楽しいブランチー綿帽子(タンポポの綿毛)
おはようございます。
いつもありがとうございます。
寒くなりました。この時季にもタンポポは咲き、種をフワフワ。柔らかいですね。綺麗ですね。
時折鼻に入るけど「フンッ」
では今回もおつき合いを、よろしくお願いします。
楽しいお昼時、私は先輩に誘われ、ブランチを楽しんでいた。先輩だけど中学からの付き合いで会社も一緒。もう友達と過言しても良いが昔からの癖で「先輩」、の言い回しが抜けない。
でも友達。
キャイキャイと浮かれる私達の横を風に煽られ地面から舞い上がるモノがある。
はしゃぐ私達に似た、可愛いく白い綿帽子。風の中をふわり無言で、通り過ぎていく。
彼と私のあいだも、だんまり通して行くのかな?
そんなことを考え私は、気が許せる相手に小言をぼやいた。
「私、最近の彼がわかんない!」
「おっ、始まったぞ。惚気話」
「惚気じゃないの、この間なんてとんでもないことを今さら暴露! ありえますかって言うの」
「えっ、それは貴方にも落ち度があるのでは?」
痛いところを突かれ、私は紅いパスタを巻いていたフォークの手を止めた。
「それは……そうかもだけどぉ」
「あんなにかっこいいと言うか綺麗と言うか、あの歳でまだまだイケる男を捕まえて何をほざくんだか、この子は」
「先輩はアイツの見た目に騙されてる!」
「私、あんな男なら騙されたいなぁ」
涼しげな顔をしてさらっと、言い切る先輩がいた。
「ほらほら、いっぱいお食べ、子ウサギちゃん。彼の為に精力つけなよ」
先輩は食べていたステーキ肉の破片を私の口にねじ込んだ。ムググと私は口いっぱいに広がる美味しい肉汁と一緒に、その塊を喉に押し入れた。
「もう! 精力って」
「だって毎晩、愛されてるんでしょ?」
「毎晩ではないです」
「でもやることやってるでしょ。フフフ」
先輩が言うことに否定出来ない私がいた。私は黙ってホットドッグを口に頬張った。
今日のお昼メニューは先輩がハラミステーキセット、私はナポリタンとホットドッグのスープ付き。
双方、美味しく食事を楽しんでいた。
「フフフ、いいなぁ私も愛、囁かれたいなぁ。あんな彼に」
「もう、この既婚者が。良い人いるのに何をっ」
「結婚したからって日頃構ってくれる訳じゃないのよ旦那は。それに比べ貴方の彼、結婚後もたぶん変わらないんじゃない?」
「それはどうかな……」
「えっ?」
「だってここ最近ですよ? 会話増えたの」
「えっでも夜は前も今も変わらず一緒でしょ? フフ、今の会話の流れであなたがそれ咥えると……、ヤラしいなぁ」
「なっ、何言ってるんもう!」
私は今食べている物を急いで手からも口からも無くし、慌ててスープで流し込んだ。プハァと息ついでいると、戯ける先輩がいた。
「もう、変なこと言わないで」
「フフ、可愛いなぁ」
「もうっ」
頬杖ついてジュースを飲む先輩の左薬指にはキラリ、光り輝く物があった。私にも似たように、右薬指に煌めく物が。
(アニバーサリーとラブの違いかぁ)
互いが持つ銀のリングを見つめ、私は何故か溜息を深くついた。先輩は見透かすようにニヤつき、手をひらひらさせた。
「まぁ、今は新鮮さを感じるけど、先は分かんないよね〜」
「新鮮?」
「今はね、あなたはどうなの? 最近の彼は新鮮?」
可愛いく首を傾げる先輩に私は即答出来ず、誤魔化す為にグラスを取りジュースを飲む。すると横ではまたふわふわと、白い小さな真綿が飛んでいた。
「あっ、綿帽子。こうやって飛んでるの見ると可愛いね」
「うん、フワフワで。綿帽子はですね─……」
頭に浮かんだ花言葉を何故か、息と一緒に飲み込んだ。
「どうかした?」
「ううん、何も先輩……」
「うん? どうした」
タンポポの綿毛は風に遊ばれふわりゆらり、花言葉は『幸せ』を運ぶと云われるけれど……。先輩の指輪と綿毛を見ていると何故か無性に、腹立だしくなってきた。
「お酒飲みます。私、直帰します!」
「えっ、ダメだよ」
「だって、飲みたい」
「いやいや。今飲んだらあなたの面倒は誰が見るの?」
「大丈夫ですって、大人しく帰りますから。あの、すみませーん」
私は近くにいる店員に声掛けた、先輩の言うことを聞かず。私の酒癖を知る先輩は困り顔をしていたが、気付いていたのかも知れない。
……私の心中の思いを。
「ああ、もう。私にも責任あるけど……」
「大丈夫、グラス一杯だけ」
「彼とは上手くいってるの?」
「今のところは」
「でも様子から見るに結婚はまだ、考えてないんだ」
ジュースを飲む先輩は心配そうに私を伺い、とんでもないことをぼやいた。
「親の前で醜態曝したんだからもう結婚すれば良いのに」
「それな!」
私はテーブルにダンッと手を勢いよく、置いた。私の力の煽りを受け、微かに飛び跳ねたパスタとステーキに新鮮なサラダたち。
「わわわ、危ない危ない!」
先輩の右手にはピンクの液体グラスと左手には黄色い液体グラスが持たれていた。
