼女に見せたい」


 うわぁ~と冷やかし声を零し、トントンと僕の腕を小突く(少年)があった。僕は少年の頭をぐりぐりと、手で躙りたくった。

 少年と道中、白い息を見せ合い帰路に着く。


 この花は早春に黄金色の花を咲かせることから、一番に春を告げるという意味で「福告ぐフクツグソウ」と言われたが語呂が悪いということで告ぐが寿へと変わったらしい。


(少年の字も綺麗に変わるかな?)


「ただいま~」


 ほんのり暖かいリビングのソファに、寒そうに蹲る彼女が居た。

 「どうした」と訊ねた僕に彼女はただ無言で、テーブル上の「妊娠検査薬」と睨めっこしていた。


「! 妊娠」

「うん……」

「今日会社、休む?」

「……」


(……今どういう心境なんだろう)


 怪訝な面持ちの彼女と、ただ無言の僕がいる。


 福寿草は花言葉通り「幸福」「祝福」を僕達に与えてくれたらしいが、それが二人にとっての……。互いが求め与えるモノは何なのか「今」はまだわからない。

 僕と彼女のあいだに、緊張の空気が流れていた。

 


◇◆◇◆◇花言葉◆◇ ◆◇ ◆◇

 福寿草

 「幸福、祝福、幸せを招く、永久の幸福、回想、思い出、悲しき思い出」

 今回もたくさん……ありますね。

 福と寿という文字からも良い捉え方が出来る言葉ですね。


◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇ ◆ ◇


 お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。

 よろしければ感想、ポイントなどお付けいただけると嬉しいですという言葉に噓はないす。

 前書きでもそうですが愚痴ったのは久々です。自分の作品は非なろうです。読んでいただけるだけで良いはずがやはり求めてしまうのは人間が持つ性ですかね?

 お付き合いありがとうございます。後数話で終わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