「もう、飛び散るよ? まったく」
「ごめんなさい」
先日、彼の家で起きた失態を彼女には相談していた。
だって、彼の両親にどう取り繕えば良いのか解らず。先輩には「普通にしてれば」と、答えられたけどまだ恥ずかしい。
「あれ、もしや考えている? 結婚」
「考えてないです!」
「あれれ?」
そう、考えてない多分。彼も同じだと思う。だって告白はされるけど結婚の「け」も出ない。
……もし考えているならあの人のことだ。もう、口に出してるはず。
「前に言っていた心と躰だけの関係? そんな風に見えない」
「……」
「まぁ互いが良ければいいのか、性格も理解しあってるみたいだし」
「……!」
先輩の言うとおり、体の相性も気持ちも、赦しあえているからこんなにも続いてるんだと思う。でも互いの気持ちが同じ方向を向いているとは、限らない。
私は追加で頼んだグラスの中を空っぽにしていた。空になったタイミングで新しいグラスとワインが席に置かれた。頼んでいることに今気付いた先輩が呆れ顔で、私を俯瞰した。
「ちょっと、いつ頼んだの?」
「へへへ、だって私もう仕事しませんから。リーダーにもきちんと連絡済みです」
私は持っている携帯の画面を、鼻高々に先輩に披露した。
「もうあなたはまったく」
「へへへ」
「一応彼氏に連絡、入れておきな?」
「なんでアイツが出てくるの?」
「万が一だよ、あとひと言。あなたのことをあんなに思う人いないからね? 大事にしなよ?」
「ハァイ」
先輩の言いたいことは解る。解りますが反面、知りたくない自分がいた。
結婚は人生の始発駅であり、終着駅でもある。
云い囃された言葉を思い出した。
空を仰ぐとポツポツと白く、和む柔らかい物が目にちらついた。
「まだあちこちに、タンポポの種」
「わぁ、ほんと綺麗ね。あっそうだこの前の挙式会場からある案内が来ててさ、一緒に行く?」
「先輩、また挙げるの?」
「違う違う、結婚二年目の藁婚式の引き出物の相談していて。でね、今考案しているディナーの招待もされていて、行く?」
「ディナーって、お金がかかんないフルコース?」
「そっゼロ円!」
「行きます!」
楽しい話の最中もふわふわと、横を通り過ぎる綿帽子。
(先輩の頭はまだ白=ウェディングなんだろうなぁ)
新婚ホヤホヤの先輩は楽しそうに、旦那との今を話す。目の前で笑顔を絶やすことのない先輩に私は眉尻を下げた。そして風に運ばれる、白い小さな物体を見送った。
(私と彼はどこに吹かれるのやら)
私と彼のあいだに吹く
──白い綿帽子は何処へ行く?
(今は彼との結婚は考えられない)
この先、解らないけど先輩を見て考えさせられることは、屡々あるんだぁ……。
何も考えずワインを空けた私は案の定の如く、酔い始めた。
心配する先輩の声が掠れていく。
「えっ、ちょっとだいじ……ょ」
先輩の声は私の耳に暫く上機嫌に響くがその機嫌もすぐ終わり、ごにょごにょと五月蝿いヤツだなぁと思い始めた矢先だった。
「すみません。また迷惑を」
ふわりと体が浮いた。聞き慣れた声が耳に、肌に……、響くとトクンと胸が高鳴った。
(あれ? 私以外と乙女)と、訳の分からない言葉が頭を過る。
「ごめんね、あなた仕事中でしょう?」
「今日は外巡回ですし、もう終わりですからフケますよ理由付けて。お電話ありがとうございます、連れて帰ります」
私を抱きあげる腕が誰なのか、目を閉じていても分かる。抱かれた温もりに私は安堵し、胸に顔をうずめた。
「ふふふ、らくちーん」
「おまえはまったく、気楽だな」
「ふふーん、だって」
ガッシリ、フワフワした感触の心地良さに酔ったのは覚えているけど、その後は覚えていない。
気が付くと部屋のベッドだった。醤油が煮だった香ばしい匂いが、周囲に充満していた。
不思議に思い、矯めつ眇めつきょろきょろと辺りを覗う。
今ある現状を思い起こした私は壁に貼られた、計画表を見た。ソコには先輩から頂いたディナーのハガキがピンで留めてあり、日付に赤丸が打ってあった。
「あっ起きた。お蕎麦作ったんだ、どう?」
ふわっと漂う薫りの正体は蕎麦のお汁だった。彼は微笑み、部屋に食事を運んでくれた。
箸を持ち、「いただきます」と二人顔を合わせ、一緒に笑い食べていた。
後日談、ディナーはいつの間にか彼と出掛けることになっていた。
◇◆ ◇◆◇花言葉◇◆ ◇◆
タンポポの綿毛。(幸せ、愛の信託、真心の愛、信託、別離)
ちなみに蒲公英は。(真心の愛)
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お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。
先ほども申しましたが寒いので風邪に気を付けましょう。
よろしければ感想、ポイントなどお付けいただけると嬉しいです!勉強に励みになります。




